日記🦒
☀6月12日(金)☁
家に帰ると、リビングの床が1メートル四方ほど、ごっそり無くなっていた。
マンションの真下の階の部屋へと貫通している状態だ。
さらに驚くべきことには、
その穴からキリンが顎から上だけを出して、こちらを見ていた。
めっちゃ臭い。どうやら本物のようだ。
ただでさえ人見知りなのに、急にこんな面長の動物と二人きりにされるのは怖すぎる。
膝を抱え、完全に心を閉ざし、部屋の隅に座り込んでいると、
母親から電話があった。
「あ、もしもし?タピオカ大臣?
もう帰ってた?驚いてるでしょ。
今お母さん仕事中だから詳しくは話せないけど、もし気になるなら下の階の左府有さんから事情聞いてね。
あと炊飯器のスイッチ押しといて!」
お母さんったら、また私を双子の姉タピオカ大臣と間違えているが、今はそれどころではない。
キリンとなるべく距離をとりつつリビングに空いた穴を覗き込み、サファリさんこと左府有さんを呼ぶ。
「あの…左府有さん…いらっしゃいますか…」
すると、下の部屋から
「んだ、もうそんな時間だな」
という声が聞こえて、
葉っぱのついた枝が、うちの床に次々と投げ込まれた。
状況がわからずあたふたしているうちに、
キリンがそれを食べる。
床が臭くなる。
しんどい。
やめてもらわなければ。
「すいません。左府有さん、枝投げないでもらえますかね。」
「あれ、餌の時間でねがったか?」
「あ、いえ、えっと…え?餌の時間?」
「お家の人から聞いてねぇのか?」
「何も聞いてないですよ。このキリンと床の穴、どういうことなんですか!」
「あの悪いけど、今日からうちでキリン飼うことになったのよ。んだけども天井が低いから首がこう、ぐぅーっとなって可哀想だっちゃな。頭んとこが天井とすれていずいごだね。だからね、お宅のお母さんに、床にキリンスペース作ってもらえねぇか聞いたっけ、いいですよーって言ってくれたから。穴開けたのよ。そういうわけで、これから頭のとこ可愛がってあげてな。んじゃ、ちょっと出かけてくるから。」
そう言ってサファリさんはどこかに行ってしまった。
なるほど、キリンを飼い始めたら天井の高さが足りなくなって、上の階との境目を取っ払ったという訳か。
一旦冷静になって炊飯器のスイッチを押し、状況を整理する。
それにしても、この穴のことをキリンスペースと呼ばないでほしい
左府有さんにとってはキリンスペースでも、家にとっては紛れもなくリビングだというのに。
ここだけカタカナ使っているのもなんか嫌だ。
でもまぁ、サファリさんのペットということなら仕方ない。
可愛がるとするか。
ということで、お母さんが仕事から帰ってくるまでの間、昨日のアメトーークを見せてあげた。
キリンは、向井さんが相席食堂での相方の話をするところで号泣していた。
キリンが熱いバラエティ論で流す涙は綺麗だったが、それ以上に臭かったので、モップで全部下の階に流し込んだ。
さすがに。さすがにね。
お笑い軍資金にさせていただきます。