【新日本プロレス】1996年 〜史上最大の対抗戦終幕とその後の展開〜

1996年は橋本の強さが際立った

敬虔なNJPW信者であれば『なんで1996年からなんだよ。その辺から始めるなら1995年からだろ』という声も数多くあろうかと思いますが、私がリアルタイムでプロレスを見るようになったのがここからなのでご容赦ください。

1996年は、前年に勃発したUWFインターナショナルとの『史上最大の対抗戦』を引き継ぐ形でスタートしました。
この時点では、この後押し寄せてくる猪木からのちゃちゃ入れも無く、俗に言う『長州ー坂口ライン』がうまく機能しており、ストーリーらしいストーリーラインは無いのに、各シリーズがうまく回っていたように感じます。
また、基本的にこの年は『橋本の年』で、シングルもタッグも、橋本を中心にカードが組まれていくのが特徴です。

【1996年のできごと】

①1.4: 96’WRESTLING WORLD IN闘強導夢


いまは、イッテンヨンといえば「レッスルキングダム」でしたが、2000年台半ばまではイッテンヨンといえば「レスリングワールド」でした。まあ名前はあまり浸透しなかった気がしますが…。
前年10月と違ってUインターとの対抗戦は数試合あるものの、基本的にはいつもの『新日本のドーム大会』といったカード編成。
ファンの目線は「武藤VS高田」の再戦に興味が向いていましたが、蓋を開けてみれば結構後から語り草になるような試合がいくつかありました。
・小島聡が凱旋帰国試合。入場時に謎のごみ袋みたいなオーバーコスチュームを披露。天山に敗戦
・越中詩郎が蝶野正洋とのシングル戦に勝利。バックステージで『今日のメインで買った奴に挑戦しに行くから!』と次期IWGP挑戦者に最速立候補。
・安生洋二対冬木弘道、他団体の二人による異次元シングルマッチ。異次元過ぎて観客が置いてけぼりに。
・猪木がベイダーととんでもない試合をして大イノキコールに。後年猪木のベストバウト!
・長州が垣原を潰して、猪木コールの余韻を一気にかき消す

と、こんな具合で仮に武藤対高田が無かったとしても様々語りぐさになっていただろうな、というかなりアクの強い大会でしたが…それでも終わってみればやっぱり残ったのは「武藤敗戦」「IWGP流出」という事実。
実際、10.9からの短期間でのリベンジ戦であることから、結構嫌な予感がしているファンは多かったんですが、それでも今ほどプロレスの中身が見えてない時代だったので、純粋に「前回も勝ってるし、今回も勝てる」という見方をしている人はかなり多かった印象です。
試合後、橋本、越中、健介と新日本側の選手が次々挑戦表明する中で、健介だけなぜか高田に「勝手に言ってろ」的な反論をされていたのが面白かったです(おそらく、10.9で垣原に負けたまま終わっているのが影響?)
ともかく、このあと越中とのUインターのリングでの再会マッチが決定しました。
※試合は3月のUインター日本武道館大会で実現、高田が勝利し初防衛に成功します。

②2〜3月シリーズでのトピック


 ・金本浩二がエル・サムライからUWAライトヘビー級のベルトを奪取するが、その後すぐ負傷欠場により返上。
 ・大谷晋二郎が、ライガーの持つIWGPジュニアヘビー級のベルトに挑戦するが奪取ならず。しかしその後すぐまたWCWクルーザー級初代王座決定戦のチャンスがあり、そちらはワイルド・ペガサスに勝利しベルト獲得。フィニッシュの『スワンダイブ式DDT』は、このときが初公開。相当衝撃的な技でした。
 ・橋本、平田組が2月にはUインター安生、高山組を、3月にはブッカーT、スティービーレイ組と立て続けの防衛戦をいずれもクリア。どちらもクセの強いタッグでしたが、どちらも王者組が相手の技をよく受けてから勝つ『風車の理論』を体現する良い試合でした。この頃は、ブッカーTが後にあそこまで大成するとは夢にも… 笑
 ・越中相手にIWGPヘビー級ベルトを防衛した高田が、マイクで橋本を呼び込み睨み合い。次の挑戦者が橋本に決定。

③4.29:Battle Formation’96

この大会もメインの橋本真也vs高田延彦を筆頭に、バラエティに富んだラインナップ。いま見返してみると、実はここが『ドーム大会』としてのクオリティはピークに達していたような気もします…。
■ザ・グレート・サスケvs獣神サンダーライガーのIWGPジュニア王座戦でサスケがタイガースープレックスで王座奪取。IWGPが、初めてインディ団体への流出を許した事が大きな衝撃を呼ぶ。(ドームに鳴り響くみちプロのテーマ曲が最高にカッコよかった…)
■狼軍団vsWCW という名目で2試合組まれる。日本のリングでランディ・サベージとレックス・ルーガーがそれぞれ新日本の選手とシングルで闘うなんて、今考えると豪勢にもほどがある!
■ロードウォリアーズ(ホーク&アニマル)とヘルレイザース(ホーク&パワー)を合体させた「トリプルウォリアーズ」初結成。これだけでも大きな話題になるところを、対戦相手に「スタイナーブラザーズ&スコットノートン」という、こちらも最強ガイジン合体トリオに。流石にパワーが混ざるのは可哀想になるが、ここをしっかり見劣りせず成立させたのはさすが。
■ムタvsハクシーの海外逆輸入対決は、後年も語り草になる衝撃の展開に。ムタが役者の違いを見せつけたが、当時ゴールデンタイムの特番では耐えられないレベルの大流血戦に…。なお名入場曲『愚零闘武多協奏曲』も、いわゆるドクロ装のオーバーコスチュームもこの時が初公開。
■藤波vs天龍のダブルドラゴン対決も、アクシデントで大流血。諸説ありますが、映像を見返す限り「ドラゴンロケットに失敗してリングのヘリに鼻をぶつけた藤波が鼻を骨折。すかさず天龍が顔面を殴って天龍のパンチによる負傷という見せ方にした」という風に見えました。ともかく、鼻を骨折した藤波が、顔面真っ赤に染めながら試合を続ける姿は、さすが藤波、という感じでした。
■橋本vs高田は、圧倒的な強さで橋本真也が王座奪取。試合後握手を交わして、マイクで「高田選手、すごく強いです。何回でもやりたいです」と称えて、ここが事実上の対抗戦終焉であることが伝わりました。ここから、第二次橋本政権とも呼ばれる長期防衛ロードが始まります。

ここから、舞台はサマーストラグルの北海道シリーズ、そして夏の祭典G1クライマックスへ…次回に続きます。





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