大学生 4

思えば大学の入学式。桜が狂ったように咲き誇り。狂ったような面白くない上辺だけの会話がそこら中で行われていた、
4月こそが地獄の始まりだったという他ない。
出会ってしまったのだ。おみくじが言うところの「待ち人」候補に。

私は入学式、そこら中で新しい出会いに花を咲かせる新入生を尻目に足早にキャンパスを
闊歩していた。
私はそのような楽しげな会話に馴染めそうにないのだ、独り、キャンパスに入り、階段を登った先の踊り場で、単語帳片手に、突っ立っている変人と一瞬、目があったが、生物の本能からなのか、脳みそが
”関わり合いになるな“ と言う旨の指令を出してきたので、私は全身全霊で従った。
私はここへくる途中の電車の中でスーツ姿のいかにも大学の入学式へ行くという風貌の若い男が、単語帳片手に周りをキョロキョロと見ていたことを思い出した。
こいつだったのか!
そんなことを考えていると、あろうことかそいつは私に話しかけてきた。

「いやしかし、君、世の中にたえて桜のなかりせば春のこころはのどけからましとは思わないか?全くのどかな東風がそよぐ春だと言うのに新入生は騒々しいな」

「ちょっとよく分かりかねます」

これが最初の会話だった。
そこからはあっちが一方的に話しかけてきたのを受け流し、逃げるタイミングをひたすら伺っていたのを覚えている。
あらかた
世の新入生は浪人生に対する意識が低い。
新入生が入学式へ向かう電車やバスの中にも、新浪人生がいると言うのに、敬意はないのか、などとよくわからないことを宣っていた。
どうやら彼は一浪して世の厳しさを知ったらしい、だからこそ、世の浪人生に畏敬の念を持って、電車に乗る時は、単語帳を欠かさず  持っていき、浪人生に敬意を示すという。
これが山田と私の出会いであった。
この出会いの後、私たちは、仲良く凋落の一途を辿ることとなる。

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