「退職の件.docx」という夢小説が無事完結いたしました。 全編根気強くお付き合いいただいた皆さま、たまたま流れてきてうっかりタップしてくださった皆さま、ありがとうございました。 なんか全体的にあほだなと思って読んでいただけたら幸いです。 心からの感謝とともに、あなたがしあわせな社会人であることをお祈りいたします。
そうしてあっという間に、持ってきた荷物をまた無理やり鞄に詰める夜がやって来た。 遊びに来たわけでもないのに、高森は家族に、長岡に、焼き鳥に、その他の友達に、なぜかありったけお土産を買ってあった。鞄は来たときよりもはるかにギチギチだ。 ちょっぴりおセンチになっていたのか、焦燥感の中うまく決めきれず、本気の瓶詰めとか地ビールとかがちらほら入っている。結局自分で食べそうだ。もちろん会社のあいつらにも買った。 それらを力業でまとめ、思い入れのないホテルの部屋から出る朝。す
そう、すでに引き継ぎは終わっている。 覚悟を決め、高森は自分でもびっくりするくらい最短の日にちを答えた。息を深く吐き出して、もう一段階深く、なんでもいいやと強くつよく思い直した。早ければ早いほどあなたの手柄に…なるの?なるのですか?よく理屈がわからないけど、それでいいよ… とは返信には書いてはいないけれども、もはやあいつらにこの出張先のお菓子を配れるのかどうかというくらい急な最終出勤日が決まった。そこから実際の退職日までは、寛大な弊社ちゃんがなんとあの貴重な有給を充
忙しく過ごした出張の終盤、上司からまた高森に連絡が来ていた。見ないわけにいかず、いやいやながら目を通す。 「こちらに戻ってきたら退職になるが、最終出勤日を教えてほしい」とのことだった。 ん?それをいつにするか話し合うのが、上司(you)と(and)当事者(me)では?と高森には感じられるが、彼の場合、本部の人に言われたことを原文ママで高森にぶつけているのだろう。 正解に近いかどうかはさておき、そこに自分というフィルターを介すからこそ、われわれ会社員は賃金が発生して
デレデレの母にはいぬと完璧ないぬセットを預け、とりあえず不足のないように鞄に自分の荷物を詰め、あいまいな気分のまま高森は出発した。出張から帰ってきたら、みんなに挨拶をして、お菓子を配って、肩を抱き合い、涙をぬぐい、退職日を待とう。 出張中というのは業務が限られる。おそらくとんでもないミスをすることもないだろう。たぶんだ。スポーツのように体を動かしているので、色々なことを考えずに済む、というか、立ちっぱなしの走りまくりで足が痛い。ふくらはぎも痛いし、かかとも痛い。その痛み
行ってみたいところがあり、しかしちょっと予算オーバーだったので、宝くじを買ってみることにした。 自分の中の約束としては、10万円以上当たったら行く。それ以下なら、行かない。よってすぐに結果の出るスクラッチくじを購入。 よくわからないまま3口買って、よくわからないまま削り、なぞの髑髏のマークなどが出、不気味すぎてこれハズレどころか逆にお金取られるんじゃね? などと思いつつ念のため判定してもらったら意外と2,000円が当たっていた。 うれしかったので、その2,0
「ありがたいご提案なんですが…こっちのボスにもそう言っていただいたんですけど、転勤でまったく気がついていないうちに両親の仕事にも影響が出たり、母も体調崩したりしてしまっていたみたいで...転勤直後で気を遣って黙っていてくれていたみたいなんですが、自分が思うにかなりぎりぎりの状態で、本当に驚きまして」 いきなり自然にボスにもそう言っていただいたんですけどが出てしまった。が、気にせずゆっくりと丁寧に高森は続ける。 「こうなる前にもっと早くご相談できたら…お言葉に甘えていたか
とはいえ万が一、このまま上司の謎の構想通りにことが進んでしまったとして、高森を上司で反転させたところの本部だって実は分かっている。高森がかんしゃくを起こして突然いなくなったりするわけがないことを。だから組織ではチェスのように誰をどこに配備するかが重要だ。 ノリの良いうそつきが目の前にいるのも高森とかがふつうに困るわけだが、言ってしまえばこれは社内だけのことである。部下に非常にやさしいけれど会社の方針と折り合いがつかず、つらくなって逃げてしまう人間が責任者になるなんてこと
出張は来週に迫っていた。 この間、上司と高森との間の正式な打ち合わせはことごとく潰え、それでいて日々のやりとりで、退職の意向や退職時期は固まりつつあった。 打ち合わせができていないとは言えないくらい、会話自体はしている。しているものの、通常とは逆で、なぜか話せば話すほど内容が軽くなっているような予感もある。 つまりどういう効力のある約束なのか不明である。高森は辞める流れを自ら作らなければならない。上司が微妙に作らないからだ。 ふわっとさせておくと危ない。高森は
高森はスマートに働けない日々と格闘し、ぐぐっとこらえながら日々を過ごしていた。想像となんかちがう。 最後くらいは静かにと思っているのに、これまで一度も言われたこともないようなことを言われ、これまで何百回も来ただめな流れなのに止められず、あげくの果てに自分がでかめのミスをしている。店長にどんなに異次元の謎説教をされようと、最後のが一番キく。 この数ヵ月、別人のようになってしまった自分の精神とどうにか仲良くなろうとした。友達になろうとしたこともないような相手に、とりあえず
一度更新が途絶えてから記憶をなくしてしまったため、同じようなことを何度も言っていたら本当にすみません。 よほど大事なことなんだな、もしくは元教員なのかなぐらいに思っていてください。 あと10話もいかないものと思われますので、途中まで読んでしまわれた方はどうぞよろしくお願いします。おやすみなさい。
なんでも早めに白状してしまったほうがよい。というのは、健全なサラリーマンの教科書の1ページ目に載っている基本的な考え方だ。 取引先や顧客を相手にミスをすれば契約違反ということにもなりかねず、単に取引そのものが狭まるだけでなく、法的にも責任を問われる可能性がなくはない。基本ないけど、行き着く先としては自覚をしていなければならない。やらかしすぎたら法のゾーンに突入するということを。 社内にフィールドを移しても、例えば死に物狂いで毎日残業したとして、手放しで褒められるかと
大筋の話が決まっているが、どこか曖昧な日々である。 高森は上司より退職というセレモニーを理解しているようだ。退職だけじゃない。社内の組織図やフロー、オペレーションや裁量、歴史的な沿革、当然、社内外のきまり、必要書類や関係法令など、やはり間接部門のあれやこれやについては強い。 異動当初は、自分より上の立場の人が自分より社内を理解していないということがよくわからなかった。それまでずっと担当部署にいたからだ。上長には疑問のすべてをストレートに質問してきたし、回答を得られな
今、一兵卒として素直にただ辞めようとしている。 こんなに長いこと本部にいたのだからとか、偉い人にはわかってほしいとか、ひいては損をしたくないとか、仲のよい同期やその人の考えた一軍の人びとにだけは水面下で根回ししておくとかの裏技を使わない。 いや言い方…、そんなものはただの常識で、裏技でもなんでもなくただの礼儀だ、部活とかやったことないんですか?この根暗、という人ももちろんいるだろう。高森はその理屈を勇気をもって採用しないことにした。そういう前例を自分は作らない。
高森は、話し合いのイメージだとたぶんその頃には辞めていてもおかしくないはずなのだが、不思議なことに翌月末頃に退職ではなく出張をすることになった。 確かに、打ち合わせの中で退職の日付ははっきりとは決まっていなかったが、順調に引き継ぎなどを終え、てっきりその頃には有給消化かウイニングラン状態かなと思っていた。しかし出張に行くらしい。それで万事いいらしい。いやいや本部は?このタイムライン、彼らは知っているのか? 「じゃあ、たぶん他からももう人出せないから、ほぼ確実に行っても
これまでにささいなつぶやきをいくつか投稿していましたが、自分が見づらいので取り下げました。 今後つぶやく場合は、「つぶやき」と題してしっかりつぶやく予定です。が、相変わらず特にたいしたことは言いません。 以前つぶやいていたサムネ用の絵もなんかもういいかなとなってきました。あの絵にすごく期待している人もいないとは思いますが。名前とかもすぐ変えるし。 それではおやすみなさい。