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#43)今日の好き曲『須臾の島 feat. ぷにぷに電機/冨田ラボ』

芸人の天津・向さんと構成作家の原田英尚さんによるラジオ番組『ジロンラジオ』が好きで毎週楽しみに聞いている。

この番組は各プラットフォームから聴取できるポッドキャスト番組で、お二人が交代制で持ち寄った持論について各回15~20分ほどのコンパクトな尺で話し合うというもの。

本番組の印象は一言でいうと「穏やか」で、バックに流れているジャジーな音楽に寄り添うように良い意味で脱力したお二人のトークが聞いていて心地いい。

また向さんについては、麒麟の川島さんとやられている『川島明のねごと』や、声優の田所あずささんとやられている『どうせワレワレなんて・・・』など、他のラジオで喋る時とはまた違った語り口であることに驚く。

前者のように芸人モード全開でエンジンを吹かすこともあれば、後者のように声優さんの魅力を引き出すべく司会進行や女房役としてのポジションを器用にこなす場面も多い。

そんな向さんの一番落ち着いたトークが聞けるのがこの『ジロンラジオ』だと思うのだけど、そうしてゆったりした喋りを聞くほどに本人の思慮深さや洞察の深さ、加えて相手の話を広げる上手さや聞き取りやすい声の良さなど、これまであまり注目していなかった魅力に次々と気づく。

この辺り、やはり爪を隠せてこその実力派というか、自らすすんで脇役を演じられる人だからこそ、前に出た時に初めて気づく器用さや引き出しの多さにハッとする。

もちろん芸人さんという職業上、ツッコミの観点から他人や世間に対して違和感を感じるセンサーが人一倍鋭いのはあるだろうけど、更にその気づきのアウトプットの仕方が上手いというか、間違っても強く自分の正しさを主張して周囲の反感を買ったりせず、あくまで丁寧に優しく論を展開する言い方の妙を感じて好感が持てる。

同時に「こういう言い方をすれば話がスッと入ってくるのか」と勉強にもなる。

一方相方の原田さんについて。

失礼ながらこの番組を聞き始めるまでお名前を存じ上げなかったものの、週替わりで持ち込む持論の着眼点やユニークさが見事で、さすが構成作家さんだなと思わされることが多い。

個人的に最も刺さったのは自己肯定感について語った#48で、自身の内部に渦巻く違和感や怒気をちゃんと言語化して人に伝えられる語彙と思考力と理性的な語り口に惹かれた。

この論については「正しく怒れる大人像」を感じて強く印象に残っているし、個人的にも参考にしようと思う部分が多かった。

他にも自身の留学経験から効率的な英語の勉強法を語る回などは、感覚的ながら理にかなった説明で興味深かった。

こうして毎週『ジロンラジオ』を聞きながら思ったのは、15~20分前後というコンパクトな時間で喋るからこそ、余計な言葉がなく終始集中して各回を楽しめるのだということ。

そうした言葉数の適量さに加え、二人の会話のゆったりしたテンポが自分の中で考えを巡らせながら聞くのにちょうどいいのだと思う。

なので仮に『ジロンラジオ』が30分番組だったとして、これを2倍速で聞いてムリヤリ15分尺として消化したとしても、上記のように聞きながら思考を巡らせる情報の余白はないだろうし、むしろ会話の文脈を追うことに夢中で自分なりの受け止め方を整理する暇がない気がする。

このあたりは最近よく聞く映画の倍速視聴などにも通ずる部分で、ただ内容を消化するためだけに見聞きするか、もしくは内容を自分の中で咀嚼しながら見聞きするかという目的の違いによってくるものだと思う。

その点この『ジロンラジオ』は完全に後者で、自身の思考を練りながら聞ける貴重な番組としてとても有意義な時間だと感じる。

思うに、可処分時間の減少が叫ばれる現代では自分で考えを整理するハードルが上がり、自分と近い他人の意見を拾い上げて借り物の持論として掲げるインスタントな手法が浸透してきた感があるが、あくまで持論はそこに至るまでのプロセスを他でもない自分で踏むからこそ想像力が鍛えられることは否定しがたい。

今こそ「正しいか誤りか」「正義か悪か」「黒か白か」といった明確な線引きのできない問題について自分なりに考え、他人を屈服するためでも自分を正当化するためでもないフラットな持論を築くことの重要性が問われている気がする。

今日の好き曲

ということで今日の好き曲は冨田ラボfeat.ぷにぷに電機の『須臾の島』

なお「須臾」は「しゅゆ」と読むらしく、「しばらくの間」「わずかな間」などの時間の感覚を指す言葉らしい。

明確な答えのないテーマを自分の頭で考える時のうんにょりする感覚を音楽で表現するとちょうどこんな感じだろうな、という抽象的な理由からこの曲を選んだ。

ちなみにここ数日は過去記事にも書いた奥森さんの配信番組に投稿するネタを考えていたのだが、その時も僕の脳内はだいぶうんにょりした。

そして今回の大喜利のお題は『お笑い好きな馬主が考えた馬の名前』ということで、既に締め切り前に投稿も終えたので、どうか採用されるよう木曜日の放送を祈るような気持ちで待とうと思う。

では微妙に論点がズレてきたところで逃げるように終わろうと思う。

それではまた明日!

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