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シンデレラおばさん12時の鐘の音を聞く

出版のための最後の作業である、原稿をKDP(KindleDirectPublishing)にアップロードし、Amazonの審査を待っていた。

審査には72時間程かかるとあったが実際は、1日とちょっとだった。

「予約注文ができるようになりました」とAmazonから届いたメッセージを昼休みに確認し、ウキウキとした気持ちで終業時間まで過ごした。

退社し、帰りの電車の中でいそいそと、noteの記事にAmazonの予約ページを埋め込んで公開する。

公式LINEで記事投稿のお知らせをして、Xの投稿も済ませた時にはちょうど最寄り駅に着いた。

駅を出ると、とっくに日は沈みきっており、空は真っ暗だ。暖かい冬の日が続いていたが、最近はしっかり寒い。

暖かい電車の中で開けていた上着のジッパーをしっかり閉めあげる。

やっと冬の寒さになったと思いつつも、やはり寒いのは辛い。

よし。学童にこだぬきずを迎えに行って、晩ご飯作らんと。

仕事を終え、身体も気力もぐったりしているが、ここでもう一度気合いを入れ直せばならない。

すると、脳内に鐘の音が響きだした。日本の寺で見るような青銅色のずっしりした鐘の音ではなく、海外にあるような時計塔が時を知らせる複数の鐘の音。

ガランゴロンガランゴロン

あ。魔法がとけた。

12月にmoon塾に入門し、オラ、Kindle出版するゾと走り続けた1ヶ月。

時間を見つけては、執筆、推敲に励んでいた。寝る間を惜しんで取り組んだ日もあった。

やらなくてもいい、誰にも求められていない、不必要な作業に、夢中になってやっていた。

楽しいからね。

「1ヶ月でやったの?やっぱり異常だねぇ」友人が驚く。

1ヶ月という短期間で仕上げたことに彼女は驚いたが、たぬきちからすれば、それは実は逆で、1ヶ月という短期間だからこそ、ここまで集中できたと言う方がしっくりくる。

子どもらの朝のご飯、支度、送り出し、仕事、学童お迎え、晩御飯、宿題の確認、家事諸々、明日の準備、就寝。

そんな毎日の合間にねじ込んでいたんだから、1ヶ月以上かかれば、おそらくそっちの方が大変だ。

でも、誰に頼まれたわけでもないのに作っていたのは、他でもない自分の為だった。

だからこそ、こんな状況でも夢中でやっていた。

それがこの1ヶ月。

鐘の音がガランゴロンと響いて、憑き物が落ちたようだった。
「さあ、お母さん業やりますか」

そんな言葉を自分にかけていた。
ずっとお母さんだったけど。

なんだか、この1ヶ月は「作家」になる魔法にかけられて、すっかりおめかしして、舞踏会に繰り出したシンデレラよろしく、半ば夢見心地だった。

12時の鐘の音が鳴り終わる頃、魔法がとけたシンデレラは、美しく着飾ったドレス姿から、ぼろをまとい、片方の足はガラスの靴をお城に置いて来たのだから裸足で、足裏は傷だらけで帰ったかもしれない。

化粧はハゲ落ち、手袋を片方無くした素手で自転車をこぐ。水仕事で荒れた手指に寒風が染みる。

たぬきちはずっと汚いから、エアシンデレラおばさんだったけど。

こんな状況で、夢なんて見れるはずもないよねぇ。お疲れ様です。皆々様。

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