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萩・阿武町旅行2024

2024年5月中旬に山口県萩市・阿武町を中心に3泊4日の旅行をしてきました。その旅の備忘録になります。
幕末から明治にかけて活躍する著名人を数多く輩出してきた萩。自分はあまり日本史に詳しくはないのですが、コンパクトながら歴史ある街並みが残されていることに興味を持ち、行ってみることにしました。


1日目(5月24日)

東京駅から新山口駅へ出発。朝は曇り気味でしたが少しづつ晴れ間も見えてくる空模様でした。暑くも寒くもない5月の爽やかな空気が漂います。
新幹線に乗って約4時間、新山口駅に到着。真新しい駅舎は意匠を凝らしたオシャレな作りです。駅前広場も広々としていてベンチも多くあり、新幹線の駅としての矜持を感じます。

そこからバスに乗り約1時間。料金は交通系ICカードのほか、待合室にある券売機でも購入できます。萩までは片道1600円。予約はできませんが自分が乗った時は6~7人程度しか乗車していなかったため、座席も広々と使えました。
待合室でバス会社の人に使ってるバッグがかっこいいと褒めてもらいました。中華製の安いバッグですが、ささいな交流は後になって旅の思い出になります。

深い山の中をひた走るバスからの景色も素晴らしいものです。新緑が濃く、霧に濡れる木々と山々はとても美しく、その土地を切り開いて家を建て畑を作る街並みに目が離せませんでした。あっという間に萩に到着。この時点で既に16時半近く、1日がほぼ移動で終わりましたが、移動自体が旅の醍醐味と思っているのでさほど苦には思いませんでした。

ホテルにチェックイン後、街の散策へ出発。100円均一で乗れる市内循環バスで街全体の様子を流し見しつつ気になったところで下車。曇りですが静かに風が吹きすさぶ指月山と菊が浜は寂しさと荘厳さが感じられました。

暗くなるまではまだ時間もあったので城下町まで足を延ばしました。この辺りは観光ガイドにも必ず載る白壁の美しい街並みが残るエリアでしたが、とにかく人がいませんでした。
すでに主要施設は閉館している時間ではあったものの、観光客どころか地元の人にすらすれ違いません。自分が知らない間に立ち入り禁止エリアに入ってしまってんじゃないかと思ったほどです。
オーバーツーリズムが叫ばれる昨今において、それなりに知名度のある萩でこのような感覚になるとは想像していませんでした。嬉しさと驚き、不安が混ざった気分。これが非日常という感覚なのでしょう。

夕食は「どんどん土原店」で肉うどんを注文。山口県内では有名なローカルチェーンの本店で、一度食べてみたかった目標が叶いました。注文してから商品を持ってくるのがめちゃくちゃ早いことで有名らしくワクワクして待ってましたがわりと待ちました。まぁ忙しかったんでしょう。

肉うどん+わかめおにぎり ねぎはかけ放題


2日目(5月25日)

朝から雲一つない快晴。ですが気温はそこまで高くなく爽やかな空気でした。
この日は萩市から阿武町方面へ、海岸線をサイクリングする予定です。

東萩駅前のレンタサイクルでクロスバイクを借りる。1日貸し2000円。朝から元気なおじいちゃんに圧倒されながら観光1日目スタート。

萩中心地から少し走ると現れるのが産業遺産の萩反射炉。日本に3つしか残っていない貴重な反射炉遺構だそうで、レンガ積みの迫力ある堂々とした佇まいに圧倒されます。
まだ朝早い時間だったためほとんど人もおらず、ゆっくりと見学できました。

近くにある恵美須ヶ鼻造船所跡にも寄り道。萩藩が列強に対抗するために造船所を作った遺構だそう。港の先にはいくつも小島が眺められ、入り組んだ港湾は確かに造船に適した土地だなぁとぼんやり考えつつ旅路を急ぐ。

ここからはひたすら自転車をこいで阿武町を目指します。サイクリングコースとして整備されているわけではなく一般道であるため車の往来にびくびくしながらも、きれいな海岸線をひた走ります。
途中に海水浴場がいくつかあり、まだシーズンではないため人はいなく静かな浜辺でした。そんなきれいな海岸線が続くと思ったら、途端に断崖絶壁の険しい海に変化していきます。荒々しい奇岩が立ち並ぶ様子からは、荒々しい日本海の荒波に耐える様子がありありと想像できます。

萩から阿武町までは90分程度と聞いてましたが、撮影をしたり寄り道したりで3時間くらいかかりました。風はあるものの山道ではなく、比較的平坦な道路のため走りやすいと思います。それでも慣れてない自転車で息を荒くしながらなんとか道の駅阿武町に到着。
地域の物産売り場はすごい混雑で驚きました。萩についてからほとんど人とすれ違うことすらないほどに観光客がいなかったため、思わず退散。とりあえず近くのカフェで休憩することに。
道の駅の本館から少し離れた場所にある「SUNbashi CAFÉ」で清ケ浜ソーダとチョコブラウニーを注文。こういうドリンクはあまり飲んだことがないですが爽やかな味わいでとても美味しかった。カフェから見える海のように透き通った色をしていました。

時間もいい頃なので昼食をとることに。普通カフェが後だろうと思いつつ本館のお店で地元牛のキーマカレーをいただく。小さいお店でおばちゃんが頑張って作っていた。
カレーにすると牛肉の味とかよく分からん。美味しかった。

しばらく休んでから再出発。益田方面へもうちょっと走ろうと思って頑張りました。この先はしばらく山道で峠を越えたりするのが大変でしたが、旅行パワーでなんとかしました。
観光地化されていない静かな港町を歩き回ったり、道をふさいで近寄っても逃げないトンビと戦ったり、なんだかんだ面白いものばかりでした。

のんびり撮影してたら夕方になってしまったので急いで萩へ戻る。早めの夕食は道の駅萩しーまーとで海鮮丼をいただきました。17時ラストオーダーはなかなか厳しい時間制限。ここだけではないですが全体的にお店の閉まる時間が早く、夜になると居酒屋くらいしかなくなってしまい自分のような酒の飲めない人間は夕食にありつけにくくなる。でもこいういことは旅行にはよくあること。酒が飲めればいいだけの話なので深くは考えない。

レンタサイクルは18時まで。夕方も元気なおじいちゃんに自転車を返却しホテルへ。流石に丸一日走りっぱなしは疲れました。


3日目(5月26日)

日焼けがひどく、おしりも痛いこと以外は健康的な目覚め。思ったより体力はあったらしいので今日も観光へ。本日は萩をのんびり回る予定。

2日目も朝から元気なおじいちゃんにまた自転車を借り、市内を走ります。萩は三角州の街なので道は平坦で走りやすく、観光地もコンパクトにまとまっているので自転車で容易に回れるのが魅力的です。

まず向かったのは南部にある旧湯川家屋敷。近くの川から水を引き込み、生活用水や庭園として使用している風流な伝統家屋です。
ここは本当に素晴らしかった。今回の観光で一番良かった場所を聞かれたらここと答えるし、今まで結構な数の旧宅を見てきましたが最も美しいと言い切れるほど、素晴らしい家屋と庭園でした。新緑が反射する池には鯉やサワガニが泳ぎ、畳の部屋からは額縁のように庭が見え、さながら絵画のようです。水が流れる音しかないほど静かで、あまりにも贅沢な空間でした。

平成9年までは子孫の方が実際に住まわれていたとのこと。上の写真は川の流れを家の中に引き込んだ炊事場です。観光地として見る分には意匠を凝らした美しい作りですが、実際に住むとなるとどうなんだろうとふと考えます。実際、子孫の方がなくなった後に萩市に寄贈された際、庭も荒れ放題だったそうです。そういうものだと思います。
ガイドの方がとても気さくで、説明というより世間話をする感覚で長いこと話していました。客も自分しかおらず、なぜか近くでとれた夏ミカンもいただきました。こういう時間が一番楽しかったりする。

萩市は三角州にできた街である以上、水との戦いは避けられなかったはずです。井戸はかなり深く掘らなければ塩水になり、川もかなり上流のほうまで汽水だそうで、水の確保、そして水害への対策には多くの苦労があったはずです。ガイドさんにも詳しく教えていただきました。実利を目的とした水路が時代を経て観光地となった経緯はとても面白いものでした。

ガイドさんに「幕末で好きな人はいますか」と聞かれて、考えたこともなかったので「おススメの人いますか?」と答えてしまった。居酒屋の注文じゃないんだぞ

隣の桂太郎旧宅も見学。ここもまぁすごい庭園でした。
ガイドさんによると、桂太郎自身はここを別荘として建てたがほとんど訪れることはなかったそうです。総理大臣として多忙な日々を東京で過ごす中で地元に別荘を建て、引退後の静かな生活を夢見たことでしょう。しかし結局はほとんど使うこともなく、東京で病に斃れました。
その話を聞くと、この家も主人の帰りを今でも待ち続けているような、少し物悲しくも感じます。

観光地一発目から圧倒されつつ散策を再開。水路として整備された藍場川の風景があまりにも風流。そしてやはり人がいない。

途中のカフェで休みつつ、自転車で萩城方面へ。途中に鍵曲(かいまがり)という古い家々が複雑に並ぶ街並みも見学。城下町らしい入り組んだ道路の構造が残されていて見事でした。

どこを切り取っても絵になるような街並み、ずるい

萩城に向かう途中に遊覧船があったので乗船。川を遡上し、Uターンして海へ出る40分くらいの船旅。風が強かったこともありスリリングで楽しかった。

次は萩城へ。天守閣はないですが立派な石垣が残っています。場内もかなり広大で散策しがいがある。

日差しは真夏のように強くなっていて、でも風は冷たく不思議な感じでした。静謐な森の中を歩いていると展望台があるとのことで行ってみることに。

先ほど遊覧船で出た海を一望できるスポットでした。青々とした海と空を俯瞰して見ているようでとても美しい場所です。相変わらず人はいなく、時間の許す限り見ていたいなと思う光景でした。

萩城を出て市街地へ。畔亭で遅めの昼食をいただきました。地元牛のハンバーグ定食。ツツジが咲き乱れる日本庭園を見ながら静かに食事ができました。

時間は夕方が近くなり、そろそろ旅行の締めに。自転車で中心地の東側にある東光寺へ。毛利家の代々の墓所となっているお寺です。
山の中にあり自転車では結構大変ではありますが、そんなに長い距離走るわけでもないので気合で行きました。思いのほか坂道もすぐ終わります。
閉門の30分前に到着。やはり自分以外だれもいない。

500基の灯籠が並ぶ荘厳な墓所。あまりのパワーに恐れ多くて立ち尽くしてしまいました。カサカサという風に揺れる木々の音だけが聞こえる中、しばらく手を合わせていました。

駆けこむようにして最後の目的地、松陰神社へ。あの有名な松下村塾がある場所です。
萩にいったらここにいかないと、ということで急いで向かいます。関連施設は閉まってしまいますが、神社自体は遅くまで空いてるそうなので最後にしました。
足早に参拝を済ませ、松下村塾を見学。思いのほか小さい建物でしたが、塾生の名前はあまりにも有名どころばかりで圧倒されます。
疲れもあって、もはや感想が「つよい」しか出なかった

流石に丸2日自転車走りっぱなしは疲れました。ホテルへ戻りさっさと就寝。いい一日でした。


4日目(5月27日)

東萩駅から新山口駅までの高速バスに乗るため早めの起床。ホテルのチェックアウトはルームキーを返却ボックスに入れるだけという簡単仕様。

ありがとう萩ロイヤルインテリジェントホテル…。低価格のわりに朝食バイキング無料だし大浴場もあって大満足。
露天風呂が向かいのマンションから丸見えなのも慣れるとなんとも思わなくなったよ…

帰りは行きと同じ行程で東京へ。朝から曇り気味でしたが萩を離れたとたんに降り始めました。タイミングがよくてラッキーな一日でした。


旅を終えて

今年、ニューヨークタイムズが「2024年に行くべき52カ所」で世界各地の旅行先の中で山口市が3番目に選ぶということがありました。

選抜の理由のひとつに「観光公害が少ない」がありました。今回の旅行は山口市ではないですが、同じ山口県の萩市・阿武町に行ってみてやはり同じように思いました。日本各地の主要観光地がオーバーツーリズムに悩まされる中で、静かで落ち着いた街並みと人、一抹の寂しさすら感じる旅情を味わうには最適な場所であると思いました。
事前に観光情報誌やYoutubeで観光地を調べていましたが、やはり実際に現地に行くと全く違うこと。旅行の醍醐味を存分に味わうことができました。

最後に旅らしい旅をしたのが2019年の夏。青森に行った時以来、5年ぶりの旅でした。もはや旅の仕方も忘れてしまっていたような気分でしたが、再び思い出させてくれるような、そんな旅でした。


ホテルの部屋からの眺め。左の山が指月山、正面の川が松本川


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