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爽やかな朝

感情類別:「驚き」「焦り」「おかしい」
感情影響度:良好
シチュエーション:「そんなバカな…」


  私は朝が苦手だ。
幼い頃から「夜」というシチュエーションに未知なる魅力を感じていた。自分が寝ている間も社会は動き続けている。まるで世界がもう1つ存在するようなワクワク感。夜に隠れて漫画を読んだり、ゲームをするのが好きだった。

夜型の人間も社会人となれば適材適所で活躍の場がきちんと用意されている。とはいえ、当時の私は学生の身。夜に講義は無いし電車も動かない。当然、夜更かし明けの朝が辛いのは自明の理だった。

元々、心身共にストレス耐性が低く、満員電車や渋滞による遅延は即座に「焦り」に変換され体調に異常をきたした。だが、朝に弱いからといって遅刻や欠席が免除されるわけではない。

教授達の中にはそういった講義への姿勢を評価に加味し、採点に反映する人もいる。グロッキーな状態で、明らかに1限に間に合わない時間に家を出る私を両親は問題視した。とある日、私は両親にこっぴどく叱られ、さすがに生活を見直す決心をした。


「明日こそは!」



朝。
爽やかな朝である。

窓から陽射しが差し込み、涼しい風がレースのカーテンを揺らす。すずめがヒサシでさえずっている。理想的な朝だ。

私は普段通りYシャツを着て、ネクタイを締め、スラックスのジッパーを引き上げた。心做しかシャツのヒンヤリとした肌触りが火照った身体に心地よい。

自室を出てリビングに降りると母が朝食を用意してくれていた。朝ごはんを食べるなんていつ以来だろうか。なんて完璧な朝なんだ!普段はお腹が痛くなるので避けていた牛乳も一気に飲み干す。

「気合い充分だ!」 
 

何から何まで完璧な朝。
靴ベラを使って玄関で革靴を履く。

「行ってきまーす!」


見送る母に大きく挨拶した。扉を出ると朗らかな日和だった。時計を見ると時間はたっぷりとある。大学までバスと電車を乗り継ぎ、片道2時間弱。食堂でコーヒーを楽しむ余裕さえある。私は順風満帆の1歩を踏み出した。


その時、突然衝撃が走った。

「地震!?」

ドスン!ドスン!
何度も立て続けに走る振動にたまらずしゃがみ込む。平衡感覚が不鮮明になり、まるで仰向けで倒れているような…。


ハッとして目を見開いた。
般若のような表情で父が見下ろしている…。目が合うと父は何も言わず部屋を出ていった。恐る恐る時計を見る。時刻は正午を過ぎていた…。


歴史的\(^o^)/大遅刻!!


余談ではあるが、その後3日ほど両親はまともに口をきいてくれなかった( ˊᵕˋ ;)💦‬

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