スパゲティと合格発表

桜が満開になった3月10日の昼下がり、僕はキッチンでスパゲティを茹でていた。ゆで汁がぐつぐつと音を立てる中、日本の国公立大学の合格発表が行われていることを思い出した。東京大学でも例年通り、喜びに溢れた表情の合格者とその家族の姿があったことだろう。いくつかの進学校では過去最高の合格者数を出したらしい。

「素晴らしいことだと思うけど、最近は少し違ったトレンドも見えてきているんだよな」

僕はそんなことを考えながら、スパゲティを湯切りした。これまで東大に進学していたような優秀な学生が、海外の大学を選ぶようになってきているのだ。高校野球で活躍した佐々木麟太郎選手のスタンフォード大学進学が話題になったが、彼は4年間で約5000万円もの奨学金を得ることになった。大谷翔平選手に次ぐ、新しい挑戦とも言えるだろう。

「佐々木選手の活躍次第では、スタンフォードに留学する日本人学生が増えるかもしれないな」

オリーブオイルとニンニクを炒めながら、僕はそんなことを考えていた。意外なことに、スタンフォードの日本人留学生数は、規模が同程度のハーバード大学の半分以下なのだ。

日本では「東大≒ハーバード」というイメージがあるが、海外から見ると東大への留学希望者は少ない。一方、スタンフォードはコンピュータサイエンスや起業の環境が充実しており、既存のレールから外れた野心的な学生に人気だ。
今回の佐々木選手の入学はそういった意味では納得な結果だった。しかし、意外に日本では「ずるい」などの見当外れな意見も出てきてる。

「やれやれ、アメリカの大学入試事情を知る人から見ると、ピントがずれているように感じるよな」

出来上がったスパゲティを器に盛り付けながら、僕はそんなことを呟いた。多様な学生が集まることで、互いに学び合える環境が生まれる。将来の不確実な時代を乗り越えられるチームになるのだ。

「大学が求めるのは、予測不可能な未来を切り拓く人材なんだよな。その適性を測るには、多面的な評価が不可欠なのかもしれない」

僕はフォークを手に取り、スパゲティを口に運んだ。日本の大学に馴染めない学生は、ダイバーシティの進んだアメリカの大学への進学を視野に入れてもいいだろう。奨学金のチャンスも多数用意されている。

「目の前のチャンスに気づかず、損をしているのではないだろうか」

最後の一口を飲み込んだ僕は、空になった皿を眺めながらそう呟いた。不確実な時代を生き抜く智恵について、スパゲティを食べながらあれこれ思いを巡らせていたのだった。

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