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「ちいかわ」と「モルカー」による「キュートアグレッション」の奴隷となった私たち

Twitterで人気が勃興している「ちいかわ」と「モルカー」に対して、ずっと思っていたことがある。それは、製作者による我々の「キュートアグレッション」の突き方が非常に巧みであるということだ。

キュートアグレッションという言葉を知らない人に対して説明すると、「可愛いものへの攻撃性」を抱く心理的な衝動である。

これは、可愛いものを見た時に強く締め付けたくなったり、潰してしまいたくなったり、食べてしまいたくなる衝動である。それらを傷つけたり、害を与えたいというものではない。人は可愛すぎるのものを見ると、噛みつきたくなったりギュッと握ってしまいたくなるような衝動を抱くことがある。これは可愛すぎるものに接したときの脳の防御反応と説明されたり、制御できなくなったものへの反応としている。(ウィキペディアより援用)

このキュートアグレッションは、「傷つけたい」「害を与えたい」という加害者心理には及ばないことが重要だ。サイコパス的な思考ではない。

これを前提として、「ちいかわ」と「モルカー」に於ける共通点は

①可愛らしい愛玩動物をモデルとしたキャラクター

②作中において、それらの「かわいい」キャラクターに対して直接、あるいは間接的な害が与えられている

③しかしそれらの害は身体的なものではない

以上の三点のように思われる。

「ちいかわ」は、初めは友人と大きなお菓子を食べて幸せそうな顔をしているだけの漫画だったが、不穏な展開が見え隠れするようになってから人気が爆発した。ただし、直接の身体的な加虐は行われない。貧困地区に生きているようにも見える肉体労働や、キャラクターへの心理的な窮追が見てとれるに過ぎない。キャラクターの精神性が幼く、危機感が欠陥しているところも我々の「可愛い」を刺激してくる。

窮地に立たされるちいかわ達であるが、ストーリー展開も結局は日常系のほのぼのとしたところに落ち着くし、「鎧を着た人」のような善人の登場もあり、現実に疲れて心拍数が上がってしまうような作品が見られなくなった現代人も安心して楽しむことができる。

そして、「モルカー」であるが、これもまたTwitterで目まぐるしい人気を見せている。あっという間に10万人のフォロワーがついた。

「モルカー」達は羊毛フェルトで作られた人形のパペットアニメである。

人間によって自分の体を乗っ取られたり、銃を突きつけられて愛らしく涙を流したりする場面がある。

「モルカー」に関しては、製作者側からの供給というよりも「ちいかわ」で「キュートアグレッション」に毒された閲覧者が、二次創作においてモルカー達を虐めている様子が窺えるが、まだ三話目なので、これからどのようにストーリーが展開するのかが楽しみなところだ。恐らくモルカー達に実害のない程度に虐めるだろうとは思っている。何せ教育系子供向けアニメなので。

実は私の筆名である「白い喪服」のあだ名として「しろもちゃん」があるのだが、キャラクターのうちに「シロモ」という臆病でレタスの好きなモルカーがいるので嬉しくてちゃんとテレビで応援するようになった。ありがとう。

ということで、まあ最近この2作品に対しての所感を書かせてもらった。きっとあと数ヶ月でこの件に関する専門家の論文か何かが出るように思うので、少々書き散らしのように感じるところもある。

でも、本当に伝えたいことはもう「キュートアグレッション」の奴隷と化してしまった私たちに、質の良い供給を続けて欲しいということだけである。

落とせる人はちゃんとお金を落として、製作者の方々にこの方向性の文芸作品が成功するということを示していこうね。

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