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My name is Giovanni Giorgio(YouTubeの謎ミーム #1)

さて、今回から始まったこのシリーズ「YouTubeの謎ミーム」。趣旨を説明すると、Youtubeを見ていて発見した気になった謎のミームについて適当に語りながら紹介する、と言うものです。第1回目のミームは「My name is giovanni giorgio~~」というタイトルのついた一連の動画群です。

概要をざっくり説明すると、Daft Punkの2013年のアルバム「Random Access Memories」に収録された「Giorgio by Moroder」をBGMにして、何か変な動画を見せるという、言葉にするとそれだけのミームです。ただ、そういう動画が沢山作られているのが気になったので調べてみました。

まず前提知識として「Giorgio by Moroder」から。こういう曲です

最初にジョルジオ・モロダーさんの語りから入り、結構喋ったあと本編に突入するという曲展開です。
まあ結構売れたはずのアルバムに入っている曲なので聴いたことのある人も多いと思います。
私個人的には、Daft Punkよりジョルジオ・モロダーの方が思い入れがあるんですが、80年代の映画主題歌の中で一番好きな「ネバーエンディングストーリーのテーマ」とトップガンの「デンジャー・ゾーン」とこの二つが両方ともジョルジオ・モロダーの作曲と知って驚愕した覚えがあります。他にもジョルジオ・モロダーの業績は色々ありますが、「電子音楽の父」と言えばクラフトワークか、タンジェリン・ドリームか、ジョルジオ・モロダーか、と言うくらいに電子音楽の世界では神がかった存在です。
80年代には資産が有り余っていたのか、自身の名を冠したスーパーカー「チゼータ モロダー・V16T」を世に出します。いかにも80年代のスーパーカーと言う感じでかっこいいです。

しかしモロダーがこの事業から手を引いたため、この車は当時は15台ほどしか生産されなかった模様。
しかし最近になってモロダーさんはこの車のプロトタイプとなんかよく分からないNFTをセットでオークションに出した模様です。何をやっているんだ…

でもまあ、普通の人はDaft Punkは知っていてもジョルジオ・モロダーについては名前も知らない人の方が多いんじゃないでしょうか。なんだかんだで昔の人だし。(まだ存命ですが)

長々と書いて皆さんジョルジオ・モロダーについて詳しくなったと思いますので、ミームの話に戻ります。

Know Your Memeによると、どうも発端はRegular Showというアニメのとあるエピソードが元ネタのようです。
大元の元ネタ

なんかシンセサイザーによってバトルするという内容のようです。この動画は私も昔一度見た記憶があるので、その時は多分Synthwaveの動画をあれこれ見ている時にたどり着いたと思います。

そしてこの映像に「Giorgio by Moroder」をBGMとして付けた動画が2018年に投稿されます。これがこのミームとしての発端と思われます。

確かに左のおっさんはジョルジオ・モロダーに似ています(あるいは元にしている?)。この動画では音楽を動画に合わせてうまい事編集しているのが後のミームとの違いです。

そしてこれが発展して色んな「My name is Giovanni Giorgio」動画が作られるようになったというのがKnow Your Memeの解説なんですが、この動画と後の動画の間にはなんかミッシングリンクがあるような気がしないでもないです。Youtubeの動画は消えたり削除されたりするものなので、後から調べようと思っても考古学のように謎が残ってしまうのが困りものです。

とりあえずKnow Your Memeの記事を書いた人が把握している中で、その次に投稿されたのが2020年のこの動画。

熊のプーさんの映像が付いていますが、あんまり意図が分かりません。なおかつ上の2018年の動画とのつながりがよく分かりません。

その次に出てきた動画がこれ。

ケンドーコバヤシとゼレンスキー大統領を足して2で割ったような顔のおっさんの映像に「Giorgio by Moroder」のBGMをつける。これは意図としては分かりやすい。「ジョルジオ・モロダーを知らない人が勝手に想像したジョルジオ・モロダーの姿」という体のネタでしょう。まあDaft Punkを聴いている人がジョルジオ・モロダーを知っているとは限らない。曲中で長い語りを聞かされて、挙句に「My name is Giovanni Giorgio」と名乗られる。その時に適当な想像力で思い浮かべたジョルジオの顔はこんな顔に違いない!というそういう動画だろうと思われます。
時系列的には上の動画より後なんですが、ミームとしてはこの動画を起点にした方が分かりやすいかもしれません。

この謎のおっさんが踊っている動画は、その後発展版が作られます。

こちらのバージョンでは、語りの部分が長めになっていて、なおかつ上手い事動画を編集してそれとなく語りと動きのタイミングが合っているのが良く出来ています。

この謎のおっさんの正体ですが、どうやらエクアドルの歌手のようです。

関西ローカルの番組のような雰囲気で何やらトークしていますが、内容は分かりません。

さて、このように「Giorgio by Moroder」をBGMに、何の関係もない映像を付けるというフォーマットが完成したことにより、一挙にミームとして発展していきます。いや、発展と言うより「逸脱」です。謎のおっさんが踊る動画とは違い、何かしら意味のある笑いを作ろうという意図は全く感じられず、いかに何の関係もなく無意味な映像を組み合わせるかという事をチキンレースのように競う、何かよく分からない展開になったようです。
とりあえずいくつか見ていきましょう。

ハゲが逃げる

こちらは現時点で2000万回も再生されています。この映像だけを前後の文脈無しで見せられても全く意味が分からず困ってしまうだけですが、このBGMを付けてミームの体にすることで、何とかネタとして成り立つという、そういうギリギリ感を狙っているんじゃないでしょうか。

空港

これも2500万回再生を超えています。BGMが無ければただの面白動画ですが、ミームの体にすることによりちょっと意味深な感じが出ています。

蜘蛛女

牛と女子アナ

格闘技の練習

義手

消防士

体温計

ボート

カート

というわけで、長々と見ていきましたが、まあ思ったのは、海外の笑いと言うのはボケたらボケっぱなしでツッコミが存在しないという点があり、ボケとツッコミの笑いになれた日本人にとってはこういう動画はツッコミのない捉えどころのないネタと感じられるかもしれません。
あとは、テレビ番組のコントとかだったら、まず最初に基本形となるようなネタを見せて、それを毎週続けるうちにちょっとずつ発展または逸脱していくという形になるので、視聴者としても発展や逸脱の部分の面白さが分かりやすいですが、Youtubeの場合はそんな時系列など関係なしに再生回数とかの基準でお勧め動画を出してくるので、いきなり逸脱してしまった後のネタを見せられて訳が分からなくなったりするわけです。
実際私が最初にみたこのミームの動画は、ハゲが天井に逃げていく動画でした。いきなりこれを見せられても状況が把握できなかったので、仕方なくKnowYourMemeに頼る羽目になったわけです。このような状況は他のSNS等でも多々あると思います。Twitterとかで、何かのパロディのパロディみたいなネタがTLに沢山流れてくるものの、肝心の元ネタが分からないという経験をした方も多いだろうと思います。或いは炎上事案があったときも、誰かが言ったと思しき炎上発言に対する反論ばかりが流れてきて、大元の発言自体は流れて来ず、そもそもそういう発言があったのかどうかすら疑わしい、というシチュエーションも多々あります。
今回は、「Giorgio by Moroder」という自分も知っている曲が使われている事と、動画とジョルジオ・モロダーに何の関係があるんだ?と疑問に思ったからわざわざ調べてみようと思ったわけですが、そうでなかったらよく分からないままにそのまま受け流していただろうと思います。