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うまーくいーく

お察しの通り捻くれた子供だった。

幼少期から自分が天邪鬼であることに屈折した特別感を覚えて密かにウットリするような面倒な性格だったし、もちろんその面倒臭さは今も形を変えて残っている。

たださすがそこそこ歳を重ねた今、子供の頃から大事に抱えてきた「人と同じはイヤだ」「人のマネはしたくない」という謎の抵抗心も徐々に丸みを帯びてきて「無理に他人に合わせる必要はないが、素敵だと思った人から積極的に影響を受けに行くのは自分を広げられて良いこと」みたいな折り合いの付け方はできるようになった。

そもそも視野を広げてみれば、仮に自分がどんな行動をとろうと全てが他人の二番煎じなこの世界で、人から影響を一切受けずに生きるなんて不可能だし、それ以前に不自由で不幸だと思えるぐらいには僕もちゃんとオッサンになったらしい。

そんなこともあり「自分が好意や興味を感じる人の行動には、自分をそう思わせるだけの原因が隠されているはずだ」という発想から、気づくと僕は案外人の影響を受けやすい人間になっていた。

そんなこともあってか、先日映画好きの友人と会って話をし、映画の魅力やオススメの作品について喋ってからというもの、分かりやすく映画モチベが上がっている。

それこそ既に登録している配信サービスで無料の作品を観るよりむしろ、オンラインや店頭で個別レンタルしないと観られないような、少し手間のかかる作品を中心に観ている。

この辺、やはり「手間をかける」というのは自分の情熱や愛を認識して行動を意欲的にする上でとても重要なことなんだなぁ~と、何となくの気づきもあった。

きっと、うまくいく

「物事は深く考えずパッと直感で始めるのがいい」としみじみ思う。

それは先述したような配信サービスでどの作品を観ようか選んでいる時などに顕著で、迷って延々と「いつか観よう」とブクマばかりを増やしている間に何でもいいからエイヤと選んで再生ボタンを押してしまった方がいい。

それでもしつまらなければ途中で止めて再度作品選びに戻ればいいだけだ。

そんなスタンスが固まってきた最近は、平日の空き時間にも割とフットワーク軽く映画を観られるようになってきたし、やはりそうして行動を起こしてみると付いてくる収穫もある。

2013年公開のインド映画「きっと、うまくいく」を最近観たのはその良い例で、自分がSNSで観て直感的に「センスが良いな」と思った紹介アカウントを信じて良かったとしみじみ思う。

思えばバーフバリやRRRなど近年何かと話題に上がっているインド映画だが、自分はアクション系の作品しか見た事がなく、本作のようなインド産のヒューマンドラマに触れるのはこれが初めてだった。

けれどお馴染みインド印の明るく陽気な歌唱シーンの安心感もあり、全体で約3時間と長尺な本作も退屈せずに観られたし、劇中の人物の人生や心の動きに触れて考えさせられることも多かった。

安直に理想論を描くだけの作品には惹かれない僕だけど、本作に込められたメッセージには「ゴールより過程を重んじよ」という向きを感じたので、特に説教臭く感じることなく軽やかな気持ちで向き合えた。

それでいて明るく前向きな内容だけでなく、その対を成す暗い側面、苛烈な競争社会がもたらす若者の絶望とその顛末という現実にも逃げずにしっかり向き合っており、ただ楽しいだけじゃない胆力のある作品だと思った。

そして劇中の台詞にある『心は臆病だから騙してやらなきゃ』はホントにそうだと思ったし、作品全体を通して「人間や生きることをどう肯定するか」という点において、情熱や哲学や工夫や遊び心、そして愛が強烈に込められた傑作だと感じた。

ネットで見かけた「答えは教えてくれないけど、考え方を教えてくれる映画」という評価がどこまでもしっくり来る素敵な作品だったし、鑑賞前よりも世界の見え方を少しだけ明るくしてくれるような不思議な魅力のある映画だった。

また遠い異国で10年前に作られた作品ながら、人間が抱える悩みや苦しみにそう違いがないことに変な嬉しさがあったし、そうしたキラキラした普遍性が一本軸として通っている本作だからこそ素直に感銘を受けたのだと思う。

直感と「エイヤ」でとっさに行動を起こして、再生ボタンまで一気に辿りついて本当に良かった。

ちなみに宇宙でも書けるボールペンを調べたら普通に1万とかしてたまげた。

しばらくは地球用でガマンしようと思う。


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