大学生11

とある日、怪しい水を売る大学生とマフィアのような屈強な男数人、堕落した大学生2人という謎めいた集会がとあるアパートの一室で行われていた。

男に差し出された珈琲を訝しんで睨んでいると、
「大丈夫、何も入ってないよ、インスタントのやつだし」
と言って男が珈琲を飲みだしたので、
何も入ってないと思い、つられた私はそれを飲んだ。
いや、飲むなよ!という声が出てくるかもしれないが、この場の雰囲気は、さっきとは、うって変わって、のほほんとしている、男からは少しの戦意も感じなく、ただの友達のように、私たちに、接してくるのだ。その空気感に押された愚鈍な私は、珈琲を躊躇なく飲んでしまったのだ。ただ、山田だけはおやつを取られ、怒りに満ちた子犬のようにムカムカしながら相手の動向を探っている。
「お前は人を騙していくら稼いだんだ!!」
と山田は言った。
「数万円ってとこかな」
「なんでそんなことをしたんだ!!」
「お金がなくってね」男は舌を出してひょうきんに言った。
「お前の血は何色だー!!」と頭髪上指し目眥尽く裂けんばかりに、ぷりぷりしている山田を、屈強な男たちが押さえつける
「まずなんで私たちの手錠を外したんですか?」怒る山田を遮るように私は言った。
「僕は、君達に感謝しているからだよ、それに今はボディーガードもいるしね」男は莞爾として笑いながら言った。
「なぜです?」
「君達は彩りのない俺の鬱蒼とした生活に、落雷のように現れ、私に悪戯をし続けた、最初は俺も怒り心頭であったが、日が経つにつれて悪戯がむしろ面白くなってね」
「はぁ」
「きっと、君達は俺が怪しい水を売っていると思っていると思うが、これは俺の実家の裏山の湧き水だよ、とても新鮮でそこらのミネラルウォーターよりも美味しいんだ、よかったら、タダで一本あげるよ」
と男は言う。
「嘘をつくな!じゃあこのマフィアのような男たちはなんだよ!」屈強な男に抑えられた山田はぷりぷり怒っている
「この方達はこのアパートの一室に住む外国人留学生だよ、君たちを捕まえるのに備えて買収したんだ、いやしかし、数日に渡るこの男たちの人件費でせっかく稼いだ泡銭も水泡に帰してしまった」
相変わらず男は笑っている。どうやら複数人での犯行ではなく、首謀者はこの男1人でマフィアもとい、外国人留学生は水の件に関しては無関係なようだった。
「なんかすいませんでした」
男の寂しげな語りに私はつい謝ってしまった。
「でも詐欺まがいの料金で水を売っていたのは事実だろ!」と山田
「いやーお金に目が眩んでね、すまない
だがこの水の美味しさは本物だよ、その証拠に一回もクレームはきてないんだ確かに少し高く売りすぎたけどね」
「宣伝に葵井さんの写真を使ったことは?」
「葵井さん?」
私と男は口を揃えて聞き返した。

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