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読書メモ『学習の生態学 リスク・実験・高信頼性』

※自分用のメモ
p425「文庫版のための改題」より

テーマ1 認知・思考・学習

本書の基層的な発想は古典的認知科学(計算主義的アプローチ)の図式をどう乗り越えるかという問題設定である。

筆者的には計算主義には多くの学ぶべき点があり、むしろ計算主義の詳細を観察しつつ効用と限界をより広い文脈から論じたほうが面白いと感じた。

その一つの例がエキスパートシステム。1章はエキスパートシステムについて論じている。

⇨「計算主義的アプローチの図式を乗り越える」とは計算主義の否定ではなく、アップデート的なあれを指している

1章 野生の知識工学ー「暗黙知」の民族誌の為の序論

エキスパートシステムは簡単に言うと専門家の判断を機械で再現する試み。(人工知能)
エキスパートシステムは専門家からの聞き取りによってデータを収集するが、ここで聞いたことと実際に専門家が行っていることにはギャップが生じる。このギャップが生まれる原因は人々の言語化能力及び暗黙知と深い関わりがある。この点についても言及する。


テーマ2 状況的学習/実践共同体

計算主義的アプローチで認知や学習を理解しようとする試みへは様々な流派から批判があった。その中の一つが「状況的学習論」。

状況的学習論の基礎は、学習という行為を社会的なものとして再定式化することを目指したものである。

核となる概念は「実践的共同体」「正統的周辺参加」の2つ。伝統的な徒弟制度がモデルになっている。
状況的学習論によると、すべての学習は「実践的共同体」への参加として表現でき、共同体へ参加する新参者が引き起こす数々の失敗という負の側面は、「正統的周辺参加」と呼ばれる学習するための猶予制度によってうまいこと吸収されているという。

しかし現行の理論にはいくつかの検討すべき点(余地)がある。

第4章 学習の実験的領域ー試行・コスト・面積

「実践的共同体」と一口に言っても、その実態は多様だ。学習にあたり共同体への参加時間が長期になるものもあるし、短期で完結してしまうものもある。また実践共同体の中核である技能(その共同体で学習できること)も時間の経過とともに変わったり廃れたりする。

4章ではこのテーマをリスク論と関係させ、「学習とリスクの相互構成」と言う形でより一般的な議論として詳説する。

⇨実践的共同体の実態はリスクが大きく影響する?

第3章 空洞の共同体ー教育研究における徒弟制モデルの功罪

状況的学習論は学校教育批判という側面を持っており、この理論によって教育と学習を概念的に分離することが重要な目的のひとつになっている。

というのも学校教育は状況的学習論からすると、学習をする場とは言い難いからだ。つまり、学校は実践的共同体ではない。生徒は教師になるために学校に通っているわけじゃないし、教授がいなくても学習は成立してしまうからだ。第3章ではこの点について詳しく分析する。


第2章 状況・行為・内省ー共同体神話を超えて

実践共同体論を唱えるレイヴ&ウェンガーとベッカー(逸脱やアート社会学研究で有名な人。誰やねん)の議論からもいくつかの課題が見えてくる。
ベッカーは仕事の現場ではその忙しさから学習に必要な猶予時間が存在しない、つまり多くの場合、学習することができないと主張する。対してレイヴ達は先述したように実践共同体には正統的周辺参加という仕組みによって時間的な猶予は担保されている(学習は可能)とする。少なくとも、彼らは彼らの研究からこのような仕掛けがあることを確認している。

問題なのは、実際問題として、そのような仕掛けが常に存在するのかどうかはっきりしていないということだ。
この問題は実践共同体論が現実を描写したモデルなのか、理想を規定する規範的議論なのか明確でないという話にも関わってくる。

第2章ではこうした欠点を組織的に論じる。

⇨2章は実践的共同体論のあいまいになってる部分にツッコミをいれるよ

フィールド1 精神病棟

4章では2章で指摘した問題について代替案を提示しているが、本書は調査現場における知見が議論に取り入れられているためその調査背景を紹介していく。

第7章 野生のリスク管理ー病棟のダイナミクスを観る



生きられそうです