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タイトな開発スケジュールのなかUXデザインを取り入れる方法

プロジェクトでUXデザインの手法を取り入れようとする際、時間が不足してしまうことはよくあります。特に、UXデザインの各プロセスを丁寧に行う場合、時間が足りなくなることが避けられないのです。

例えば、ユーザーテストを1回行うだけでも、参加者を募集するのに1週間から10日かかることがあります。さらに、スケジュール調整、テストの実施、結果の分析には、1ヶ月以上の時間が必要になることも珍しくありません。
大企業では、このような時間をかけたプロセスが可能かもしれませんが、小規模なプロジェクトでは現実的ではありません。

このような時、効果的な方法としてデザインスプリントがあります。デザインスプリントは、短期間でアイデアからプロトタイプの作成、ユーザーフィードバックの収集までを行う手法で、時間が限られているプロジェクトに最適です。この方法を使えば、限られた時間の中でもユーザー中心の設計を進めることができます。


デザインスプリントとは

デザインスプリントとは、5日間(40時間)でアイデアからプロトタイプの完成までを目指す課題解決の手法です。デザイン思考、アジャイル開発などの要素を取り入れて、ユーザーのニーズに応えるソリューションを迅速に検証することができます。

デザインスプリントのプロセスは、問題定義、アイデア出し、決定、プロトタイプ、検証の5つのステップからなります。デザインスプリントを導入するメリットは、迅速なアイデア創出と検証が可能であること、ユーザー中心の設計につながること、チームの結束力向上に寄与すること、リスクの最小化ができることなどが挙げられます。

デザインスプリントはUXデザインと相性がいい

デザインスプリントはUXデザインと非常に相性が良い手法です。これは、UXデザインがユーザーからのフィードバックを基に、ユーザー体験を改善することを目指しているためです。デザインスプリントでは、1週間という短期間で仮説を立て、それを検証し、リスクを最小限に抑えることができます。このプロセスを通じて、チームは迅速にアイデアを試し、フィードバックを得ることが可能です。

例えば、1週目に商品コンセプトに関する仮説を立てて検証することで、そのコンセプトが有効かどうかをすぐに知ることができます。もしコンセプトが不適切だと判断されれば、無駄な時間を費やさずに1週間でその結論に至ることができます。その後、2週目には新たなコンセプトを立て、再び検証することで、さらに課題解決に向けて進むことが可能になります。

このようにデザインスプリントを利用することで、1週間ごとに仮説を検証し、短期間で製品やサービスの方向性を確かめることができます。これにより、時間とコストを節約しながら、ユーザー中心の設計を実現できるのです。

デザインスプリントのプロセス

デザインスプリントは以下のように5日で1サイクルとなるプロセスです。

1日目: 問題の理解とマッピング
2日目: アイデア出し
3日目: アイディアの選定と決定
4日目: プロトタイプ作成
5日目: ユーザーテスト

それぞれの概要を簡単に解説します。

1日目: 問題の理解とマッピング

デザインスプリントの最初の日は、チームが集まってプロジェクトの目標をはっきりさせる重要なスタート地点です。この日は、過去の学びを活かして、新しいスプリントの方向性を定めることに重点を置きます。

チームはまずプロジェクトの目標を明確にします。2週目以降の場合は前回のスプリントからのフィードバックや挑戦点を振り返り、それを基に今回どの問題に取り組むかを決めます。この過程で、ユーザーのニーズや経験に深く焦点を当て、どうすればそのニーズに応えることができるかを考えます。つまり、最初の日は、チームが一つのビジョンを共有し、プロジェクトが成功するための基礎を築く日なのです。

2日目: アイデア出し

デザインスプリントの2日目は、アイデアをどんどん出していく日です。この日は、チームが集まって、解決したい問題に対するさまざまなアイデアを考えます。みんなでホワイトボードの前に立ち、紙にスケッチをしたり、話し合いながら、多くの異なる解決策を出し合います。

このプロセスでは、どんなアイデアでも歓迎されるので、自由に創造力を発揮できるのがポイントです。一人ひとりが思いついたことを紙に描いたり、話したりして、チーム全体で共有します。この段階では、まだ良いアイデアかどうかを判断しないで、とにかく多くのアイデアを出すことが大切です。このようにして、2日目はチームが協力して、問題を解決するための新しいアプローチを考える創造的な一日になります。

3日目: アイディアの選定と決定

デザインスプリントの3日目は、チームが集まって、前日に出したたくさんのアイデアの中から、最も良いと思われるものを選ぶ日です。この日は、どのアイデアが実際に問題を解決するのに役立つかをみんなで話し合い、合意に達します。たとえば、チームメンバー全員が参加して投票を行い、が最も有望だと思うアイデアに票を入れます。このプロセスを通じて、どのアイデアが最も支持を受けているかが明らかになります。

その後、選ばれたアイデアをもとに、チームはそのアイデアを実際に形にするための計画を立てます。

3日目は、チームが一つの方向に向かって進むための決定を下し、具体的なアクションプランを作る、とても重要な一日です。この日の作業を通じて、チームは次のステップであるプロトタイプ作成に向けて、共通の理解と目標を持つことができるようになります。

4日目: プロトタイプ作成

デザインスプリントの4日目は、チームが実際に手を動かして、選んだアイデアを形にする日です。この日は「プロトタイプ作成」に専念し、アイデアを具体的な製品やサービスのモックアップ(模型)に変えます。プロトタイプは、実際に製品を作る前の試作品で、デザインや機能、コンセプトをテストするために使われます。

プロトタイプを作る過程では、チームがデジタルツールや紙、粘土など、さまざまな素材を使ってアイデアを形にします。このステップの目的は、完璧な製品を作ることではなく、ユーザーが実際に体験できる何かを速く作り上げることにあります。プロトタイプは、翌日のユーザーテストで実際に人々に使ってもらい、フィードバックを集めるためのものです。だから、この日の作業は迅速さと効率が求められます。

5日目: ユーザーテスト

デザインスプリントの最終日は、作ったプロトタイプを実際に使ってもらい、どう思ったかを聞く日です。この日は「ユーザーテスト」と呼ばれ、プロトタイプが実際に役立つかどうかをチェックします。

朝から、チームはプロトタイプを使ってもらうために何人かの人を招きます。これらの人々は、製品やサービスの実際の利用者に近い背景を持つ人たちが望ましいです。彼らにはプロトタイプを使ってもらい、その使用感やどんなところが良かったか、改善が必要な点は何かを率直に話してもらいます。チームはこれらのフィードバックを注意深く聞き、観察し、メモを取ります。

このプロセスでは、プロトタイプを通じて実際の利用シナリオを再現し、利用者の反応を見ることで、製品のデザインや機能が実際に人々の問題を解決するかどうかを評価します。フィードバックは、製品をさらに改善するための貴重な情報源となります。

ユーザーテストの終わりには、チームは集まって収集したフィードバックを共有し、分析します。どのフィードバックがもっとも重要か、どのように製品を改善すればより良くなるかを話し合い、今後の改善計画のためのアクションポイントを決定します。

この日はデザインスプリントの締めくくりであり、チームが一週間の努力を振り返り、次のステップに向けて具体的な改善策を考える日です。ユーザーの生の声を直接聞くことで、チームは製品をより良いものにしていくための明確な方向性を得ることができます。

1週間よりももっと短い時間で実施するには

デザインスプリントは1週間という期間で仮説を検証する優れた方法ですが、プロジェクトによっては1週間が長く感じられることもあります。そんな時、デザインスプリントをさらに効率化して、通常3日間かけるプロセスを1日で行うこともできます。

実際に私が経験した例では、10人の担当者を1つの会議室に集め、10時間かけて課題の特定からアイデア出し、そしてそのアイデアの決定までを1日で完了させました。この方法では、通常3日間分の作業を1日に凝縮しました。

このように、時間が限られている状況でもUXデザインの重要な要素を取り入れ、効果的にプロジェクトを進めることは可能です。

まとめ

多くの人がUXデザインを学ぶ際、特に書籍から学んでいる人やUXデザインに不慣れな人は、UXデザインのプロセスが細かすぎて、実際のプロジェクトのスピードで取り入れるのが難しいと感じることがあります。

しかし、デザインスプリントのように、短期間で素早く進める方法も存在します。時間や予算が限られている状況でも、このようなアプローチを取り入れることで、UXデザインのプロセスを効果的に実践することができます。

株式会社VERSAROCでは、UXデザインに関するご相談も承っております。お気軽にご相談ください。

株式会社VERSAROC
代表取締役 江渕大樹
hiroki_ebuchi@versaroc.co.jp

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