【わるいスマブラDX】 有利キャラに負けること

元ネタ
BAD MELEE PRESENTS COPING WITH YOUR LOW-TIER LOSS

スマブラDXは戦意喪失のゲームです。
あなたはスマブラDXの試合にかき乱され、相手も心底うんざりさせられ、地方大会に出てくるような無名の人々のやる気も失せ、トッププレイヤーでさえどん底の気分にさせられるのです。
大会も、練習も、負けることも、果ては勝つことですら誰かを失意に引きずり込むのです。
あなたが高いレベルのプレイヤーだろうと、ゲームに慣れた一般人だろうと、ランク外の無名だろうと、ひとたび大会に参加すれば、あらゆる面で失望させられるのです。

ニーチェいわく、スマブラDXで苦しむのは必然であり、生みの苦しみを打ち破ることこそが重要であり、言わばその必然性を認めることが苦しみを乗り越えることになるのです。

生きることが苦しみであるように、スマブラDXをやることは苦しみであり、人生が最悪の事態を想定するように要求しているにも関わらずそれに応えられないのと同じように、私たちは非常にしばしばスマブラDXが求めている最悪の事態への対処も失敗するのです。

最も最悪なことは、腱鞘炎になることではなく、掲示板で無限に繰り返される基礎的な知識の問答でもなく、低ランクの有利キャラに負けることです。

こんなシーンを考えてみます。

あなたにとって重要な、初めての大会の会場に着きました。あなたは地方大会で素晴らしい成績を修めたので、当然の流れとして、もしくは地方大会がつまらなくなったので、より大きな舞台を見据えて、あなたの力をその地域で見せつけようとしています。予選第一試合の椅子に座り、相手も椅子に座りました。あなたが愛想よく視線と言葉を投げかけたあと、ブラウン管の音から相手がカービィを選んだことが分かりました。あなたは内心冷ややかに息を吐き、若干申し訳なく思いつつ、相手はどう見ても初めて大会に来て獣たちの中に放り込まれてしまったのだろうと考えます。あなたは神のごとく微笑んでステージを先に相手に消させてやり、戦場で戦えるようにステージを消して拳を突き合わせました。

第一試合第一ゲーム、あなたが気の抜けきった自動操縦状態から目覚めた時には、最初の1分でカービィマスターが2ストックを連取していました。あなたの軽蔑的な過信は消え去り、恐怖で失禁しそうになるまでの時間は、DJ Nintendoの実況が巻き舌になるまでより短かったでしょう。
雲の上から神の目線で見降ろしている間、あなたは冷静でした。実際にはあらゆる面で負けているにも関わらず自信を失わず、相手は小手先のトリックでうまくいっているだけで、自分がそれに慣れるのに時間はかからないだろうと。自分が負けるわけがない。あなたはファルコ使いで、ファルコは最高ランクのキャラクターで、あなたは素晴らしいプレイヤーなのだから。必要なのは消えるリフ、ドロップキャンセル、ムーンウォークといった基礎を思い出すだけでいいのだから。あなたは深呼吸をして中央台に降り立ちました。

結局、あなたは第一ゲームで2ストックしか取れませんでした。

間違いなく、大会でカービィがあの最悪のキャラの一角であるファルコに勝っているとしたら、そこには人だかりができてカービィマスターを応援し始めるでしょう。彼はその熱に浮かされたような暑い一角にいて、最も冷静な人物だったでしょう。あなたはその熱を受ける器に過ぎないのです。第二ゲームが始まると、少なくとも1ダースの人々があなたが最悪のミスをするかもしれないところを見ています。カービィマスターは、得意技である後ろ回避上強で差し込んできました。彼が崖近くに立ったので、あなたは崖降り空下Aで落とされるかもしれません。彼は左に動きながらつま先旋回キックをあなたの復帰に合わせ、あなたを無慈悲な深淵にたたき落としました。順調に3ストック奪われたので、自分が試合に勝てるなどとごまかすことはもうできません。あなたは自分の被害を最小限に抑えるフェイズに突入し、メンツを保つために観衆に笑いかけたりしています。もちろん内心は笑っていません。あなた自身と、このゲームについて知っていることが全て信じられなくなっています。

慈悲深いことに、試合は終わりました。カービィに0-2で負けたのです。かつて自分がそうだったように、相手は勝つことは分かりきっていた様子でこちらを見ています。歴史上全ての、試合に勝った低ランクキャラプレイヤーは一人の例外もなくそういうツラをしています。

カービィマスターは一仕事終えた様子でこちらを見やり、あくまで低ランクキャラプレイヤーとして振る舞っています。あなたは椅子から離れられない、ボロクソの虚無です。

目の前が真っ暗な時間が過ぎても、あなたは低ランクキャラに負けた世界でやっていかなくてはなりません。

ステップ1:負けを認める
認めがたく、理解しがたいことですが、この単純な事実を受け入れなければいけません。経験不足、初見殺しを嘆いても何にもなりません。
この状況において、あなたは例えばRPGでいきなり高レベルの魔法使いに消滅させられたわけではなく、メガリザードンにコラッタで挑んだ短パン小僧でもない。あなたは何だったのかと言えば、バスケの守備位置でボールを持った犬にかわされたわけです。

知らないキャラと戦うはめになった運命を呪う前に、(『エア・バディ』の劇中で)犬に抜かれた選手の言い訳について考えてみましょう。彼が1対1の場で負けたのはただ、犬がどのようにドリブルするかを知らなかったからだと言ってましたね?これを正確に言えば、あなたはカービィに負けたのはカービィの投げを抜けられるのを知らなかったからに過ぎないと言っているわけです。

実際、犬が鼻でドリブルしていたという事実はあなたが犬に負けた事実に影響しません。同じように、あなたがカービィに負けたことについて、カービィのことを何も知らなかったという事実は言い訳になりません。単純に考えて、犬は人間よりバスケは下手です。同じように、カービィを含めた弱キャラは、強キャラよりキャラとしての完成度はスマブラDXにおいては低いです。

これが何を意味するかと言えば、あなたが負けたのは相手が素晴らしいプレイヤーだったから、自分がまだまだ足りないプレイヤーだったから、もしくはその両方です。受け入れることが第一のステップです。友よ、それさえ理解できれば、あなたは前に進んでいけます。

ステップ2:やる気
この段階はステップ1とそんなに離れていません。なぜなら、必要なものは全てあなたの中にあるからです。ステップ1で自分を乗り越え、言い訳を乗り越えたのなら、本質的に、あなたが戦わなければいけないのは私たちを人間たらしめる感情です。ステップ2では、全く反対のことをします。あなたの恥や幻滅と向き合います。怒りを道具として使いましょう。にくいアイツを思い出すときの怒りの火花を感じたとき、それにハーネスをかけ、情熱の炎に変えましょう。マイ・ケミカル・ロマンスを聞くもよし、リンク、こどもリンクをサンドバッグにするもよし。これはきっと最も重要なステップであり、その気無しに使わない不要なものですら、全てがカービィマスターを倒すために必要なものになります。そういった理由で、リフ絶空の練習をしたりGRSmashの動画を見るのに戻る前に、運営に勝敗を報告しにいったときに感じた恥ずかしさや、フェイスブックを見たときの胸のうちの炎について考える代わりに、魂の次元を昇って、それをしないカービィマスターは下がっていくというわけです。

ステップ3:戦術
怒るのにはまだ不十分です。あなたの怒りを練習に活かさないといけません。あなたの感覚をきっちりとした計画でもって肉付け、推進すべきです。あなたの練習はあなたのものであり、私はあなたを導くことはできません。しかし、ある知識が非常に重要だと考えます。それは次のようなものです。あなたは弱キャラを相手にしようとしています。自分をごまかしたり、深く考えすぎないでください。基礎に注目し、長所と短所の適正化を図ってください。彼らにしたいことをさせないようにしましょう。先の例で言えば、ミドルスクールのレベルでいっても、シンプルな行動を守り、コート中央からノールックで360°のフックシュートを狙ったりしない限り、犬は絶対に一人ではどのプレイヤーにも勝てません。それがカービィマスターに勝つ最善の方法です。低ランクキャラであっても、ひとつの悪、ひとつの次元を持つキャラクターとして、ひとつの生物として考えましょう。彼らを軽蔑しろということではありません。面と向かって犬の目につばを吐いたりせず、急所に咬みついて来うる相手として扱うということです。軽蔑して戦うことと、相手を恐ろしい高ランクのキャラクターの代表として戦うのとでは大きな差があります。前者はあなたを取り返しのつかない場所に連れて行きかねないのに比べ、後者はあなたに鋭い逆襲をもたらします。

ステップ4:リベンジ
負けを認め、自分を奮い立たせ、相手との戦い方を学んでも、あなたの復活は終わっていません。本当に自分自身を取り戻したいなら、相手を同じ条件か、より大きな舞台で倒さなくてはなりません。カービィマスターが現状を維持しようとしても、もしあなたが悪夢を終わらせたいなら、大会の中で再び戦えるように何でもやる必要があります。国境を越え、共通の知り合いに無理やりにでも自分が選んだトーナメントに相手を出席させるように誘導し、運営に賄賂を渡して二人が同じ予選の組になるようにしてもらうなど、どんな手を使ってもやりとげましょう。言い訳は無用です。もし相手が個人的な事情で大会に来れないというなら、それを本当に個人的な事情にするために、彼らの恋人なりなんなりを誘拐し、人質の命を賭けてカービィマスターとマネーマッチをするのです。相手を椅子に座らせるためにリベンジを果たすためにできることは何でもやりましょう。相手が位置についたら、愛想よく隣に座りましょう。やってきたことをぶつけるときです。

ステップ5:結果に対処する
両親は私に、勝利の中にあって丁重さを失わない者こそ真の勝者だと教えました。信じる気にはなりませんでした。しかし、このことに関しては、彼らが正しいと言えるでしょう。これは上品であることに価値があると信じることに意味は無いということではなく、こんなことは何でもないというふりをし通し、当然の勝利だというふりをすることが、カービィマスターに最もダメージを与えられるということです。手間を惜しまない観察を通して、私は弱キャラ使いが、食べ物や水より、そういった試合結果から糧を得ていることに気づきました。もしあなたの望みがただ勝つだけではなく、カービィマスターを打ち倒すことによって大きな一歩を踏み出すことなら、彼らに何も与えられないでしょう。拳を突き合わせ、不愛想にうなずいて歩き去りましょう。見えないところまで来たら、勝利の舞を踊って構いません。相手が弱キャラ使いで居続けようとすることで、あなたは相手を弱キャラ使いの喜びの無い、干からびたままにできるでしょう。彼らの喜びはあなたのものです。遂にやりましたね。

ステップ5.5:別の結果
何?また負けた?まあいいでしょう。もう何も言うことはありません。どちらかは負けるんですから。