大学生 3

境内を歩いていると、何やら外国人が騒いでいる、おおよそのところ観光だろう。
日本の観光産業化にも呆れたものだ。地元の神社という小さな聖域に立ち入る穢れた魂を持ったものは2人だけでいい。
その外国人は数人のグループでお賽銭箱に座って写真を撮っている。
さらには神社の所謂「ガラガラ」にぶら下がって遊んでいるではないか。
いくら天使退学処分済みの我々でも看過できない出来事であった。毒を持って毒を制すというが、今まさに
オーバーツリーズムの権化のような毒
VS毒〜留年の危機、競馬で負け一文なしのクズ達を添えて〜
というなんとも魅力的な国際試合の火蓋は切って落とされたのである。

「おこんばんは」挨拶をして近づく、それから私たちは外国人に向かって日本人らしく気品に満ち溢れたような、優しい注意を促した。
外国人は顔を真っ赤にして、何かを話している。笑って動画を撮っているものもいた。
外国人の体格は総じて私たちの二回り以上は大きかった。
どうやら、外国人観光客は、素晴らしく気品に満ち溢れた対応をした私たちに向かって英語で何かを捲し立てているらしい。英語が少しできる私は直感した。
「ジャパニーズモンキーゲラーリヒア!」と言われていると、
許すまじ、大日本帝国民の意地を見せつけてやる、、。

私たちは目を見合わせると一目散に逃亡した。あくまで戦略的撤退である。

私たちは近くの出店で有金をはたいて天狗のお面を買い、再び外国人観光客の目の前に姿を現した。そして清く尊い大和魂をまざまざと見せつけてやったのだ。

詳細を話すと、静かな夕闇の中、突如現れた二匹の妖怪大天狗は、「悪霊退散」と唱えながら木の棒を振り回して、外国人を追いかけ回したのだ。どっちが悪霊か分かったものではないが、結果、神社から追い出すことに成功した。
異国の地で、元天使改め、二匹の
ジャパニーズ妖怪に追いかけ回される恐怖体験をした外国人観光客の心境を考えると申し訳ないほど笑いが止まらない。

神仏の怒りを勝手に、顕現することで、日本の妖怪伝説に名を連ね、日本の誇りをみごとに守り抜いた二匹の妖怪は、満足気に、家路についた。

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