七福神日誌14

六時起床。
すぐに家を出る。七時に七福神。
土曜日なので仕込みの量が多く、社長と仕込み長のアネさん、ママさんと四人で早くから朝の準備を始める。
キャベツを四玉、豚を一キロ、牛を三キロ切る。
添え手の指をまな板に立てておくこと、指を飛ばさないよう、人差し指か中指の第二間接あたりを刃の側面につけてカットすることなどを社長から教わる。
すじこんを大鍋に用意して、野菜、酒を発注。
粉を五キロ練る。その途中、卵を割る時に卵を十個駄目にする。
卵は最終的にまるごと使うが、過程として一度、卵白と卵黄を分ける必要があって、そのため。
「そのままでは赤字やで」と社長にいわれ、コツをうかがうと、「そら常識やね」とのこと。
「せやで、黄身を破くなんて非常識やで」とレンコンの串を刺しながらアネさんがいう。
十時頃、社長が人数分のコーヒーとドーナツを買ってきてくれて少し休憩。
ママさんが「夏はハモですね」といい、しばらく魚の話になる。
このママさんという人は社長の古くからの友人で、二十数年前に妻が生まれてすぐに、義母の元を訪ねてきて赤ん坊をあやし、以後は戸惑う義母に構わず妻が小学校にあがるまで毎日やって来て一緒に遊んだりオムツをかえてくれた人とのこと。
よってママさんと呼ばれている。
開店後、込み合う。
十三時から揚場に立つ。
今日は帆立に手間取った。
海老やイカもそうだが、シーフードは水気があって衣を巻くのが難しい。
上手くいくまで練習させてもらい、終わり頃、なんとか提供出来るものが揚がりはじめる。
十五時に退勤。
帰ってマンションのロビーで妻とドーナツを食べる。
中上健次の『日輪の翼』を読み終える。
明日も早出の朝番予定。

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