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夜虹はうたっている


『夜虹』は紛れもなくインストです。
歌ものではありません。
でも確かに、夜虹はうたっているんです。

 

noteでは初めまして、ミドリと申します。

BEMANIシリーズの音楽ゲームが大好きで、趣味で絵も描いています。
好きな音楽は沢山ありますが、中でもHuΣeRさんとSYUNNさんの創る音楽の世界が大好きです。

こうした記事を書いたことはありませんでしたが、この楽曲が発表され自分で解禁した時、どうしても感情が「やらなきゃ」という謎の使命感に駆られ、結果紆余曲折して2ヶ月経った今漸く出せる状態までになりました。



この記事はどんなもの?

2024年4月25日より『pop'n music UniLab』にて登場した楽曲『夜虹』への日記と、自分自身の感じたものや解釈、自分から見えた音の景色などを半ば備忘録代わりに記事にしました。
所謂、個人の解釈/感想です。

なのでこの記事はあくまでも「こんな解釈をする人も世の中には居るよ」程度の気持ちで閲覧いただけたらと思います。

※注意
本記事はある程度BEMANIシリーズ(主にpop'n music)をプレーしている方が読まれることを想定しているため、用語の解説を省いている部分があります。
また、考察を含む記事のため『夜虹』を聴いて(プレーして)からお読みいただくと本記事への解像度が上がる"かも"しれません。

執筆時(2024/6/26)ではULTIMATE MOBILE内のMUSIC PLAYERにも収録されていないため、筐体で解禁する以外にプレーンな状態を聴く手段がありません。

しかしながら、この記事を通して楽曲に対する興味だけでも湧いてもらえたらなと思います。


夜虹に出会うまで



2024年4月25日より『pop'n music UniLab』内のイベント、『覚醒のエルム』にて追加された本楽曲。

本イベントの告知は曲のタイトルと担当キャラ、そしてエルムの一言コメントが添えられていて、作曲者は解禁までのお楽しみとなっています。

告知を見た時には思わず声が出ました…

画像に描かれている担当キャラの時雨は、『哀彩』『星屑の夜果て』の担当キャラクターでもあります。実に5年8ヶ月ぶりの登場でした。

ポップンはキャラ数が相当あるのでそもそも選ばれるものに偏りかあり、5年といっても「短い!」ということが多々ありますが、時雨というキャラクターにおいては重要な物語があるため、この告知は衝撃でした。(詳細は後述の考察にて)


『哀彩』と『星屑の夜果て』
この2曲の繋がりといえば、おそらく多くの方がBEMANI Sound Team"MarL(マール)"さんの存在が一番に浮かぶのではないかなと思います。

MarLさんのデビュー曲『哀彩』は時雨のポップン初登場曲でもあり、アーティスト画像も時雨を意識したものになっています。

そしてMarLさんと言えば、時雨といえば、"歌"のイメージ。

『星屑の夜果て』はHuΣeRさん、MarLさん、SYUNNさんの3名の合作でもありましたので、この辺りも絡んでくるのだろうか?と思考が巡りめぐっていました。

歌もの?合作?はたまた、虹は1つの区切りとも受け取れるからインストなのか?

"あなたが夜空をつくるのね"

このエルムの台詞も非常に意味深で熱が高くなるばかりで、眠れなくなる気さえしました。結果ほぼ寝ませんでしたが。


翌日、いざ筐体の前に立ちおもむろに解禁画面を選択しプレビューが流れ込んできたその瞬間。

「あぁ、HuΣeR(ハマー)さんの音だ。」

そう自分の感覚が受信しました。

私は音楽についての専門知識については詳しくはありません。
ですが、バイオリンの包み込んでくれるような暖かく優しい旋律と、流星のように流れるピアノ、雫が落ち、暗闇に響き渡るような透き通った音。

それらがプレビューのほんの一瞬で、『夜虹』という言葉を景色に変えて、そのまま耳に、脳内まで届く。
それも目に見えるくらい鮮明な映像として。

これほど繊細な世界観を時雨に投影して見せてくれるのは、この方以外考えられないだろう、と。

『夜虹/BEMANI Sound Team"HuΣeR"』

解禁時、この文字を見られて胸がいっぱいになりました。多分画面を見ながら泣いてたと思います。この景色を見られる時代に生きていて良かった。


この出会いが私の感情を大きく揺さぶり、今回記事を執筆するまでに至っています。
ここから考察の前に、自分の思う重要な2点を振り返っておきたいと思います。


☆そもそもHuΣeRさんって?

現在のBEMANIシリーズではお馴染みとなったコンポーザーさんですよね。

主にbeatmania IIDXシリーズでの楽曲やシステムBGMを制作されていますが、BEMANIシリーズ全体を通して60曲以上収録されているので、1度は聴いたことがあるプレイヤーさんが殆どだと思います。

ひとつひとつの楽曲に緻密な世界観と設定が存在していて、メッセージ性が強く、それぞれのコンセプトにぴったり嵌まる言葉選びや効果音を盛り込んでいる、聴いていてワクワクさせてくれる。
まるで物語を"耳"で読んでいる感覚になれる、そんな魅力のあるアーティストさんです。

そんなHuΣeRさんはMarLさんとの共同作品も多く、『星屑の夜果て』は勿論、『VALKYRIAS -英雄誕生-』『LIGHTNING STRIKES 』『Lethal Weapon』など多数合作されています。

デビューされた時期が近いこともあり共同制作も多いHuΣeRさんは、思えば今回の時雨の曲を担当するのに最も相応しかったのかもしれません。


☆時雨とMarLさんについてもう一度振り返っておこう

先ほど軽く触れましたが、時雨の担当した楽曲とMarLさんは、『夜虹』に深い繋がりがあると考えています。
楽曲を紐解く前に、こちらも振り返っておきましょう。

「僕が蒔いた星でこの夜空をいっぱいにしたいんだ」 見上げた煙る空に小さなきらめきがひとつ、またひとつ、、、

(公式HP/楽曲&キャラクター紹介より)


時雨は『pop'n music うさぎと猫と少年の夢』 にて初登場した ボーイッシュな見た目の女の子です。大きなフラスコのような容器の中には星が詰まっているそう。

また、ポップンミュージックカードには

『なぜ涙をながすの…?星が灯る夜空みたいに、キミの頬を濡らす雨がいつか晴れますように』

(ポップンミュージックカードうさぎと猫と少年の夢vol.1/時雨より抜粋)

とあります。趣味欄には『雨の夜空を星でいっぱいにすること』とも。


このことから"雨の夜空"という存在が彼女にとって重要な鍵なんだなと読み取れます。
彼女の担当曲『哀彩』『星屑の夜果て』の歌詞を読むと、雨と涙がイコールの関係であるようにも映りますね。


尚、時雨はポップンのデザイナーちっひさんとMarLさんご自身がキャラクターのアイデアや設定を組み立てていたとのことです。
デビュー曲ということもありとびきりの熱量を詰め込まれ生まれた時雨とMarLさんは、どうやっても切っても切れない関係であることが窺えますよね。

今回の『夜虹』は、"雨"が晴れ、"虹"が架かるというひとつの区切りをつけるように、時雨とMarLさんへのメッセージが込められているのではないか?と感じたのです。

前置きが長くなりましたが、次項より楽曲について自分なりの解釈を置いておきます。


☆夜虹を紐解こう 

・雨が語る夜虹

『夜虹』はではじまり、で終わっていると考えています。似ているようで、全く意味が変わるんです。

しとしとと降りしきる雨と、跳ねるようなピアノが印象的なイントロ。
雨粒のように散らばる音そのものに、雨粒が水溜まりに跳ね返る程度のちょっとした"重さ"も感じます。
この絶妙な重さとブレイクビーツの地を這うような空間が、まさしく"夜の雨"らしい匂いを感じました。


ここから、空は大きく変化していきます。
まるで一筋の光のように射し込むバイオリンと、時雨の蒔いた星たちが煌めいているような流麗なピアノフレーズ。
水溜まりに落ちる雫は雨粒が小さいのか静かに反響し、水の波動が目に浮かびます。

このバイオリンのメロディ、自然と涙が零れるくらい暖かい音がしますよね。
それこそまるで歌声のように。


中盤に来ると一転してジャズのような曲調に変わり、ピアノがあちらこちらに踊る中にHuΣeRさん特有のデジタルな音色が混ざりあう。
私の中でこの部分は、光が差しかけても止まない雨の中で、時雨が必死に星を蒔いているように見えました。
少しコメディチックにも聴こえるフレーズが、時雨が思わず転んでいるようなあどけなさにも感じられて。


そしていよいよ、虹が架かる。
前半にあったバイオリンの暖かな光が雲の切れ間から再び顔を出し、大きな虹を描いた所でアウトロに。
EX譜面では最後に右側5つのロングポップ君で締め括られていて、正に虹を架けて終わるという部分にも愛を感じます。


このアウトロ、イントロと同じフレーズなのですがピッチが高くなっていて、ザーザーと降っていた雨音は止み、小鳥のさえずりも響くの匂いがするんです。
それでいて跳ねるようなピアノは残っていて、雨が過ぎた後に滴り落ちたが目に浮かびました。


だから『夜虹』は雨ではじまり雫に終わる、と自分は考えています。
夜の雨から夜の虹へ、夜の虹から雨上がりの晴れた朝に。そんな移り変わりがおおよそ2分の間にぎゅっと詰め込まれています。

にしてもHuΣeRさんは本当に音で""を表現されるのが巧いなと改めて感じました。
『夜虹』の中だけでも、しとしと雨や水溜まりに雫、強い雨もあれば雨上がりの水が滴る景色まで、音色だけで見事にその世界観を作り上げられていて脱帽しました。

本当に時雨というキャラクターにこれでもかという程に寄り添ってくれてありがとうございます。
 

しかし、これで自分の考察が終わるはずもなく。次項はこの音の考察からもう少し視野を広げたものになります。

これまでより更に自分の深読みや解釈に尖っていくのでご了承ください。

・虹が祈るもの

突然ですが、"虹"にはいくつか意味があるのをご存知でしょうか?

単に珍しい、ラッキー!というだけでなく、雨上がりの後に出現することから辛い状況の後に訪れる幸せや成功を象徴しているのだそうです。素敵。

というのも、プレーする前から『夜虹』という曲名の持つ意味をあれこれ考えていたのです。
その意味は、涙を堪えながら遊んだその瞬間に自分の中の答えとしてかっちり嵌まりました。

これはこれまでの「時雨」に対する答えなのではないかと。

もっと素直に言いますと
これは"時雨を通じてMarLさんへ贈られたエール"なのではないか、と。


これまで時雨とMarLさんについての繋がりを何度も述べてきたのですが、そんなMarLさんの名義で出されている楽曲はpop'n music peaceに登場した『place of the sky』以降音沙汰がありません。

これについてはどう受け取られても構わないものだと思いますし、この記事を書くにあたり必要な事だと決めていたので素直に書きます。

BEMANI Sound Teamの皆様はあくまでも会社員であり、その先でどんな変化があっても此方側はそれを受け入れるのみです。例えそこにファンとして、応援している方に対して一抹の不安があったとしても、野暮な詮索をするのはなにか違うなぁと私個人は思う訳で。

だからこそ、今ある数多の楽曲に対してどんな想いが込められているのかを自由(常識の範囲内)に解釈するという行為が広く行われているし、自分もその1人なのかなと。

自分は『夜虹』のお陰で、このエールを聴けたお陰でとてもスッキリとした、まさしく晴れ晴れとした気持ちになりました。
本項で述べている事は、その理由なのかもしれません。


話を戻しまして、この『place of the sky』のアーティストは"CROSSED FINGERS"さん。
これは「幸運を祈る」というハンドサインの名前でもありますね。

サントラのクレジットを見ると、沢山のBEMANI Sound Teamの面々で作られていることがわかります。
作編曲にHuΣeRさん、作曲&作詞にMarLさんが関わっていることも印象深いです。

この曲のコメントにはこんなことが

晴れた日に吹く爽やかな風。
信じた先に、きっと何か見つかる気がする。
僕はそうやって生きていきたいんだ。

(BEMANI fan site MUSICページより)


晴れ
です。

『夜虹』の最後に見えた晴れの景色。

幸運を祈るというサインに、時間差で幸せを示す虹で答える。
曲そのものも相まって、なんだか繋がりがあると思ってしまう。考えすぎかもしれない。
でも2曲に関わった方が同じで、かつ曲の持っている意味が似ているなら、もう少し点繋ぎをしてみたい。

ここで私は改めて『星屑の夜果て』の歌詞を噛み締めることにしました。

雲の切れ間に一筋の虹が見えた
(朝の光が差した)
空の時雨に「星屑」と名をつけた

ラスサビのこの部分、これじゃないか。

私が『夜虹』から見えた景色、これじゃないか。ただ1つ、『夜虹』ではハッキリと晴れを迎えられている。これがとても重要だと思っていて。
本当の意味で雨があがったからこそ、時雨は、MarLさんは次へ進む事が出来たのではないかと。

"時雨"とは、ぱらぱらと降る冷たい通り雨のことを指しますが、涙を落とすことという意味もあります。

これまで俯いて歩いていた時雨が、これで漸く晴れた空を見上げながら歩みを進められる。遠くまで、よく見える。


「夢を諦めそうになる自分を、祈り蒔いた星たちが虹を架け、導いてくれた。」

だから私は、『夜虹』は「時雨」というフィルターを通してMarLさんへ贈られたエールなのだと解釈しました。

次項で最後となります。
もう少しだけお付き合いください。


夜虹はうたっている

『夜虹』を聴いている時、引っ掛かった部分がありました。
中盤のジャズ地帯(自称)を除いて、ロングポップの割り当てられた音の殆どに一瞬の空白があるんです。
いや、これを空白と言って良いのか分かりません。絞られた感じ?

初めはここに違和感がありました。
というよりも、バイオリンの奏でるメロディそのものが、なんだかそこに声があるように聴こえたんです。
いやそんなはずは無いんですけど、その一瞬の空白が息遣いのようにも、涙を堪えながら声を振り絞っているようにも感じたんです。

この記事のはじめに書きましたが、時雨と言えば、MarLさんといえば、"歌"のイメージがあります。
そしてこの『夜虹』は、HuΣeRさんがこれまでの意思を丁寧に汲み取って創りあげた「時雨」の為の曲。涙を晴らす為の曲。

HuΣeRさんがどんな感情を込めてこの音を選んだのかは知る由もありませんが、本来はそこに"歌"があったのかもしれません。いや、そこには確かな"うた"があるのかもしれません。

うたのあるインスト。

それが時雨の3曲目、『夜虹』なのだと思いました。


さいごに


『夜虹』は紛れもなくインストです。
歌ものではありません。

でも確かに、そこにはうたがあるんです。
夜虹はうたっているんです。

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