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金融所得を考慮した社会保険料負担

2024年4月25日、厚生労働省は金融所得を考慮した社会保険料負担について検討を始めた。

金融所得といえば、株式の売却益や配当、債券の利子など。今年開始された新NISA制度を利用することで、株式の運用益に対する所得税や住民税は非課税となり、年間最大360万円、上限が1800万円まで投資可能である。社会保険料の負担もない。この大きな非課税枠が魅力的で、投資を始めた人も多いはず。

NISA制度による運用益に対して社会保険料負担が求められるのではないかという懸念が広がり、注目が集まった。

その内容は、後期高齢者医療費の窓口負担や介護費用の自己負担の引き上げ(1割から2割へ)に加えて、国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療制度などの社会保険料の算定対象に、株の譲渡益や配当などの金融所得を含めるかいなかについての提案である。

現状では、国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入している場合、金融所得の確定申告により、申告した年の社会保険料が増加する可能性があり、源泉徴収を選んだ場合には、社会保険料の徴収対象とはならない。

この不公平の是正のために、厚生労働省は金融所得のうち、課税手続きで確定申告の要不要が選べる所得に対する社会保険料を徴収する案を検討(朝日新聞デジタル2024年4月25日「社会保険料に株の配当などの金融所得を反映 厚労省が検討本格化」)。

会社員や公務員は給与収入から社会保険料を納めている。少子高齢化の進行に伴う社会保障費の財源確保のために、勤労者の社会保険料も増えつつある。実際、健康保険と介護保険、厚生年金(18.3%、労使折半)を足した社会保険料率は30%に近づく。

現在の社会保障給付費は130兆円、2040年度の推計値はその4割増の190兆円となっており、社会保障制度改革が急務である(日経2023年12月6日「社会保障の負担、金融資産も反映 狙いは?」)。

本件は、2028年まで検討される。金融所得に社会保険料負担が求められる場合、会社員や公務員の社会保険料負担、個人事業主の国民健康保険、高齢者の自己負担等にどのように影響を与えるか。改革案の動向が気になる。

ありがとうございます。
(画像は2017年3月撮影)

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