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幸運の餅

2023年の暮れ、なぜか「餅」にまつわるあれこれがあった。

最初は、バイト先で餅をもらった。
バイト先は医療機関だったので
入院患者さん用に作ったお餅の余りをくれた。
「病院でも餅を食べるんだ~」と驚いた。
(考えてみれば、入院しているのはお年寄りや流動食しか食べられない
人ばかりではないんだよね)

それとは別に我が家では毎年自宅で
お餅を搗く(搗くのは餅つき機)
もち米は実家で分けてくれるのだが
例年は2升のところ、今年は
もう年だから餅は要らないという人がいるとかで
3升分けてくれた。

そのうえまるでダメ押しのように
大晦日に息子が知り合いからお餅を分けてもらってきたのだ。
それも1升分くらい。切りたてでまだ柔らかい。

我が家だけで消費はできないから誰かにおすそ分けしようか
でももう大晦日だしどこのお家でも餅くらい用意してあるだろう
しばらく迷った挙句、ダメ元で
近所の人にLINEしてみたら
ありがたいことにもらってくれることになった。
一人は仕事終わりに寄ると言ってくれたので取り置いておき、
もう一人は買い物帰りに寄ると言ってくれたけど
すぐだから持っていくね、と届けることにした。

Aさんにお餅を届けて帰ろうとしたら
Aさんのお隣(Bさん)の家からトントンと何かを叩くような音と
うめき声のようなものがする。
Aさんが、「Bさんどうしたの?何があったの?」と声をかけたところ
前日の夕方から立てなくなって、玄関まで這っていき
ずっと助けを求めていたらしい。

玄関には鍵がかかっているが、ベランダの窓は施錠していない
ということなので
Aさんの家から入り、ベランダの境にある避難用の隔壁を蹴破って
Bさんの家に入った。
Aさんが玄関先で倒れているBさんに寄り添ってくれている間に
私は玄関の鍵を開けて、救急車を呼んだ。

Bさんは独り暮らしだったから、病院へはAさんが付き添ってくれて
そのまま入院、午後には娘さんとも連絡がついたらしい。

人生にはいくつか
もしあの時~だったら、みたいな分岐点みたいなものがあるけど

あのタイミングでお餅をもらっていたから
あのタイミングでお餅を届けたから
そして玄関先でおしゃべりをしていたから
Bさんの声に気づくことができて良かったと思うと同時に

もし息子がお餅をもらってきていなかったら。。
もし我が家にお餅のストックがあまりなかったら。。
もし届けずに取りに来てもらうのを待っていたら。。
Bさんの状況に気づいてあげられなかったかもしれないという
漠然とした恐怖心みたいなものとが胸の中にある。

Aさんはこの時の出来事を、お正月で帰省してきた
娘さんたちに話して
「だからこれは幸運の餅」とみんなで食べてくれたらしい。
私も息子に
「もらってきた餅が人の命を救ったね」と褒めといた。
息子にお餅をくれた人にも感謝だよね。



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