壁に張り手

模試の出来悪かったって親に言った。
「どこに就職するか考えとけよ」
「何で今考えなかんの?」とキレ気味に言ったら
「当たり前だろ」と言われた。

吐きそうな気分で夕食をかき込んだ、
こう言う気分の時決まって喉の奥がいつもより開いて吐く前の準備運動みたいになる。
脳みそがぐわんぐわんなってジェットコースターに乗ったみたいになる。
車酔いの最中みたいになる。
親が物に当たるなと小さい頃に教えてくれたから物には当たらない主義だが、流石に壁に張り手をした。
隣の家に面している壁だからめっちゃ硬い
手が痺れた。
昔、妹が母と喧嘩した勢いでリビングと廊下を繋ぐ扉を蹴って閉めた瞬間、扉の内側のガラス張りの部分が砕け散ったのを思い出した。
それを見た父は激怒して壁を殴った。
その壁には今でも穴が空いている。

どこに就職するか聞かれた時、北野映画の「首」をネトフリで見てる最中だった。
清水宗治が薄青く煌めく水面に浮かぶ小舟の上で切腹しようとしているところを羽柴秀吉が「さっさと死ねよ」と茶化していた。
恐怖を感じるほど綺麗な風景をバックに風がそよいでいる。
遂に腹を切った。介錯が遅く、顔が青白くなってきた。「介錯を」と悶えながら訴える。
遅い。
「あれ?」と口に出したのを最後に呆気なく斬られた首は水に落ちた。従者が「殿!」と言って水に飛び込み首を取ろうとわちゃわちゃしている。

今日薬局の前でリアルゴールド飲んで少し帰りが遅くなった。
「遊んどったんか?」と言われた。
絶対勉強してないと思われてる。
勉強しても伸びてないだけなのがめっちゃ悔しい。

お金払って貰ってるから何言われても言い返せない。

将来子供ができたら絶対私立中学に行かせて浪人回避させようとかねてから考えていたけど、その覚悟がさらに固まった。その為には大学行っていいところに就職してたくさん稼がないといけない。長い道のりである。

私立中学に通わせていい大学へ合格してもらおう。
そしていいところに就職してもらって、結婚式で感謝の手紙を読んでもらって孫の顔を見よう。

ここまで妄想したところで感動して自習室で少し泣きそうになったことを思い出した。

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