日記🧞

☔8月9日(日)☁

帰宅して自室に向かい、部屋のドアの隙間から金色の光が溢れているのに気づいて立ち止まった。
こんなに金色なのは、もう石油王が不法侵入しているってことに違いない。最悪。



シャーッと威嚇しながら勢いよくドアを開けると、
金色の光の正体は意外にも石油王ではなく、

ランプであった。


異国情緒を感じる金色のランプが、散らかった机上に忽然と置いてあった。
朝まで無かったはずなのに。

全く心当たりはないが、まあまあ、出どころなんてどうでもいいじゃないか。
どうせ青いやつが出てきてなんやかんや叶えてくれるパターンだろう。
ともかく千載一遇のチャンスってわけ。

私は「青いやつ出ろ…青いやつ出ろ……」
と願いながら、幼い頃見たディズニー映画の記憶を頼りにランプを撫でた。
愚かな人間さ。

しかし、撫で方が間違っていたのだろうか
線香のようなしょぼい煙と共にジワ〜っと現れたのは、灰色に近い微妙な薄水色の魔神だった。
目とかもすごいほっそい。
一瞬で脳内あだ名は"がっかり魔神"に決定した。

がっかり魔神が何やらボソボソと喋っている。
が「…や………け…………んだよな………」

若干の苛つきを抑えて丁寧に聞き返すと、
さっきより少し大きな声で
が「夜勤明けなんだよな〜クソ…！」
と言われた。

知るか。魔神は夜勤しないだろ普通。
そんな状態で来られてもこっちも気分悪いし、早く帰って寝てほしい。でも願いは叶えてほしい！は〜愚か！


と、ここで、がっかり魔神が咳払いをして仕切り直し、何事もなかったかのように話しかけてきた。

が「えー、はい、それではね、望みとか願いとか？なんかそんなようなのあるでしょ。
え、あるよね？そりゃあるか(笑)あるわな(笑)
……えーっと、なんだっけ…あ、そう、それをね、まぁ叶えてあげましょうってやつなんだすけども！」

セリフ調のマニュアルあるだろ。覚えとけよ。世界観台無しだよ。


が「どうッスかね、もう決まってます？」

ありゃ！そういえば、どんな願いを叶えてもらうか全く考えてなかった！
ノープラン ランプ撫で女かよ！

申し訳ないが、ここは結構大事な局面なので時間を使って考えたい。
ちょっと待ってもらえるか聞いたところ、

が「お、全然いいッスよ。納得いくまで考えちゃってください。絞れないときはトーナメント形式が決めやすいらしいって聞きますね〜」と言ってくれた。なるほどな。


私がお言葉に甘えてじっくり考えている間、
がっかり魔神は顎に手を当て、暇を持て余し、しばらくカーテンの模様を眺めている様子だった。
しかし、そのうちにウトウトし始めたので
「あの……」と声をかけると、
魔神はハッとしたような顔をしてこちらを見て、ガッツリ目が合ったままゆっくりとランプの中に収納されていった。

ランプはメルカリに出品しました。