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メリトクラシー

メリトクラシーとは、能力主義・業績主義とも呼ばれ、個人の能力によってその地位が決まり、能力の高い者が統治する(多くの報酬を得る)社会を意味する。

優秀な個人が評価がされるルールを社会全体に整備され、才能と努力によって成功を収める機会を個人に平等に与えることは、競争の結果に対する一定の納得感が得られる。それゆえ、メリトクラシーは公平な社会のあり方のように思える。

しかし、メリトクラシーへの批判もある。

英国ジャーナリストのD.グッドハートは、メリトクラシーの根本的な問題点として、低学歴者による労働の社会的地位の低下を挙げている。
「頭を使う労働に法外な見返りを与え、手と心を使う仕事(肉体労働や看護・保育など)の尊厳と金銭報酬を減少させてきた」。これは社会的不平等や格差につながる。

メリトクラシーは、先進諸国において学歴偏重と社会の不平等を強めている。一流大学に卒業した勝者は、自分の努力の結果と思い込む。しかし、子どもの学力に大きく影響しているのは、親の収入や文化的資本(自宅の蔵書数、博物館や美術館に行く機会の有無)である。

メリトクラシーの下では、各個人が自己の能力の顕示する結果、能力よりも自己顕示が優れた人物がより高い地位を得る可能性がある。能力を判定する確たる基準がないと、誤ってある地位に適切な能力を持たない者が就いて可能性がある。

英国社会学者マイケル・ヤングは『メリトクラシーの法則』(1958年)の中で、階級社会から純粋な能力主義へ変化した社会の弊害として、社会構成員が勝者と敗者に分かれ、前者はおごりを、後者は屈辱を、それぞれ感じるようになると予測していた。

ハーバード大学のM.サンデル教授は能力主義の課題を指摘し、「誰もが尊敬され、社会的な評価と敬意を得るために尊厳ある仕事をできるようにするのが重要。私たちは、拡大する不平等を是正しなければなりません。成功している人たちは、成功に対する考え方を変えていかなければなりません」と訴える。

コロナ禍で、看護師やスーパー店員などのエッセンシャルワーカーの価値や重要性が高まった。学力だけでなく、人間がもつ様々な能力や適性の価値を認めることがこれからの社会に求められる。

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