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時短命令違憲訴訟 メディアは提訴をどう報じたか

 東京都の時短命令は違憲・違法だとして、飲食チェーン「グローバルダイニング」が3月22日、都に損害賠償を求める訴訟を東京地裁に提起したことについて、主要メディアがどう報じたかを分析、検証した(新聞・テレビの調査対象は全国紙東京本社版、東京での放送)。

提訴の事前報道

 東京都の時短命令は違憲・違法だとして、飲食チェーンのグローバルダイニング社が東京都を提訴すると初めて報道したのは弁護士ドットコムニュース(3月19日)。Yahoo!ニューストピックスでも取り上げられ、大きな反響があった。

 翌日共同通信が配信し、産経新聞東京新聞がニュースサイトに掲載。20日付朝刊にも見出し2段で掲載した。いずれも代理人の倉持麟太郎弁護士のコメントを紹介していた。夕刊フジ日刊ゲンダイも事前に提訴を報じた。

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(左は東京新聞3月20日付朝刊第2社会面、右は産経新聞同日付朝刊第1社会面)
 

提訴後の報道(ニュースサイト)

 3月22日の提訴について、新聞社の在京6紙と通信2社すべてがニュースサイトで記事化した。読売、朝日産経日経東京の5紙と共同が時短命令が「違憲」または「憲法違反」という訴えを見出しに入れて報じた。一方、毎日は「表現の自由を侵害」という表現を見出しに使った。読売は「104円の賠償求め提訴」と見出しに訴額も入れていた。時事は「違法」を見出しに使った。

 テレビ局の主要ニュースサイトもすべて提訴を取り上げた(NHKNNN(日本テレビ)FNN(フジテレビ)ANN(テレビ朝日)TBS)。

 他に、日刊ゲンダイニッカンスポーツスポーツ報知も提訴を報じた。ネットメディアで独自に記事化したのは、弁護士ドットコムニュースIT mediaだった。

 Yahoo!ニュースも提訴の報道を改めてトピックスに掲出した。

提訴後の報道(紙面)

 新聞紙面での扱いには多少の違いがあった。最も目立つ扱いだったのが、写真入りで掲載した東京。読売も比較的目立つ扱いをした。
 朝日、産経、日経、毎日の4紙はベタ記事扱いで、一番分量が少なかったのは毎日だった。
 日経と毎日は、グローバルダイニング社が請求額を104円とした点について触れていなかった。

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(左は東京新聞3月23日付朝刊第1社会面、右は読売新聞同日付朝刊第1社会面)

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(左は朝日新聞3月23日付朝刊第1社会面、右は産経新聞同日付朝刊第1社会面)

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(左は日経新聞3月23日付朝刊第2社会面、右は毎日新聞同日付朝刊第1社会面)

テレビ(報道番組・情報番組)

 放送各局も22日から提訴のニュースを報じた。硬派な報道番組では大きく取り上げたところが少なかった一方、TBS「ひるおび」や日テレ「スッキリ」などの情報番組ではかなり時間を割いたところもあった。ただ、テレ朝の情報番組ではほとんど取り上げられなかった。
 詳しくは以下の通り。

<NHK>
 NHKは22日18時台の「首都圏ネットワーク」「ニュース7」で提訴を短く報じた。ただ、「ニュースウオッチ9」(21:00〜22:00)では取り上げなかった。

<日本テレビ・NNN>
 日本テレビは、提訴会見(12:30〜)前に放送された「スッキリ」(8:00〜10:25)で、「"時短命令"飲食店が都を提訴へ」と題して約8分間のVTRのほか、スタジオの解説や識者のコメントを含め約19分間取り上げた。
 読売テレビ制作の「情報ライブ ミヤネ屋」(13:55〜15:50)も提訴の速報VTRに加え、スタジオ解説などを含め約18分間取り上げた。
 夕方の報道番組「news every.」(15:50〜19:00)は約3時間の番組中、約2分のVTRニュースのみ流した。
 夜の報道番組「news zero」(23:00〜0:00)は約2分余り、有働由美子キャスターの論評抜きで報じた。

 翌朝の「ZIP!」(5:50〜8:00)は短くVTRニュースで伝えたが、「スッキリ」は10分以上の長いVTRで詳しく伝えつつ、スタジオでも約15分間議論が行われた。

<テレビ朝日・ANN>
 テレビ朝日は「グッド!モーニング」(4:55〜8:00)で短いVTRで提訴の事前報道をした。
 だが、その後の「モーニングショー」(8:00〜9:55)ではコロナに関する話題を長く取り扱ったものの、提訴については全く触れなかった。
 「ワイド!スクランブル」(10:25〜13:00)は、昼のニュースで提訴の第一報を短く伝えた。
 夕方の報道番組「スーパーJチャンネル」(16:40〜18:45)では、約3分間のVTRニュースで伝えた。
 「報道ステーション」(21:54〜23:10)は約4分間のVTRニュースで詳しめに報じたが、コメンテーターを含め論評はしなかった。

 なお、テレビ朝日系のネット番組「ABEMA Prime」(21:00〜23:00)では、グローバルダイニング社の長谷川耕造社長と倉持麟太郎弁護士が生出演し、スタジオで議論が行われた。

 翌朝の「グッド!モーニング」も提訴のニュースを取り上げ、出演者(岸博幸・慶應義塾大学教授)がスタジオでコメントした。
 その後の「モーニングショー」「ワイド!スクランブル」はこの話題を取り上げなかった。

<TBS>
 TBSは「あさチャン!」(6:00〜8:00)で短く提訴することを報じた後、「グッとラック!」(8:00〜9:55)でもVTRを流した後、スタジオで約5分間、橋下徹弁護士ら出演者がこの話題について議論した。
 「ひるおび」(10:25〜13:55)でも、午前の部でスタジオで約10分間取り上げた。昼のニュースで提訴会見を報じた後、午後の部でも15分以上をこの話題に割いて解説や出演者の議論が行われた。
 「ゴゴスマ」(CBCテレビ制作、13:55〜15:49)もトップで提訴会見を15分余り、スタジオで取り上げた。
 だが、夕方の報道番組「Nスタ」(15:50〜19:00)では2分程度の短いVTRニュースを流しただけだった。
 夜の報道番組「ニュース23」(23:00〜23:56)でも約2分のVTRで論評抜きに報じた。

 他方、BS・TBSの「報道1930」(19:30〜20:54)では解説付きで3分半ほど取り上げられた。

 翌朝の「あさチャン!」は提訴会見をやや長めのVTRニュースで論評抜きに報道。
 「ひるおび」は前日に続いて、午後の部でこの話題を取り上げ、CMを挟んで約1時間ほどスタジオのコメンテーターらと議論を交わした。

<フジテレビ・FNN>
 フジテレビは11時半からのニュースで提訴の第一報を伝えた後、「バイキングMORE」(11:55〜14:45)で約15分、スタジオでこの話題を取り上げた。
 夕方の報道番組「イット」ではVTRニュースに加えてスタジオでのコメントの枠も数分間設けられた。
 夜の報道番組「FNN Live News α」(深夜0:10〜0:55)ではスタジオで解説委員によるコメントがあった。

 また、BSフジの討論番組「LIVEプライムニュース」(20:00〜21:55)でもこの話題が橋下徹氏と三浦瑠麗氏による議論が行われ、番組サイトでも記事化された

 翌朝の「めざましテレビ」(5:25〜8:00)ではストレートニュースで提訴会見を伝えつつ、スタジオ出演した俳優、谷原章介さんがコメントする場面もあった。
 「とくダネ!」(8:00〜9:50)でもこのニュースがスタジオで短い時間だが取り上げられた。

新聞社説

 今回の提訴について、社説で取り上げたのは朝日新聞。26日付で「時短協力金 不合理な支給を改めよ」と題して掲載した

 同社説は、提訴の経緯を紹介したうえ上で、「気になるのは、都が命令を出した32店のうち26店がグローバルダイニングの店舗であることだ。時短反対を公言する同社を狙い撃ちしたように見える。権利を制限する措置を、恣意的に運用することがあってはならない」と指摘。

 一律で1店舗あたり1日6万円の時短協力金についても「零細な店では十分すぎる場合もあるが、大規模店では家賃や人件費をまかなえない」とし、「経営への影響の度合いを勘案し、必要な支援となるよう努める」とした改正特措法の附帯決議を踏まえた対応が必要だとの考えを示した。

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(追記予定)

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