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あの場所

金曜日は昼休憩を挟んで二限分の空きコマがある。故意ではなく、わたしのうっかりミスで、恥ずかしい。

今までは空き教室を確保して食料調達をし、ドラマ(相棒)を見て過ごすという何ともだらけたものだった。この過ごし方は決して嫌ではないし、苦痛ではなかった。しかし、この過ごし方を許している自分が嫌だった。そんな自分を卒業しようと大学のバスに揺られながら決心した。その時私はバスから見える河川敷のような場所にいつも目を奪われていることを思い出し、そこに足を運んでみようと思った。

お散歩に行くことが楽しみで仕方なくて(だって最高に最適なお散歩日和であったから)、一限はなんだかそわそわしてしまった。で、あまり授業に集中できなかったということはおいておく。十時三十分、一番乗りで教室の扉を開けた。

河川敷のような場所に向かう道中はoasis(父のお気に入りのアーティスト)を聴き、足を弾ませた。目的地に着く前にも沢山の出会いがあった。

まずは坂を下る最中。ふと鼻先に漂ってくるものがあった。その正体はお花だった。風に揺れる、ハッキリとした原色のお花は生き生きとしていた。
もう一つは枯れ葉で作られた絨毯の細道。歩くたびに‘‘ぱりぱり‘‘や‘‘しゃくしゃく‘‘、‘‘ぼすっ‘‘といったような音が鳴る。その音と感触が楽しくてついその場で足踏みなんかをしてしまう。そういえば、雪の日も同様にその行為をしてしまう。私にはまだ幼心が残っているなと思う瞬間の一つである。

そんな出会いを得て、やっと目的地に到着した。目の前に広がる、川、草っ原がわたしの心をぱっと明るくした。その中でも川に続く階段を見つけ、惹き付けられ、わたしはその場所に早く行きたい、うずうずした。その階段までは少し距離があったので、ゆっくり周りを見渡しながら歩いた。途中、釣りをしてるおじさん達を見て平和だな~なんて思ったり、すれ違ったおばあちゃんに会釈されて嬉しくなったりした。

今度こそ、辿り着いた。大正解だった。自分だけの場所を見つけた気がして一人でニヤニヤしてしまった。

ぐるりと周りを見渡して、空を見上げ、鳥を見つけ、散歩してる人を眺めて、川の音を聴いて、自転車に乗ってる高校生と目が合って、読書をして、母が握ってくれたおにぎりを頬張り、写真や動画を撮るなどをした。

軽く二時間は過ごしていた気がする。特に大きなことをしたわけではない、のになぜか充実したな〜と思えた。わたしの毎週金曜日の楽しみになった。一、二年のキャンパスから近い場所だから限られた時間沢山あの場所に通おうと思う。そしていつか名前をつけてやる。今はまだあの場所のままで、




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