見出し画像

鉄道セクター決算分析(2024年3月期 第3四半期)

コロナ禍前の業績水準に回復してきた鉄道企業について、最新決算を考察します。鉄道企業は社会の基盤を支える大切な存在で、安定性からディフェンシブ銘柄として考え、投資の検討を進めています。

特に注目しているのはJR4社と大手私鉄企業で、最新決算の各事業を比較してみました。運輸業やホテル業は、今後のインバウンド拡大での成長が期待されている分野です。それに加えて共通する流通業や不動産業も比較対象にしました。

事業規模は、下記のようにJR東が最大事業者です。
JR東 >> JR東海 = JR西 > 私鉄大手 > JR九州 > 私鉄その他

営業利益率は、下記のようにJR東海が圧倒的ですが、私鉄大手も同様の水準の利益率を誇ります。
JR東海 >> JR東 = JR西 = JR九州 = 南海 > 私鉄その他

JR4社の業績分析

JR4社 2024年3月期 第3四半期 決算
  1. JR東:全体の事業で営業利益率が10%を超えていて、足をひっぱる事業がありません。運輸事業の営業利率がJR各社の中では低めです。それに対して、事業比率が低い事業ですが、SUICA事業を含むその他の事業は、営業利益率が約22%あります。

  2. JR東海:事業比率の80%が運輸業の企業のため、ドル箱の東海道新幹線のみが収益を左右します。株価が冴えないのは、大規模投資が必要となるリニア事業が、静岡県知事に阻まれていることでしょうか。

  3. JR西日本:前回決算から営業利益率が向上していて、すべての事業で前回決算の営業利益率が改善しています。

  4. JR九州:他のJR各社と比べて、運輸事業の比率が低く、流通、不動産の比率が高いことが特徴です。それに、他の鉄道会社と比べて、一番配当性向が高くて、配当利回りも3%近い。

大手私鉄の業績分析


関東圏私鉄 2024年3月期 第3四半期 決算
関西圏私鉄 2024年3月期 第3四半期 決算
  1. 東急:運輸業が私鉄の営業利益率1位を誇っています。利用者が多い路線が主力となっているからでしょうか。加えて、不動産も高い営業利益率を持っていますが、その一方で約半分を占める流通業が足かせになっているのは、前回決算から変わりません。そのため、営業利益率が10%に届かない。

  2. 東武:前回決算から営業利益率が12.67%から13.16%に改善。スカイツリー事業も営業利益率が45%あります。

  3. 西武:事業比率の約半分をホテル業の営業利益率が10%を回復。株価も2023年11月から急騰して、2000円を回復。ホテルの単価が上昇してそうなので、さらに営業利益率の改善も見込めるかもしれません。

  4. 小田急:事業規模と営業利益率は京王と同じ水準ですが、営業利益率は2位を誇ります。

  5. 京王:営業利益率が13%に改善。事業全体のバランスがよく、すべての事業が足をひっぱっていないため、安定感あり。株価は軟調で推移しているため、投資検討対象になります。

  6. 京成:運輸業の事業比率が6割で高めなんですが、営業利益率はいまいち。不動産事業の営業利益率が高いですが、事業比率は9%。やはり、最大の魅力は保有するオリエンタルランド株のみ。

  7. 京急:京王と同じく事業内容がバランス良いんですが、利益率は京王よりも少し低め。特に、京急の「ドル箱」である羽田空港線は、JRの羽田空港アクセス線の影響を受けそうで、株価は冴えません。

  8. 相鉄:運輸業の営業利益率が低いですが、事業比率が低いため、あまり全体の利益には影響しない感じ。流通事業には期待できないため、不動産事業とホテル事業の成長、特にホテル事業に期待。

  9. 名鉄:他社にはない運輸業の比率が高いが営業利益率が低く、他の事業も営業益率が低いことから事業全体の営業利益率も低めです。投資対象にはなりません。

  10. 近鉄:一番大きな事業比率が国際物流の営業利益率が2%のため、運輸業の営業利益が高くても全体の営業利益率は最低水準。投資対象にはなりません。

  11. 阪急阪神:多角経営が最大の特徴であり、その中でも利益率抜群のエンタメ事業は魅力。前回決算から営業利益率が1%悪化で、株価も軟調。運輸、不動産、エンタメが営業利益率が高い中核事業ですが、他の事業がいまいち。

  12. 京阪:関西圏の私鉄では営業利益率2位です。事業内容がバランス良いため、安定感があります。

  13. 南海:私鉄の営業利益率1位を誇っています。前回の決算から営業利益率が2%も改善。不動産業の利益率がトップクラス。事業比率の高い運輸業の営業利益率はそこまで高水準ではありませんが、流通事業の営業利益率も高いことから事業全体の営業利益率も高い。

  14. 西鉄:近鉄と同じく、最大の事業は物流。営業利益率が10%超なのは、不動産とホテルですが、事業比率も低いため、全体の営業利益率も低い。投資対象にはなりません。

保有銘柄

 身近な鉄道会社(株主優待を活用できる)ということもありますが、ディフェンシブ銘柄として下記を保有しています。

#投資 #新NISA #株 #資産運用

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?