最もコスパよくDTMを始めるには
フリーミアムなビジネスモデルが近年、非常にさまざまなところでみられるようになりました。
Spotifyなどもそうですし、"基本無料"とうたわれているのは大体そういうビジネスモデルだと思います。
この流れは、DTM業界でも例外ではありません。
2013年にCakewalkがGibsonに買収され、2017年に開発・生産が中止されたはずのSONARの最上位のもの(6万円くらい)が無料(!)で、Cakewalk by Bandlabと名を変えて、公開されています。
これはおそらく、DTMに必須のソフトウェアであるDAW(Digital Audio Workstation)は基本無料で提供し、他のソフトウェア(楽器の音を鳴らすための音源や、さまざまなエフェクト)で稼ぐというフリーミアムのビジネスモデルであるといってよいかと思います。
いずれにしても、DTMerを目指す人にとってみれば、DTMを始めるお財布的なハードルが下がったことを意味しています。
何しろ、フリーVSTbotさんなどが紹介しているように、現在は無料の音源、無料のエフェクトでそれなりに高品位なものが充実してきています。
加えて、11月第4木曜日の翌日であるブラックフライデーでも、一本N万円していたものが無料で手に入ったりすることも。
そこで今回は個人的に気になったので、DTMに必要なものを挙げつつ、最コスパでDTMする方法を考えてみたいと思います。
DTMで絶対に必要なものといえば、
①PC
②DAW
の2点です。
あと、できる限り欲しいものとして挙げられるのが
③オーディオインターフェイス
ですね。
なくてもギリギリできなくはないですが、相当むずかしいのではないかと思います。
というわけで、3つ、考えていきましょう。
モニター用のヘッドフォンないしスピーカーは?
という声が聞こえてきそうですが、これについては最後に言及します。
①PC
正直、大問題なのがこれ、PCです。
率直に言って、何をしたいかによって求められるスペックは大きく異なってきます。
私は現在、ルーパーとギターを使った演奏を録音・録画するか、ジャズ系の曲をサンプリングしあまり派手な加工をせずトラックにしていく、という活動しかしてないので、LENOVO ideapad 320S(販売終了)を使っています。
第8世代core i5でメモリ8Gで、たしか7万円くらいだったはず。
いわゆるビジネスノートで、ある程度のスペックを求めたものです。
ただし、ビジネスノートでは派手なEDMや、オーケストラを使ったような楽器の多い曲を作るのははっきり言って無理です。
音源ひとつ動かすのは大したことが無くても、複数に積み重なると重くなり、ブチブチ途切れるようになるかと思います。
あと、意外と盲点なのがグラフィックボードですね。
グラフィックボードがない私のideapad 320Sでスペクトルアナライザー(下の画像のようなやつ)を3つ4つ動かすとカクカクするときがあります。
楽器それぞれの周波数のピークを見つつミックスしたいとき、カクカクして音と見た目が大幅にずれるのは致命傷です。
(こういうやつがスペクトルアナライザー)
つまり、
3ピースのパンクバンドのデモを作りたいという動機なら、ちょっとスペック高めのビジネスノートでも十分(7万くらい)。
ロックバンド+シンセサイザーくらいの最近のバンドサウンドを、打ち込みで作りたいなら、グラボもあつてある程度スペックも充実したゲーミングPCの入門モデルくらい(10万くらい)。
オーケストラ音源を使って映画音楽のような荘厳なものから、楽器がたくさん鳴ってるド派手なEDMを打ち込みで作りたいなら、ハイエンドモデル(30万くらい?)
でしょうか。
最安値、ということなので、いったんPCは7万円程度としておきましょう。
最安値を求めている方はビギナーだと思うので、とりあえずそれほどたくさんの音源を使いこなすことはないかと……。
また、7万円くらいのPCでマックを手に入れるのは難しく、手に入れられたとしてもスペックも足りないので、必然的にWindowsになりますね。
議論を先取りする形にはなりますが、最安値のDAW、CakewalkがWindows専用なので、その点からしてもマックは候補から外れます。
②DAW
Cakewalk by Bandlabを使いましょう。
といっても実は、対抗馬があります。
Studio One Primeというものがありまして、こちらはプロが愛用するStudio Oneのデモ、という位置づけ。
しかし、最初に触るDAWとしては十分すぎる機能を持っています。
Cakewalk by Bandlabと比較してみましょう。
Studio One Primeはほとんどの楽器の音源が入っていて、最低限のエフェクトがあるからそっちの方が良い、と思われるかもしれません。
しかし、Studio One Primeは拡張性が全くありません。
もし音源やエフェクトを追加したくなったら、改めてDAWを買う必要があります。
DTMの楽しみのひとつとして、様々な音源・エフェクトを追加して試してみることが挙げられます。
それができないというのは案外つらいと思います。
また、DTMに慣れてきて音源・エフェクトを追加したくなった際にDAWを改めて買うのも本末転倒です。
一方で、最初に入ってる音源・エフェクトは少なくとも、拡張性のあるCakewalkなら、DAWそのものを買わずに、
まず付属の音源・エフェクト、フリーのものを試してみる、知識・技術がついてきたら音源・エフェクトを買ってみる、
というステップを踏むことができます。
CakewalkはDAWとしての機能に全く制限はありませんし。
というわけで、Cakewalkをおすすめいたします。
ちなみに最近、音源・エフェクトもフリーの物が増えており、特にエフェクトに関してはかなりレベルが高いように思います。
これらを追加するのに、DAWを買うのはやはり本末転倒ですね。
③オーディオインターフェース
実はこれ、DTM入門の記事をみると大抵、"必須"として書かれています。
しかし、今回は必須とはしませんでした。
なぜかというと、空港など出先で、私自身がオーディオインターフェイスを使用せずに、曲を作ったり、ミックスしたりできてしまっているから。
録音を一切するつもりのない人であれば、それ程に必須とはいえないのではないか、と考えたわけです。
しかし、もし仮に歌やギター、アナログシンセ等々を録音しようと考えているのであれば、もちろん必須です。
確かにPCにマイクが付いていたり、マイクの入力端子があったりし録音はできますが、それらはあくまでビデオ通話を目的としたもので、それに特化したものとなっています。
そのため、歌を録音しようとすると音質も低く、音が割れたりすることも。
また、ヘッドホンなどから自分の声が遅れて聞こえるような現象が生じたりもします。
ギターやアナログシンセなどだと端子にさすことも難しいですね。
というわけで、録音するつもりがある人むけに、ざっくりとオーディオインターフェイスの安価なおすすめを書いておきます。
Focusrite Scarlett solo G3
Focusriteというメーカーは、プロ用ハイエンドな機材の名機を数多く残してきた老舗ブランドですが、これに関しては1万円台前半でかなり安価(サウンドハウスなら11,800円)。
マイク1本にギター・ベースなど楽器1本が同時につなげます。
ただ、ここで強調しておきたいのが、付属の音源・エフェクト・DAW(!)が充実している点。
Avid Pro Tools | First Focusrite Creative Pack
Ableton Live Lite
XLN Audio Addictive Keys
Softube Time and Tone Bundle
Focusrite Red Plug-in Suite
Focusrite Plug-in Collective
Three Month Splice Sounds Subscription
これだけついてきます。
例えばXLN AudioのAddictive Keysは公式HPでふつうに買えば8,479円。Focusrite Red Plug-in Suiteは名機といわれ、世界中のレコーディングスタジオで使用されているRed2イコライザ―とRed3コンプレッサーをモデリングしたソフトウェア。
もうこれだけでおつりが出そうですが、さらにFocusrite Plug-in Collectiveは1~2カ月おきに無料で音源・エフェクトが手に入るというもの。
機能制限がなく、音源・エフェクトが追加し放題なCakewalkとの相乗効果はすさまじいものがあります。
機能が制限されてはいますが、DAWも入っているので、Cakewalkなどと使いやすさを比べてみてもよいと思います。
おわりに
以上のように、最近は安価で不自由なくDTMができるようになってきました。
ここでの結論としては、7万円ていどのそこそこのスペックのビジネスノートをまず購入、Cakewalkで機能制限のないDAWを手に入れ、Focusrite Scarlett solo G2(11,800円)でオーディオインターフェイスだけでなく音源とエフェクトを手に入れる、というのがDTM初心者にとって最もコスパの良い選択ではないでしょうか?
トータルで81,800円。
そのうちほとんどがPC代ですね。
決して安くはないのですが、もしそれなりのPCを持っていればビジネスノートを別で買う必要はありません。
また、iPadやiPhoneを持っていれば、アップル用のGarage Bandを用いれば、ある程度のことは可能です(エフェクトの形式が特殊なのがネックで、オーディオインターフェイスの選択肢も変わってきますが)。
マックのPCを持っていて、録音がメインなのであれば、Studio One Primeが大本命です。
いずれにしても、PCがあればほぼ無料で始めることができます。
もし予算が余ったのなら、モニター用のスピーカーないしヘッドフォンを購入しましょう。
もし余らなかったら?
まずアップル純正のイヤホン(2800円)で試してみては。
確かにモニター用のヘッドフォンやスピーカーがないとどDTMは出来ないという声も理解できます。
もしモニター用でないスピーカー・ヘッドフォンで曲を作ると、どの位置で楽器が鳴っているかを判別しにくくなります。
それだけでなく低音の強すぎるもので曲を作れば低音が薄くなってしまい、低音が出ないもので曲を作れば低音が強くなりすぎる、といった問題も。
しかし、世の中で音楽を聴いている人のほとんどがアップルのイヤホンを使っている現状を考えれば、そのイヤホンで最もきれいに聞こえるように曲を仕上げていくのも一つの手です。
また、モニター用のスピーカーやヘッドフォンが無ければ曲が作れない訳でもなければ、曲を作る楽しみがなくなるわけでもありません。
安価で済ませる手があり、楽しみが減るわけではないのならば、まずはアップルの純正イヤホンを用いて曲を作り、もっと細部にこだわりたくなった際に、モニター用のスピーカー・ヘッドホンを購入すればよいのではないでしょうか?
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