大学生15

水野は荒い呼吸を整えながら語り始めた。
「いろいろあってサークルから追い出されそうなんだ」
「あなたサークル長でしょ?
なぜサークル長が追い出されるんですか?」と山田。
「サークル長とは名ばかりでサークルに顔を出さずに遊び呆けていたんだ。」
「それで追い出されそうに?」
「ああ」
「自業自得じゃないですか帰ってください」
「冷たいな山田は、一応数奇な運命で出会った友人じゃないかここは一つ助けてやるのはどうだ?」と私は言った。
「あなたにしては珍しく正論ですね」
「私はいつも正しいぞ」
「本当にありがとう!!」
と水野は泣きながらお礼を言ってきた。
「早速だがついてきてくれないか?」
さっきの涙が嘘のようにあっけらかんとした物言いで水野は言った。流石の詐欺師っぷりである。

私たちは言われるがまま猛暑のキャンパスを横切り颯の如く落語サークルの扉を開けた。

「連れてきたぞ!」と水野が声高らかに叫んだ。
落語サークルの面々がいっせいに顔をこっちに向ける。
なぜか皆驚いたような表情を見せた。
「本当に連れてきたのか」と笑いながら答えたのは落語サークルの副サークル長であった。
蛍光黄色短髪でピアスは眉毛耳唇鼻合計10以上は空いている。
くっきりとした目をしていてメイクでクマを描いているのか本当にクマがあるのかわからないほど青白く不健康そうな顔をしている。
ボロボロのジーンズに昔のブカブカのバンドTを見事に着こなしていて、しろく細い腕には四つ足の妖怪のような刺青が入っている。

「ああ連れてきたさ、新しいサークル仲間を」
「はぁ?」と私と山田は口にした。
「そんなの聞いてないです。助けてくれとは言われましたけど僕は落語サークルに入るつもりはありません」と山田
「どういうことですか?」私も山田に続く「どうやら話もまとまってないみたいだね、これで決まりだ。お前はサークルから出ていけ!」と副サークル長
「お前たちおれに命を授けたんじゃないのか?」
「そんな約束してません」と私は言った。
「お前は仮初のサークル長だ、サークルにろくに顔を出さないくせに、潔く出ていくんだな」
「何が仮初だ!テニスボールみたいな頭しやがってお前の腕の入れ墨、シールだってこと知ってるんだからな!」
「なんだと!」と顔を紅潮させた副サークル長が襲いかかる。

「湯浅、水野!面白いじゃん」喧騒を引き裂いて言い出したのは奥に座って静観していた女性であった。一言で2人を制してしまった。副サークル長の名前は湯浅というらしい。

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