大学生13

【日本文化同好会】と書かれた部屋へ私たちは歩み入った。
そこからは地獄であった。
何を思ったのか、山田は私と葵井さんに日本の文化の素晴らしさを小一時間説き続けたのだ。
憔悴しきった私を尻目に葵井さんは「素晴らしいですね」と感心しているようであった。

葵井さんは【日本文化同好会】へ入るらしい、私も何となく入ることになってしまった。この後葵井さんは秘められし文学の才能を遺憾なく発揮し俳句のコンクールを破竹の勢いで駆け上がることとなる。

「それはそうと、一ヶ月後に催される花火大会は皆さん見に行くのですかい?」と山田が話を切り出した。
「あんなもん、暇を持て余した大学生のカップルという魑魅魍魎が跋扈跋扈(ばっこばこ)で風紀紊乱の混沌極まる有様であろうよ」と私は言った。
「でしょうね」と山田
「素敵じゃないですか」と葵井さん
「素敵だと思います!!」と山田、流石の手のひら返しだ。
私達は葵井さんの純然さに感銘を受けた。

「しかし君、そうやって一夏の大イベントである花火大会にすら風流を感じれないほどに荒みきってしまったのですかい?たまには純粋に楽しんでみるのもいいのでは?」と山田にしては真っ当なことを言うものだ。
「いいですね、見に行きましょうよ、花火」
と葵井さん
「どうしたものか」と私は困惑した。

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