莉子の徒然草

短歌作ります。ごーしちごーしちしちで季語はいらないよ。

莉子の徒然草

短歌作ります。ごーしちごーしちしちで季語はいらないよ。

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固定された記事

多面体とたましい

『ちょっとあんたたち!おばあちゃんに手合わせた?』と母が言う。 私は、祖母の仏壇に手を合わせることが苦手だ。 だって、この仏壇におばあちゃんがいるわけじゃないじゃ…

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丸としわの遺伝子

私は顔立ちが母そっくりで、親譲りの丸顔である。 先日、久しぶりに祖父にあったら、 「莉子ちゃん、丸顔すぎてフライパンかと思った」 と言われた。 このことを母に話した…

莉子の徒然草
4か月前
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「破戒」を読んで

私は、他人のまぶたが一重か二重かということが必要以上に気になる。 友達とご飯を食べるとき、地下鉄の中吊り広告の芸能人をふと見るとき、 職場で上司に話しかけられる…

莉子の徒然草
5か月前
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秋は田園

秋は夕暮れ。清少納言が枕草子にしたためた、有名なフレーズである。 たしかに、秋は夕暮れだと思う。 会社の窓から大きな茜色の夕暮れを見るとき、「こんなに美しいもの…

莉子の徒然草
6か月前
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原始、女性は月であってもいい

朝、起きてカーテンを開ける。5月の真っ黄色の太陽の下で一杯の白いご飯を食べる。 いつもなら、ごはんが美味しい、良いお天気の素敵な日。 けど、そうはいかない。 太陽を…

莉子の徒然草
11か月前
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世界中のアンネたち

妹がインド旅行から帰ってきた。いろんな土産話を聞く中で、犬の話が脳内にこびりついている。 「インドの野良犬ってね、喜怒哀楽があるの!目をさんかくにして怒るし、好…

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手話と寿司

私は、どうしてAちゃんが好きなんだろう。 Aちゃんは、中高時代のオーケストラ部の後輩。 演奏する楽器が違うせいか、中高時代、 私とAちゃんは特に仲が良かったわけでもな…

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シーソーと芽生え

「春化処理ってのは厳密には間違ってるよ、低温処理のほうがいいかも」 植物学研究室の先輩が私の論文の原稿に赤字で書き込む。 短歌連作「シーソーと芽生え」を作っている…

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ダンゴムシとワラジムシ

「せんせー、おれ次は100点とる!」 天然パーマの向こう側にまっすぐな目。 塾のバイト先の生徒、小学生。 彼は凄くおしゃべりで、少し集中力がない。 授業が始まって、こ…

1

多面体とたましい

『ちょっとあんたたち!おばあちゃんに手合わせた?』と母が言う。
私は、祖母の仏壇に手を合わせることが苦手だ。
だって、この仏壇におばあちゃんがいるわけじゃないじゃん、と思う。
祖母が亡くなってからよく、おばあちゃんはどこに行ったんだろう、と考える。
お葬式でお経を読みにきたお坊さんは、仏様になったと言った。
またある人は、『タマシイ』となり私の心の中に住んでいると言った。
けど私は全然信じられない

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丸としわの遺伝子

私は顔立ちが母そっくりで、親譲りの丸顔である。
先日、久しぶりに祖父にあったら、
「莉子ちゃん、丸顔すぎてフライパンかと思った」
と言われた。
このことを母に話したら、母は、
「私、中学の時に満月って言われたことあるよ」
と言っていた。
ちなみに、祖母も丸顔なので、我が家は3代続く丸顔家系だということになる。
つくづく、自分に流れる丸顔の血の強さを感じる。
丸と言えば、昔、生物の授業で習った、メン

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「破戒」を読んで

私は、他人のまぶたが一重か二重かということが必要以上に気になる。

友達とご飯を食べるとき、地下鉄の中吊り広告の芸能人をふと見るとき、
職場で上司に話しかけられるとき、いつも相手のまぶたを見る。

あ、この人は一重なんだな、この人は、末広二重か…。
この子、今日アイプチしてるな、整形するつもりはあるのかな…。

相手のまぶたを見つめたまま、そんなことを考えているものだから、
相手からは「なにぼーっ

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秋は田園

秋は夕暮れ。清少納言が枕草子にしたためた、有名なフレーズである。

たしかに、秋は夕暮れだと思う。
会社の窓から大きな茜色の夕暮れを見るとき、「こんなに美しいものをただで見てもいいのか」とありがたい気持ちが胸に広がる。

しかし、会社で秋の夕暮れを見ていて興ざめする瞬間がある。

「新世界より」を聞く瞬間だ。
私の勤める会社では、退勤の時間にドヴォルザーク「新世界より」の二楽章が流れる。
日本では

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原始、女性は月であってもいい

朝、起きてカーテンを開ける。5月の真っ黄色の太陽の下で一杯の白いご飯を食べる。
いつもなら、ごはんが美味しい、良いお天気の素敵な日。
けど、そうはいかない。
太陽をぎゅっと睨んでみる。
私は、今日生理なのだ。

社会人になってわかったことが一つある。それは、この社会に月の満ち欠けがないこと。社会ではコンスタントに日の出と共に始業し、日の入りと共に終業することが求められている。
ここに、「月」は存在

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世界中のアンネたち

妹がインド旅行から帰ってきた。いろんな土産話を聞く中で、犬の話が脳内にこびりついている。
「インドの野良犬ってね、喜怒哀楽があるの!目をさんかくにして怒るし、好きな人にはワンじゃなくてくぅーんってまじで甘えてるの。日本の犬とは全然違う。日本のは、やっぱ飼い慣らされたペットなんだなぁって思った」
トムとジェリーみたいに表情が動く犬を想像しながら、「目をさんかくにして怒る」と表現できる妹を誇らしく、そ

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手話と寿司

私は、どうしてAちゃんが好きなんだろう。
Aちゃんは、中高時代のオーケストラ部の後輩。
演奏する楽器が違うせいか、中高時代、
私とAちゃんは特に仲が良かったわけでもない。
でも、なぜか私は彼女が好きで
『今度の高校の演奏会、終わった後みんなでご飯行こうよ』
『3月だし部活のメンバーでご飯行こうよ』
何かと理由をつけては彼女を誘う。
この間は、『友達の出る演奏会行こうよ』で
社会人なりたてほやほやの

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シーソーと芽生え

「春化処理ってのは厳密には間違ってるよ、低温処理のほうがいいかも」
植物学研究室の先輩が私の論文の原稿に赤字で書き込む。
短歌連作「シーソーと芽生え」を作っている今、私は大学院生活の集大成である修士卒業論文を書いている。私が所属している研究室は、シロイヌナズナという植物について研究している。
この卒業論文に、春歌処理という言葉を入れたかったのだが、先輩の添削でバッサリ切られてしまった。春化処理とは

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ダンゴムシとワラジムシ

「せんせー、おれ次は100点とる!」
天然パーマの向こう側にまっすぐな目。
塾のバイト先の生徒、小学生。
彼は凄くおしゃべりで、少し集中力がない。
授業が始まって、こくごの文章題の第一問の記号問題に、アとかイとか適当に書いて、手を止めて口を動かす。
「おれ本気出したら強いんだよ、この前なんかパパに相撲で勝ったの」
「せんせーの目の上のそれ何?うろこみたい!」
アイプチ目立ちすぎたかな。

先週もま

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