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わたしの好きなひとは真冬の太陽に似てる

 冷たく澄んだ空気は体と心をきれいにしてくれるような気がするので、大きく息を吸う。よく晴れた冬の朝、道端にぽろぽろとこぼれる太陽の光を見るたびに思う。なんだかスビンくんみたい、と。

 スビンくんは真冬の太陽みたいだと思う。
 春のぽかぽかした日差しや夏のぎらつくそれというよりは、冬のぱりっとした空気にきらめく粒子がやわらかく注ぐ、ミルク色の太陽の光。あの穏やかさ、あたたかさ、おおらかさ、静けさ、やわらかさ。その中にまっすぐな芯が確かにあるのに、それがうまく掴めない感じ。

 冬の凍てつく星みたいにひんやりとした緊張感のある端正な顔立ちは、185cmの大きな身長も相まって冷たそうなイメージを与えることもあるかもしれない。でも、グループに漂っている陽だまりのような空気感は、リーダーであるスビンくんのおっとりとした人柄の影響があるに違いない。

 今年の10月ごろのVliveで、「僕は僕を最優先にしようと思っています。そうやって一生懸命やったおかげでMOAの方々と一緒に過ごせるし、TOMORROW X TOGETHERのメンバーになれたから、僕は嬉しいです」と、淡々とした語り口で、しかし満ちたりた表情をしながら「僕は誇らしいです。僕が頑張った過去が」と言った。

 そのあとファンからの「私はあなたが誇らしいです」というコメントに、切長の目尻をふにゃんと下げ、「僕もです!僕も僕が誇らしいです」と返していた。
 そのやりとりを見て、スビンくんは自分のやってきたことを冷静に見つめ、歩んできた道に綺麗な花束をそっと添えることができる人なのだと思った。

 今の堂々とした姿からはあまり想像がつかないけれど、スビンくんは以前、自分の声が音源にできるだけ入らないようにと思っていたり、ステージでセンターに立つのがプレッシャーなのでサイドかバックにいたかったらしい。

 元々そういったことを考えていた彼が、努力をした自分自身との距離を見誤って驕ることも必要以上に謙虚になることもなく、あたたかな笑みをたたえながら、自分を「誇らしい」と言っている姿に胸がいっぱいになった。
 そしてその表情の中に、自分をひしと見つめながら歩んできたひとりの男の子の姿を見たような気がした。

 去年の今ごろはTXTの音楽こそ聴いていたけれど、タイムラインでスビンくんを見ても、たぶん素通りしてた。BTSの弟分のグループくらいしか思ってなかった。そのBTSの弟分のグループにいた男の子は、季節がうつろっていくごとに私の心をゆっくりとさらっていった。

 かつては通り過ぎていた誰かが自分にとって特別な存在になってくれたこと。それはふとした偶然が幾重にも積み重なって成立したひとつの奇跡なのかもしれない。スビンくんを好きになってから、よくそういうことを考える。

 彼を好きになった決定的なきっかけは今でも覚えていない。気づいたらすごく好きになっていた。夜が明け空が明るくなるように少しずつ、大切な存在になっていったのだと思う。そういうふうにして、彼はわたしにとって唯一無二の、あまりにも特別な「スビンくん」になってくれた。

 彼を想うたびにあたたくて切ない歓びが心を波打って、なんだか自分の心から美しくて心地よい音楽が奏でられるような気がする。
 その音を奏でられるのは間違いなくスビンくんだけで、わたしはその特別な音楽に耳を澄まし、夜空に散らばったきれぎれの星たちを掴もうとするような無謀さでひたすら祈る。こんなにもいとおしいひとを見つけたわたしは誰よりも幸せで、この美しい幸福をもたらしてくれるあなたは、あなたがステージの上にいてくれることで何もかも満たされているわたしよりどうか幸せになって。来る日も来る日もそんなことばかり考えている自分は、本当に幸せ者なのだと思う。



 明日の朝もよく晴れるらしい。丸々としたやわらかい冬の光にスビンくんを思い出すのだろう。わたしはこの出会いを、あなたの生まれた日を、努力を重ね歩んできた日々と情熱を、そしてあなた自身を、心から祝福したい。

 大人に近づいていくスビンくんの日々が、まだ見ぬ輝きに燦々と照らされますように。
 その澄んだ瞳が美しいものであふれますように。
 真冬の太陽に似た、わたしの好きなひとへ。