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若き思想家―ピアニスト、ジャン・チャクムル(11)

(※以下の翻訳は、「アンダンテ」誌の発行人・編集長セルハン・バリ氏の許可を得て掲載しています。また、質問に相当する部分は必要に応じ要約してあります)

――今日の激しい競争環境と厳しい経済条件のなかでは、ソリストだけをしながら生き残るのは容易ではありません。したがってソリストたちの多くは、同時にちゃんとした組織で先生となることもキャリアの一目標と見なしています。一部のソリストたちは、定期的にマスタークラスを開き、若い音楽家たちに経験を伝えています。
ジャン・チャクムルは、自身がどれくらい教育者になる気があると見ているでしょうか。

「指導者であることは、音楽家であることの切り離すことのできない一部だと私は見ています。突き詰めれば、私たちは新しい作品を覚える際、自分で自分に教え、作品を理解しようと努めます。指導とは、まさにこの状態を他の人に伝えることを必要とします。このプロセスの中で指導者も教え子も、実際に作品の核にまで下りることができると考えます。あくまで自分の経験ですが、私にとってもっとも刺激的な音楽体験は先生がたから受けたレッスンの中で経験したものです。それはもはや師匠-弟子の関係はほとんど見られない教育スタイルです。両者がこのような結びつきによって芸術と音楽について共同作業を行うことは、人間が味わうことのできる最大の幸福だと考えます」

――ジャン・チャクムルと行ったこの初めてのインタビューで、彼にぶつけたいと思う質問に終わりが見えそうにはありませんが、今日のところは休止符を打つとしましょう。
最後に、優秀なピアニストの身体的・精神的側面のうち、健康な生活を送るために何をしなければならないか、彼の考えを聞いてみましょう。

「優秀なピアニストを優秀たらしめているものの処方箋を書き出すことは不可能だと思います。人間の働き方や生活スタイルはそれぞれに大きく異なっているのですから。私が思うには、優秀なピアニスト全員がもつ唯一の共通点は、その人にしかない非常に強い個性をもっているということです。その先に挙げることのできるいずれの例にも、対立する別の個性を見つけることができます。もしこれらの優秀なピアニストたちが同時に長寿で健康的な人生を送るための条件について語るなら、その場合は基準は変わってきます。舞台に上がることによる身体的・精神的負担はかなり大きいのです。怪我や心理的問題を遠ざけるための努力は、もちろん、それと共に規則正しく健康的な生活を必要とします。ですが、思うにこれはピアニストだけではなく、人間に深刻な負担がかかる職業すべてに言えることです」

聞き手:セルハン・バリ

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浜松国際ピアノコンクールでジャン・チャクムルに授与された優勝の褒章一覧:

*世界的に有名なBISレコードのもとでレコーディングされたCDの発売。(世界的に重要な各クラシック音楽メディアから満点の評価をもらっている)

*日本において、札幌Kitara、東京すみだトリフォニー、大阪ザ・シンフォニーホール、ミューザ川崎等のコンサートホールで、東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、大阪交響楽団のような日本の主要なオーケストラの演奏で20回以上のコンサートを含む演奏ツアーが継続中。

*東京のすみだトリフォニーホール(1800人収容)で開いた2時間のリサイタルはNHK (日本放送協会)により4Kフォーマットで録画され、2019年10月以降、NHKワールドをはじめとした全プラットフォーム(テレビ、インターネット、ラジオ)上で放映・放送される予定。

*来シーズンはロンドンのミルトン・コートでリサイタルを開き、さらにBBC交響楽団のフェアフィールド・ホールの改修完了後に行われるオープニングコンサートでソリストになる予定。

*イギリスではIKON Arts、日本ではJapan Arts/JESCとの間にマネージメント契約が結ばれている。

*2019-20年および2020-21年のシーズンには、ヨーロッパの主要な音楽センター(ミュンヘンのガスタイク、ミラノのヴェルメ劇場、ロンドンのウィグモア・ホール、パリのルイ・ヴィトン財団、パリのサル・コルトー、ブィドゴシチのイグナツィ・ヤン・パデレフスキ・ポメラニア・フィルハーモニー等)でコンサートが予定されている。

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単に長いだけには留まらない、内容の奥行きの深さと濃密さでも類を見ないインタビュー記事でしたが、皆さんはどう読まれたでしょうか?

過去に数々のインタビューを受けた経験があり、時には自分の言葉の中から都合のよい部分だけ残して切り貼りされたような記事を全世界に配信されることもあるチャクムル君にとり、音楽業界における経験と知識、教養と知性をもってチャクムル君の考えと言葉の真の意味を完全に理解していると考えられるセルハン・バリ氏を前にしてしか語りえない、バリ氏にしか実現し得ない、出色のインタビューだったと思います。

ジャン・チャクムル君の音楽家として生きるための並々ならぬ覚悟、理想に向かって奢ることなく真摯に歩む態度、その反面、野心的に研究し意欲的に挑戦する若々しい冒険心や隠れた微笑ましい一面も覗くことができ、ファン冥利に尽きる翻訳作業でした。これだけの長大なインタビューを敢行し記事としてまとめてくださったセルハン・バリ氏にこの場を借りて(日本語ですが)もう一度感謝すると同時に、最後まで飽きずにお付き合いいただいた読者の方々に心よりお礼を申し上げます。

Verde*Antalya


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