大学生10

私たちは、正義の味方ではない。
つまり、真っ当な、正面からの戦いなど、断固として拒否するような男たちなのである。
そんな奴らが、悪と対峙する時、やることは決まっている、

【詐欺師!!】と書かれた手紙数十枚と数種類の虫(ゴキブリやバッタなど)をポストに詰め込み、ポスターに書いてあった電話番号にこれでもかと無言電話を決め込んだのだ。現代社会において、このようなことをすると、否応なく、罰せられるが、相手は、反社に片足を突っ込んだ大学生である。
慈悲などいらない。

詐欺師の部屋の郵便受けに、虫を詰め込んでいた時のことである、突然、屈強なマフィアのような風貌の男達が飛び出してきた。

まさに、龍虎相搏つという様相であった。
唯ならぬ緊張感が現場に走る。まさに決戦の火蓋が切られんとしていた。私達の正義が試される時が来たのだ。他人から騙し取ったお金で散々、逸楽の限りを貪ったのだ。
盛者必衰の理を私達がデリバリーしてやる。


私たちは目を見合わせると、一目散に逃亡した。あくまで戦略的撤退である。

幸いお面を被っていたので、正体がバレることはなかったが、私たちは、暗闇に乗じて、
光る竹なむ一筋ありそうな竹藪に滑り込んで息を潜めた。
彼らは血眼でかぐや姫(私たち)を探している。
だがこんなことで折れるような私たちではない、私たちは作戦を続行した。
このような一方的な泥試合は数日に及んだ。

ある日、同じように、郵便受けに色とりどりの虫を詰め込んでいたら、再び、屈強な男たちが現れた。遂に、私たちは抵抗虚しく、瞬く間に捕縛されてしまった。
「諸悪の根源め!!貴様らのせいで泣いている純然たる乙女がいるというのに!!」
と山田は吠えている

私たちはあれよあれよと部屋に引き摺り込まれ、並んで椅子に座らされ、手錠をされた。
山田と面談した例の男が部屋の奥から出てきた。
「お前らの目的はなんだ」
山田と面会をした男が言った。
「お前らを懲らしめる為だ!!」と山田
「我らはお前らを許さない!!」と私も続いた。
「ハッハッハ」男は笑った。
「何がおかしいんだ」と山田は目を見開いて怒っている。
「いやー、ここ数日、なかなかに愉快な経験をさせてもらったよ」と言った男は、何を思ったのか私たちの手錠を解き、私たちに珈琲を淹れ、差し出した。
「なんのつもりだ」山田は、男を睨みながら、子犬のように必死に、威嚇している。
男の行動に、私も困惑した。

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