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岸本葉子の「俳句の学び方」/岸本葉子

Amazonのkindle unlimitedで読みました。
紙の本を、こちらから購入することもできます。

岸本葉子さんが司会をされていた頃のNHK俳句が好きでした。(武井壮さん、ごめんなさい。)
「あの舌足らずな話し方がたまらない!」と公言していた句友もおりました(もちろん、男性)。年を重ねても魅力的で愛らしい。本当に素敵な方ですね。

この本は、俳句を始めてから数年経つも、鳴かず飛ばずの毎日に悶々としている・・・まさに私のような裾野俳人におすすめの1冊です❗️
岸本葉子さんが、日々俳句を学ぶ中で書き留めてきたメモを10の格言57の技、そして7つの心得にまとめてあります。

10の格言というのは、

1 私が語らず、モノに語らせる
2 ストーリーよりシーンが強い
3 映像を立ち上がらせる
4 言外に匂わせない




など、私が先輩の連衆や指導の先生に毎回のように言われていることと重なりますが、そういった句のどこが問題なのか、どう推敲していったら良いのかを、ご本人の例句と「推敲に役立つ57の技」を提示して具体的に説明してくれています。

文章中から抜粋してご紹介しようかと思いましたが、やめました。
というのは、この本の文章そのものが、筆者がとことん整理してまとめたものなので、不用意に抜粋すると、言葉足らずで誤解を招く恐れがあると思うのです。
ぜひ、何らかの方法で、この本を実際に読んでいただきたいと思います。

そして、この本の第3章

助詞力アップ対談添削十番稽古 岸本尚毅(俳人)×岸本葉子

俳句博士 岸本尚毅教官の登場です!
俳句を詠むときに、「が・は・を・に・・・」などの助詞の中から、どの助詞を選べば良いのか、誰もが悩むところです。
これについて、岸本葉子さんの句を例に挙げて、

タネ「発想の元である内容」→初案「原句」→推敲の理由→葉子さんの推敲句

そしてそれに対する岸本教官の評価を丁寧に説明しています。

例えば、「聞いた感じがすっきりしない」
「説明的になりやすい」などの理由で助詞「で」と「に」は避けた方が無難とよく言われますが、

その観点で推敲した以下の句を、岸本教官は「原句の方が良い」と言っています。

〈原句〉ケチャップの袋歯で切る夏休
〈推敲〉ケチャップの袋み切る夏休
p145

また、「に」を避けることに関しても、逆に
「を」を「に」に直した虚子の推敲が挙げられています。

その上を飛ぶかりあらば我と見よ(昭和10年)
○その上に飛ぶ雁あらば我と見よ(昭和15年)
p151


そして、岸本教官の語る推敲の本義も心に残りました。

一句の根っこにある発想に戻って組み立て直すのが推敲です。発案にこだわるのではなく、発想にこだわるのです。煮詰まったら、もう一句別の似たような句を作るようにしてはいかがでしょうか。
p149

・・・で、この本を最後まで読んで行きついた感想は・・・

俳句の詠みにも推敲にも、正解はない。

ということです。
岸本葉子さんも「おわりに」に

ここに記した格言は、名句の条件ではありません。名句として人々に親しまれている句で、この本の言う技に合致しないものはたくさんあります。
p156

と明記しています。
結局のところ、組長がよくおっしゃる、「俳句にやっていけないことはない」

この本の格言に従って、自分の句を良く見直し、この本の技を使って推敲し、悩み・・・ああ、やはり原句の方が良いと思うのか、それとも推敲した句を選ぶのかは、あくまでも自分自身。

俳句も表現行為のひとつ、表現行為の起点となるのは自分。そうである以上、入選の必勝パターンを求め、「どっちかに決めて」と、他者に丸投げすることはできません。
「おわりに」

悩むことも俳句の楽しみの一つと心得て、頑張ってまいりましょう!

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