見出し画像

ヴァーンフリートを追いかけて

 2022年7月16日(土)、夏競馬真っ盛りの福島競馬場で私の一口出資馬「ヴァーンフリート」が出走した。新馬戦勝ち以降体調を崩し半年間休養したが、その後芝を2戦ダートを2戦して勝てず、春クラシック出走の夢はかなわなかった。結局もう一度芝で2勝目を目指し、間に合えば菊も見えてくるか。必勝態勢のここは現地で応援するしかないと思い立ち、朝6時に横浜の自宅を出て福島に向かった。東京駅でモーニングを食べ、8時発のやまびこ175号に乗り込んだ。3連休初日なので混雑するかと思いきや自由席はガラガラだった。福島競馬場は4回目になるが、電車で行くのは初めてだ。
 
福島駅東口から競馬場へ行くバスが出ているので、新幹線を降りて在来線の通路に入る改札を抜けた。すると何と!そこには等身大のサラブレッド像が飾られていて「ようこそ福島へ、夏の福島競馬!!」とある。思わず携帯で写真を撮ったのだが、バックにはトイレが映ってしまう。せめて馬の向きを90度回転させるか、トイレが映らない場所で歓迎して欲しかった。「惜しいぞ!福島競馬!」
 
 バス乗り場2番か3番に来るバスはどれも競馬場前を通るらしい。それを確認してから、徒歩で福島稲荷神社に向かった。文化通りの古風な商店街を抜けたところが神社。駅から10分歩いただけだが、汗がどっと噴出す。今日の福島は異常なまでに蒸し暑い。福島稲荷神社には4年前、馬仲間と天栄の見学に訪れた時に初めて来た。ここにはいろいろな競馬の勝守りがあり、それを手に入れるため参拝に来たのだ。私は欲を抑えきれずに5種類すべてを購入していて、今日はそのうちの一つを持参し、愛馬の2勝目を祈願した。「ヴァーンフリートが無事に走って勝てますように!」
 
 そのまま徒歩で競馬場に行こうかと考えたが、この暑さでは汗まみれになりそうなので、一度駅に戻りバスに乗り込んだ。10分程走ると国道の右手に競馬場のスタンドが見えてきた。前の席から「次のバス停、年金事務所で降りた方が料金安くて便利らしいよ。」という声が聞こえてきた。競馬新聞持った人達が一斉に降りようと立ちあがったので、私も思わず立ち上がりバスを降りた。10円か20円得したのだろうか、「流石に地元の人達はよく知っているなあ」と感心しながら福島競馬場の南門から入場した。
 
 オッズマスターGPの期間なので前半6Rまでは福島も含め3場の全式別を100円ずつ購入済である。特に買い増したいレースもなかったので、4R障害レースで高田潤がジンゴイストをハナ差の勝利に導いた雄姿を見届けながら場内の見学に出た。スタンド内は前回来た時と特に変わったところはないようだ。中庭に行くと小さい子供たちが遊戯場で楽しそうに遊んでいる。付き添いの親はママばかりで苦笑してしまう。中庭からはつい先ほど障害レースで馬が登った坂や飛んだ障害を間近に見ることができる。「そうか、次に障害レース見る時は中庭も良いな」と一人でつぶやきながら柵際の芝の上を歩くと、前日までの雨で想像以上に湿っていてかなり柔らかい。靴も汚れてしまった。「今日の芝は不良に近い重かな?ヴァーンフリートは大丈夫だろうか?馬力はありそうだが。」ウォーキングの後は5階のレストランで生ビール!そして特性メンチとカレーを堪能した。
 
 7R1番人気カナロア産駒のヨールが勝った後、いそいそとパドックへ向かった。8Rの馬たちが返し馬に向かうと同時に最前列を確保した。しばらくして場内の実況アナウンスが終わった頃、電光掲示板のオッズが9Rに変わる。さあいよいよヴァーンフリートが登場する。5月の東京以来なので約2か月振りの対面だ。落ち着いて周回できているが、発汗がひどい。確かに今日は蒸し暑いが、ゼッケンの回りは真っ白で、歩く度に腹下から汗がしたたり落ちている。他馬と比較しても一際目立つ。「んー、夏は苦手なのかな?でも新馬戦勝ったのは6月だったから大丈夫かな?」返し馬では、他馬が皆走り出す中1頭だけ誘導場の後ろから落ち着いて常歩を踏み、ゴール板過ぎに鞍上の戸崎騎手が促すと気持ち良さそうに駆け出した。芝は重だが走りは軽快だ。
 
 レースはゲートを互角に出て外目の3番手でうまく折り合っている。絶好の位置取りだ。1,000m通過は60.9秒、逃げるオーシャンズヨリを終始手応えよく追走し、内のテラフォーミングと競るように4コーナーを回り直線に向かう。戸崎が追い出すと逃げ馬を交わして楽勝で伸びるように見えたが、内から石橋テラフォーミング、外はヴァーンフリートを終始マークしていた津村アイアゲートが並びかけてきた。その3頭のたたき合いとなり、残り1ハロンあたりではヴァーンフリートが抜け出したように見えたが、ゴール寸前アイアゲートに差されてクビ差の2着に負けた。上りが36.7秒もかかるタフな馬場で津村の好騎乗にやられてしまった。でも愛馬は最後まで懸命に走ってくれた。「ヴァーンフリート、よく頑張った。お疲れ様。次こそ頼むぞ!」それにしても惜しいレースだった。
 
 ヴァーンフリートは圧倒的な1番人気でしかも9頭だてのレースだったので、馬券の妙味なく3連単の頭固定
しか購入していなかった。結果的には馬連くらい抑えておけばと思ったが後の祭りだ。さて、福島メインのバーデンバーデンカップには馬仲間TO氏の愛馬レッドクレオスが出走する。9頭だての7番人気だ。記念となる「がんばれ馬券」のみ現物で購入し、ネットで複勝を厚く買って応援した。芝は稍重に回復している。ゲートをスムーズに出て中団5番手のインで折り合う。直線では外に出さずそのままインを突いて3着となった。負けたとは言え、逃げ粘った嶋田アビックチアとは5馬身差があったので、TO氏も久々の馬券圏内に満足しているかな。がんばれ馬券(当たり馬券)とレーシングプログラムはTO氏へのおみやげだ。複勝は390円ついた。
 
 馬券の収支は愛馬につぎ込んだ分大幅にマイナスだったが、ローカル福島競馬場に来て愛馬を応援することができたので良かった。帰りは最終レースが始まる前の空いた時間に、バスで福島駅に向かった。駅の周辺で気の利いた居酒屋を物色したが4時台では営業していない店ばかりだ。東口正面の大衆居酒屋を覗くとカウンター席が空いていたので入り、カツオ刺身にアジフライを肴に生ビールとレモンサワー。賑やかな先客たちから聞こえてくるのは、やはり「馬のお話」だ。新幹線の時間まで地場の居酒屋を満喫し帰途についた。
 
「ヴァーンフリート、何とか勝たせたかったが、本当に残念だった。菊は厳しいが次走に期待しよう!」次走は新馬戦勝ちした東京の芝を走らせてあげたい。手塚さん、よろしくお願いします!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?