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福岡と愛知、入院患者の半数が軽症 病床逼迫"ステージ4"の要因か 5月12日から緊急事態宣言に

 政府は5月7日、4都府県の緊急事態宣言を延長するとともに、愛知県と福岡県も緊急事態宣言の対象地域に加えることを決定した。病床使用率が「ステージ4」に該当することも判断要素になったとみられるが、実は、両県とも入院患者の過半数が軽症・無症状の患者で占められていることが、公表されているデータから確認できた。
 政府は昨夏、「軽症・無症状の患者は宿泊、自宅療養」とすることで医療機関の負担軽減を目指す方針を示していたが(8月28日の安倍晋三総理退任会見)、実際は多くの自治体で徹底されていない。
 愛知県と福岡県も、多数の軽症・無症状の入院患者が病床使用率を押し上げ、医療逼迫の要因になっている可能性がある。
 入院患者に占める軽症以下の割合が1割程度に抑えられていた場合の病床使用率を試算したところ、いずれの県も「ステージ3」になることがわかった。

軽症以下の入院患者が1割だった場合は「ステージ3」相当に

 愛知県・福岡県ともに、入院患者を「重症患者」「中等症患者」「軽症・無症状患者」の3通りに分類して公表している。

 5月6日現在、愛知県の入院患者は709人で病床使用率58.4%。このうち軽症・無症状は442人(62.3%)と、半数を大きく超えている。自宅・宿泊療養は2579人。療養ホテルは1300室確保しているが、300人程度しか使用していないとみられる。
 福岡県の入院患者は676人で病床使用率78.8%、このうち軽症・無症状は318人(47%)と、やはり半数近くを占めている。自宅・宿泊療養は2929人。療養ホテルは1538室確保し、約800人が使用しているとみられる。

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 政府の方針では、軽症・無症状でも、高齢者や妊婦などハイリスクの陽性者は原則入院としてよいとしており、一定数の軽症・無症状の患者が入院することは否定すべきでない。
 だが、実は、「軽症・無症状は原則療養」を比較的徹底しているとされる神奈川県では、入院患者に占める軽症・無症状は10%前後にとどまっている。

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 仮に、愛知・福岡両県において軽症・無症状の患者割合が1割程度に抑えられていた場合、病床使用率はどうなるか。
 試算してみたところ、次のようになった。

<試算結果>
・愛知県(確保病床1215床) 現在の病床使用率:58.4%<ステージ4>
 →軽症以下が入院患者の1割程度だった場合:26.2%<ステージ3>

・福岡県(確保病床858床) 現在の病床使用率:78.8%<ステージ4>
 →軽症以下が入院患者の1割程度だった場合:46.4%<ステージ3> 

 政府は、昨年秋に新型コロナ陽性者の入院対象を原則として中等症以上とする方針を決定したが、「中等症」の定義を決めておらず、事実上、各自治体の運用に任せている。そのため、多くの自治体では、軽症・無症状の陽性者が多数入院しているとみられる。この問題については、以下の検証記事も参照されたい。

<愛知県の陽性者の状況>

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<福岡県の陽性者の状況>

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<神奈川県の状況>

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