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ICM下におけるナッシュ均衡の限界

はじめに

本記事はWizard blogの記翻訳事となっています。
より詳しく知りたい方は以下のリンクからご確認ください。(原文は全文英語です)

導入

トーナメントにおいてIndependent Chip Model(ICM)は重要な役割を果たしている。
しかし、時折ICM下での理論や戦略は直感や経験則に反する。
この記事では、$EV下でのGTOの限界について探索する。

記事の内容

  1. Chip EVと$EVのGTOがどう異なるか?

  2. なぜ最低限のEVが担保されないのか?

  3. なぜGTO戦略は相手のミスに対してEVを放出するのか?

  4. なぜ戦略の選択肢を増やすとEVが下がりうるのか?


非ゼロ和ゲームにおけるナッシュ均衡

1 vs 1のゼロ和ゲームにおけるGTOが保証するもの


  • 最低限のEV

  • 相手のミスは自分の利益にしかならない

  • 選択肢を増やすことで自身のEVが停滞または増加する

  • 相手は自分をより悪いナッシュ均衡へ陥れることができない


これらはゼロ和ゲームのGTOの特徴として一般によく知られている。
トーナメントはプライズが固定されているため、一見ゼロ和ゲームに見えるが、二人のプレーヤーのスタックが変動した際にその他のプレーヤーの$EVも変動する。

トーナメントでは、ポットを争う二人のプレーヤーの収支の合計がゼロにならない。EVがフィールドに流出する可能性があるのだ。

ゼロ和ゲームでなくなると、これらの保証は破綻する。


❌最低限のEV
❌相手のミスは自分の利益にしかならない
❌選択肢を増やすことで自身のEVが停滞または増加する
❌相手は自分をより悪いナッシュ均衡へ陥れることができない


非ゼロ和ゲームにおいても、GTO戦略は定義され、よく機能する。
相手はGTO戦略から追加の利益を上げることができない。
しかし、ゼロ和ゲームで保証されていたものは、保証されなくなる。

EV流出

トーナメントであなたが、他のプレーヤーを飛ばしたと仮定しよう。すると、あなたを含む全てのプレーヤーの順位が一つ上昇する。
そして、全プレーヤーの獲得賞金期待値が上がる。
あなたが得た利益の一部がフィールド全体にばら撒かれたのだ。
ここで言う利益とは、トーナメントのICMモデルで算出される獲得賞金期待値、すなわち$EVだ。

勿論、逆の現象も起こり得る。
自身がフィールド全体から利益を吸い上げるか、フィールド全体に利益をばら撒くか、どちらかだ。

あなたがポットを争ってスタックが均一になった時、多くの場合ではフィールド全体から利益を巻き上げられる。

例1: サテライトトーナメントのバブル

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