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キューウェル解任と鹿島戦はなぜ勝てたのか。

 

 ついにハリー・キューウェル監督が解任されてしまいました。
 
 筆者はキューウェル自体、全盛期のリヴァプール時代は知らないものの、オーストラリア代表で知っていて、現役時代を知っている選手が監督になるということで、それなりに思い入れがあったのですが、監督になってからは、選手並みに感情的になる部分、戦術的にスクランブルしがちだったりする一方で、人柄の部分で、対戦相手にはリスペクトを持っているところ、選手への信頼を口にするところなど、より好きになったと言わざるを得ません。また、ACⅬも決勝まで、導いていただいて感謝しかありません。決勝まで行けたのは、運ではなく、戦術家ではなくモチベーターとしての彼が大舞台向きだったのでしょう、セルティック時代のコーチの実績は間違いなく本物だったと思います。

 ただ正直、直近の鹿島戦は勝てたものの、4連敗の内容があまりにも脆く評価され、この判断に至ったと思います。ガンバ戦の内容、ついでこの4連敗にカウントされていない天皇杯で、低迷しているJ2の水戸戦で早々に2点いれられて、そこからぎりぎり追いつきPK戦、負けに等しい内容であったと言わざるを得ません。押し込むサッカーで、前体制の課題を解決しているとの趣旨の意見も見ましたが、それは再現性のあるプレーモデルの構築ができていれば分かるのですが、ほとんどできていないなと思います、押し込むサッサーをやるうえで、夏場でプレッシングの強度を維持できなかったのも原因の一つですが、連動制も薄かったと言わざるを得ません。

 また、勝ったものの鹿島戦も前半はかなり低調な内容でした、結果勝てたのだから、筆者もこれでキューウェル体制が続くのかな、と思いこんでいました。ただ、選手も口にしていることからも明らかなように、GKのファンブルを冷静に沈めた天野純選手の同点弾がなければ、正直そのまま流れで押し切られてもおかしくはない流れでした。広島戦も、ヤン・マテウスのゴラッソに救われた流れがあり、内容的にどこかのイングランド代表のように常に救われ続けたような感じはありました。

 なぜキューウェル最後の試合となった鹿島戦は勝てたのでしょうか。簡単にレビューしてみます。
 まず、大前提として、6/1の国立の試合で鹿島戦で2-3とすでにマリノスは、リーグ上位チームとの差を見せられてしまっていました。では、ここから、どう変わったのか。

 まず選手について、なのですが、キーパーが飯倉選手に代わったことです。
 飯倉選手は、飯倉チャレンジと言われがちですが、CBとの間に立って、しっかりビルドアップに貢献してくれます、ポープ選手も当初は、足元に定評がありましたが、ビルドアップ面では、そこまでカバー範囲が広くなく、こういう立ち位置をとることはほとんどなかったので、この違いは大きいです。 

 次に天野選手の立ち位置について、前回との違いは明らかにプレス時に、2トップ気味に構えていっていました。表記上は明らかIHですが、実際そんな位置をとっていません、個人的にはアーセナルのマーティン・ウーデゴールを思い起こさせました。

 次に鹿島側。細かいところは普段見ているわけでないので、申し訳ないのですが、一番大きいのは、6月のゲームとの間で、佐野選手が海外移籍、怪我から復帰で、柴崎選手が2ボランチを組んでいたのは大きな違いに感じました。それは、ボールの刈り取り役としては、知念と柴崎より、佐野の方がタスクを担えるので、この違いは大きかったように思います。もうすでに三竿選手の獲得が発表されており、絶妙な時期に対戦したことが分かります。

 ついで、マリノスの作戦ですが、いつもよりロングボールを多用作戦に切り替えているように思います。これが、キューウェルの作戦だったのか、解任されるがゆえの「俺たちは弱い」現実路線だったのか今ではわかりません。一つ、ビルドアップの不安点が解消されたようには思います。ロペスからのポストプレーを期待していたようですが、思うようにロペスの足元にそのボールが入るシーンは少なかったです、ただ得点シーンのエドゥアルドの放り込みは狙っていた形でしょう。

 後半、鹿島は高さのあるチャヴリッチを投入して、パワープレイ気味おの作戦。ポストプレーのできる鈴木優麿を一列落とし、フリーマン気味、特に左に立ち位置をとらせる作戦になります。これは前回対戦時も同様です。チャンスは作れていたのですが、これが前回ほどうまくいっていないのが疑問でした、掴みかねているのですが、鈴木が中央でなく、左に流れることで 前回よりも収まりが悪く自らがシュートシーンを作るということにまで連動できていないと思いました。
 
 次にスタッツに触れておくと、シュートやゴール期待値はほとんど近いものがあり、どちらかが勝ってもおかしくないゲームでした。とはいえ、4-1と差がついたのは、なぜでしょうか、それはゲームの流れのなかで速いうちに2点差をとれたことでしょう。前回対戦時と比べると、鹿島側もスタッツの数字自体は悪くなく、あまり違いを感じませんでした。もちろんこれまで指摘してきたように柴崎の運動量など、細かい違いはあるのですが、時の運というやつでしょう、ただ鹿島はビハインド時も、低重心になりすぎているのかなという点はあります、ただそれはスタイルの範疇なのかなと思いますが、怖さは感じなかった点です。

・ジョン・ハッチンソン暫定監督について

 よくキューウェルとセットのハッチンソンヘッドコーチが暫定監督では意味がないのではないか、とバッシング気味に言われていますが、ハッチンソンコーチ自体は、キューウェルと元々そこまで関係がなかったことは、彼の経歴を見ればわかります。今の今まで知りませんでしたが、オーストラリア代表でなくマルタ代表だったぐらいです。

https://www.sofascore.com/manager/john-hutchinson/797191

 マリノス、Jの経験が不足しているキューウェルの参謀役として、彼は選ばれた思いますが、その一方でこれまで特に対戦相手で何か特段変えるということはそこまでしていませんでした。

 興味深いのは、ここで彼がすでにキューウェルのサッカーの弱点だったボランチだったり、プレッシングに言及していることですね。

 ただ期待するだけでなく、彼のマイナスな印象を述べておくと、ケヴィンとの関係はそこまでうまくいかなったのか、一度退任している点ですね、本人もあまり納得していないような退任の仕方でした。

https://note.com/watarufunaki/n/n6280fd9920f3


「(キューウェル前監督は)アタッキングフットボールを一生懸命やってくれた。彼なりのエッセンスを入れようとしてくれていた。ただ一つひとつを見ていくと期待していたところには少しずつ届いていない」 [中山社長会見全文]「(キューウェル前監督は)アタッキングフットボールを一生懸命やってくれた。彼なりのエッセンスを入れようとしてくれていた。ただ一つひとつを見ていくと期待していたところには少しずつ届いていない」 [中山社長会見全文] | 「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン  マリノスの中山昭宏社長(57)が横浜市内の本社でハリー・キューウェル監督の契約解除とジョン・ハッチンソン氏が暫定として指 www2.targma.jp

 記事を書いていて、昨日の時点では正式監督就任のような印象すらあったのですが、暫定監督のようです。また、SNSで言われているような説明責任は直近のこの会見で果たされている印象でした。
 ただ、次の監督です。シーズン途中就任でもあり、すでにJリーグを知っている人をどうしても考えてしまうのですが、例えば、元徳島・浦和ののロドリゲス監督だとかは、中国サッカーにいますし、なかなか思い浮かぶ名前は多くありません、そういったところも込みでの暫定監督なのだと個人的には受け止めました。


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