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3000円の靴下の話

大学時代1年の半分ぐらいアディダスの紫ジャージで過ごしていた。
シンプルに服にかけるお金がなかったから。あと着まくってるうちに◯◯ちゃんといえば紫ジャージだよね!って言われるようになってなんか悪くないなって。
キラキラした女子大や私立大だったら多分貧乏過ぎて劣等感感じていたと思う。

大学の近くに月19000円のオンボロアパートが2棟連なって建っていて全国から集まった貧乏すぎる学部生はだいたいみんなそこに住んでいた。

右も左も上も下も全員binbooo\( ˆoˆ )/

貧乏でおもしろいヤツらがたくさんいたから全然辛くはなかった。
大家さんもほとんど慈善活動として貸して下さっていたと思う。 
しょっちゅう米や野菜ダンボール何個ぶんもくれていたし。

よく食材持ち寄って鍋やったり焼き芋したりしたなあ。
実習が始まると大体誰かしら泣いていた。
その頃の病院実習って平気で人格否定されたり肩パンされたりしていたから。
2週間1クールの実習が始まるとバイトに入る時間がなくてさらに大貧乏だった。

3000円。
その頃の3000円は私にとって1週間の食費。もし落としたら本当に死ぬ。
そんな状況でたまーに本当にたまに買ってたのがアンティパストの靴下だった。
いや紫ジャージが靴下だけおしゃれしてどうするん。
それは米とか卵とか買うお金じゃん。
本当に謎なお金の遣い方だったんだけど私にとっては必要なことだった。
貧乏な学生たちが集うコミュニティがあったから自分の境遇をすごく辛いとは思わなかったけどそれでもおしゃれがしたかった。
3000円の靴下は履いてなかった。もったいなさすぎてタグも切れなかった。

アンティパストの靴下のデザインは昔おばあちゃんと夜更かしして眺めた植物図鑑だったり一緒に観察したふくふくしたすずめみたいで懐かしくてあったかかった。 
しんどい時に袋から出して眺めたり枕元に置いて寝たりした。
その時の私にとってそれは靴下っていう足を覆う必需品でもおしゃれのためのアイテムでもなくて大事な宝物だった。
一昨日たまたまアンティパストの靴下を見つけて思い出した昔の話。 
その頃の私は(用途としてはかなりおかしいけど)買ったものの一つひとつを大事に大事に可愛がってたな。
今はどうかなあ。
あの頃の靴下みたいなキラキラした物だけを両手に持てるぶんだけ大切にしていきたいな。


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