大学生 6

私たちは近くの居酒屋へと歩み入った。
どうやら外国人の名前は「ニック」といいカナダから日本へ観光しに来ているらしい。
私たちは少し英語がわかるので、拙い英語で会話を交わした。
ニックは前日酔い潰れたせいで、二日酔いになり観光に一緒に来ていた仲間に置いていかれ、やけ酒をしながら、途方に暮れていたところを私たちが遭遇したらしい。
どうやら先日、日本の神社で、酔っ払って暴れてしまったらしいことを、とても反省していた。
そして、その神社で、謎のお面を被った、2人の不審者に襲われそうになって慌てて逃げたと言う話を聞かされた。
とんでもないやつがいたものだ、純粋な観光客を怯えさせるとは。そう言うやつのせいで日本の印象が悪くなったらどうしてくれるのか、私たちはそんな奴を私たちが見つけたらただじゃ置かないと言う旨の意思を伝え、店を出た。
すでに日は傾いており燦然と輝く鋭い斜陽がアスファルトに反射し目に飛び込んでくる。まるで私たちの未来を祝福するかのように。日暮の掠れた鳴き声、子供時代遊んでいた公園の6時を告げるチャイムが流れてきそうな雰囲気であった。子供時代の、黄昏時の憧憬を見ていたような、熱く、友人(ニック)と語り合う時間はかけがえのないものであった。私たちは互いの栄光を願い、それぞれ帰路に着いた。この刹那とも呼べる線香花火のような、儚い一夏の巡り合わせを私たちは忘れないであろう…。


「いやしかし、世間は狭しとよく言ったものですな」と山田
「私たちが例の不審者だったことがバレてなくて良かった」
「こちとらいつばれるかビクビクしてましたぜ」
「さて、二次会と行くか」
私たちは日の暮れた街へと歩み出した。

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