20180916ステレオ

LPレコードのこと

かつてLPレコードというメディアが隆盛を誇っていました。

LPレコードというのは、(多くの場合)真っ黒い樹脂の薄っぺらい円形で、円の大きさはでっかいホールケーキぐらい、中心に鉛筆ぐらいの丸い穴が空いていて、穴を囲むようにお一人さま用クリスマスケーキぐらいの丸い紙のシールが貼ってある物体です。
表と裏があって、それぞれ渦巻状に細い溝が彫られています。
薄いビニール袋に包まれて、写真や絵が印刷された(多くの場合)正方形の厚紙の袋に差し込まれています。

コンタクトレンズのような形に歪んだり、たくさんホコリが付着したり、傷がついたりするので、保管には細心の注意が必要です。
使う前には、エチケットブラシのような器具で裏表そっと拭ったり、場合によっては専門の洗浄液で洗ったりします。

LPレコードをどう使うかというと、同じくらいの大きさのぐるぐる回る円盤の上に、円盤の真ん中にあるちょうど鉛筆ぐらいの太さの金属棒へLPレコードの真ん中の穴を通して、そっと載せます。
この時、金属棒へLPレコードの穴をうまく通すことができず、あてがいながら迷うとLPレコードに貼ってあるシールにうっすらと跡が残り、収集家は怒り狂います

さて、おもむろにスイッチを入れると、円盤およびその上のLPレコードは3分間で100回転のスピードで回り始めます。
そのうえに、ロボットアームのような棒の先に格納された、何やら高級感ただよう部品の先っぽから出ている、(多くの場合)人工ダイヤモンド製の針を載せます。

この針を、LPレコードに刻まれている溝へちょうど収まるように載せるため、自動的にロボットアームを動かす機器もあります。
ただし好き者は、頑として自分の指でそっとロボットアームをエスコートして、溝へ針が収まるように置きます。
この時、くしゃみをしたり、笑わされたりして手元が狂うと、針が溝にうまく収まらないばかりかLPレコードの表面を横切り、ぎょぎょぎょぎょという不快な音を発し、収集家は懊悩の極みに陥ります。

このような儀式を乗り越えたにも関わらず、LPレコードの再生時間は表と裏それぞれ概ね20分強程度なので、ゆっくりと鑑賞したかと思うと席を立って、裏返して儀式を再現する必要があります。

私は一番多いときで、LPレコードを1000枚だか2000枚だか持っていました。主として中古でこつこつ買っていったものです。
震災のときに、やはり同じくらいの枚数持っていたCDと一緒に全部売ってしまいました。

今、ストリーミングなんかで当時の楽曲を久しぶりに聴くと、脳内にバックアップされていた楽曲との一致とか相違とかが発見できて、大変に面白いものです。