月刊Synthwave生活 2020年8月号

このシリーズでは、だいたい月1を目標にSynthwave、Outrun、Darksynth等の作品のレビューと言うか紹介をしていきます。
本格的な夏がやってきたような気がします。やっぱりSynthwaveと言えば夏!すごく夏と関連付けられているジャンルのように思うんですが、それは何故かと考えると、やはり子供のころのノスタルジアが夏に偏っているからではないでしょうか。子供のころは夏休みが長かったから、思い出と言えば大体夏休み期間の物が思い出されるわけで。しかし逆に言えば普通に学校の授業がある時期は思い出に残りにくいんだろうか。確かに毎日学校に行って帰ってくるだけの日々の記憶は全然残ってない。もう一つ言うと、大人になってからは長い夏休みがないので、何も印象的な記憶が残らない気がします。思い出そうとしても何も出てこない。仕事に行って帰ってくるだけの毎日だったのは頭では理解できるが・・・
というわけで今回も作品を紹介していきましょう。

Jessie Frye - Kiss Me In The Rain

NewRetroWaveが送るSynthwave女性ボーカリストのJessie Frye。ニューウェーブ的なものやAOR的なものというような80年代のポップスのおいしいところを凝縮したような内容。そういう意味では売れ線を狙った印象はあるが、「High (feat. Robert Parker)」の出だしのシンセとかはやっぱりSynthwaveならではの音だなと思う。

At 1980 - A Thousand Lives

こちらもNewRetroWaveからの作品。割とAOR感のあるSynthwave。ノスタルジーというか安堵感のある「Have a Heart」が良かった。帰るべきところへ帰ってきたかのような安心感。

NewRetroWave - Magnatron III

NewRetroWaveから、サイバーな感じのSynthwaveを集めた18曲入りコンピレーション。今回NewRetroWaveばっかり3連続になったが、NRW結構はりきってるな。全体的にKavinsky的な雰囲気の曲が多め。割とダークだがDarksynthとまではいかない程度のライン。Tokyo RoseがなぜかCom Truiseみたいな感じになってるのが気になる。ちょっと硬めのCom Truiseという感じで面白い。

Ace Buchannon - Eye of the Storm

輪郭のはっきりくっきりしたシンセが主体のSynthwave。特筆すべきは「Never Surrender」で、非常にカッコいい一曲。一周回ってカッコいいとかではなく、Synthwave世代としては初めからこれがカッコいいんです。

どーらん美人 - Eyes of Liar

なんと日本の方によるSynthwave・Darkwaveのアルバム。一聴して完全に本格的なSynthwaveの音そのものであり本物。ガツンとしたDarksynth曲のパワー感は全く海外の作品に負けていないが、アルバムを通してはバラエティに富んだ曲が収録されている。もしかして私が知らなかっただけで日本には他にも本格的なSynthwaveを作る人がいるのかもしれない。もし他にも日本発の本格的Synthwaveを知っている方がいれば教えてください。

Megahit - Wargames

Bandcampに掲載された情報によると、80年代末から90年代初頭のアーケードのシューティングゲームのサントラを意識した、FMシンセとPCMシンセをふんだんに使った作品、ということで、かなりゲーム音楽的なSynthwaveとなっている。実際、ネオジオのゲーム音楽と昔の洋ゲーの感じが融合したような雰囲気。オケヒットの連発具合がかなりネオジオっぽくて100メガショックである。

Sellorekt/LA Dreams - Lavish

2010年代初頭から絶え間なく多数のSynthwave作品を供給し続けているSynthwave界で随一の多作家、Sellorekt/LA Dreams。作風は一貫しているが、今回も透き通るようなデジタルで乾いたシンセが爽やかな安定感のあるSynthwave。今回のアルバムでは「Telesthesia」がかなり良い。夏の到来を感じさせる、最高のドライブミュージック。