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Techivation AI-Loudener レビュー

 こんにちは。ぼいどすです。今回はTechivationからのご提供でレビュー記事を書かせていただきます。ちなみに今回はじめてのプラグイン関連のご依頼となり、Techivationさんには感謝申し上げます。
 今回はAI-Loudenerという製品で、音量を上げることなく聴覚上のラウドネスを上昇させるものとなります。
 Techivation製品はプラグインによっては日本語マニュアルがあり、手元のものではM-De-Esser とM-Clarityについて日本語版マニュアルが付属していました。AI-Loudenerも日本語マニュアルが付属しています。
 実際の使い方は簡単で、ラウドな部分でLeanボタンをクリック、3.5秒で学習し最適な処理を選択してくれます。学習後はDriveパラメーターを動かすだけで適用量を調節するだけです。
 アウトプットパラメーターもありますが、音量は自動で調節されるため、あまりいじる必要は無いと思われます(後述)。
 先に出音の特徴から、トラックに適用したときは派手な変化を感じにくいですが、マスターに挿すと効果を感じやすい印象です。トラック単体では若干効果を感じにくいこともありますが、複数トラックに適用していくとその積み重ねで前に出てくる効果も感じました。アナログの味付けのためにノイズを付加するプラグインも多数挿すと、トータルのノイズ音量が大きくなるのと似ているとも言えそうです。同社の製品でM-Loudenerというのもあるのですが、こちらは分かりやすくパンチが加わるのに対し、AI-Loudenerは自然に存在感を高めるイメージです。まとめますと、短時間で自然にラウドな音を得られます


 処理について手持ちの曲のトラックでいくつか適用してみたところ、Smooth、Edgy、Lush、Silky、Gentle、Clearが確認できました。他にもパラメーターがあるかもしれません。ちなみにこれらはユーザーによって選ぶことは出来ません。そのためなのかマニュアルには詳しい記載はありませんが、これらはAIによって最適なものを選択しているのかなと想像できます。

EQ Curve Analyzer


 EQ Curve Analyzerを通して動作を見てみます。1khzのサイン波を、-20db、-10db、-6db、Drive量を0.0%、50%、100%で見てみます。
1khzのサイン波を-20dbで通してみます。
Drive 50.0% 音量が-3db程度下げられています。高音域が少し上がってますね。

Drive0.0% 音量については変化なし

Drive 100.0% -10dbほど音量が下がっています。高音域を残すような感じでしょうか。

1khzで-10db、Drive50.0% 0.3dbほど上げられています。

Drive 100.0% 1.1db程度上がっています。高域の変化は僅か。 Drive 0.0%は適用されている変化の様子が無かったので割愛。

 1khz、-6db Drive 50% 音量は-10dbと同じく0.3db程度の上昇。

Drive 100.0% 1.7db程度の上昇 なぜか-10db Drive 100.0%のときよりも上昇量が大きいです。

 この検証を総合的に見て、状況によって変化量が変わると解釈するのが妥当かなと思います。これだけ音量の変化があるということは、内部の処理による音色変化があることが想像できます。とくに-10db、Drive100.0のときに大きく音量が下がることから、小さな音は派手目な変化をするのかなと思われます。
 ちなみに、Driveの文字をダブルクリックで初期値の50.0%に戻り、数値をダブルクリックで数値入力ができます。
一つ注意点として、EQ Curve Analyzerではこのような変化でしたが、実際の音での変化とはかなり違います。

スペアナで見てみる

少しだけスペアナでも見てみます。
同じく1khz、-20db

だいたい3khz、5khz、7khzの奇数倍音が付加されてます。Driveを上げると倍音が増加し、下げると付加されなくなるのが確認できました。
-10dbだと付加量が若干変わってくるのがわかります。

-6dbだと付加量のほか、9khzも見えてきますが、この音量は知覚しづらそうではあります。

 サイン波以外にもノコギリ波や矩形波について見たところ、スペアナとしては分かりやすい変化がなかったので割愛しますが、SmoothやLushといったパラメータが変化しました。本当に音色によってAIが判断してるのだなと感じました。

負荷

 負荷について見てみます。AIだから重いかなと思っていましたが、この結果を見ると軽い部類と言えるので、多数のトラックに気兼ねなくインサートできると思います。レイテンシがほんの少しあるので、MIXの段階で使っていくのが良いでしょう。

使いどころ

 マニュアルではこれといったおすすめの使い方についての記述がありませんでしたが、トラック単体ではチェインの最後、マスターでは最終のリミッターの前がいいのかなと思いました。また、バスでまとめているパートはトラックでなくバスに挿したほうがいいでしょう。
 ボーカル、ドラムあたりのパートがとくに効果を感じやすく、自然に前に出てくる感じです。いかにもサチュレーションしましたという雰囲気にならず、パート数にかかわらず使いやすそうです。自分でマスタリングまでの工程をする人、歌ってみたを自分でMIXする人に向いてそうだなと思いました。

まとめ

 Techivationさんの製品はM-ClarityとM-De-Esserをよく使うのですが、効果についてはまるで熟練のエンジニアさんが「こういう音、欲しかったんでしょう?」と提案してくれるような印象です。AI-Loudenerも同様に、EQなどを多用し時間をかけるよりも、圧倒的な短時間で求めていた音に辿り着ける印象です。

Techivation AI-Loudener
製品ページ https://techivation.com/ai-loudener/

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