ベルの秘密…

今回は伊丹まで飛行機で、そこからリムジンバスやったかぃちっとひんだれたな〜!奈良は初めてやかい、鹿でん見に行こかな。そう言や〜、ビヤン先輩が奈良に着いたらベルに連絡しろって言うてたなぁ〜。それにしてん普通後輩やったら先輩迎えに来るやろ〜?でも、ビヤン先輩ならこんげこつ気にせんよなぁ〜!まぁ…仕方ねえ、連絡するか!
『チュイーン、チュイーン、チュイーン』
ん?これって…⁈振り返ると、そこにはチャラえ感じんの変な奴がおった。
「おまえ…⁈まさか…?」
「そうっす。俺がベルっす!」
なんぢゃ⁈こん礼儀知らずんチャラ男はよ〜⁈
「おまえ…、それが先輩に対する態度…⁈ぐぬぬ…まぁいいわ、わざわざ迎えに来てくれたんか?」
「いや、偶然っす!」
「ハハハハハッ、偶然かぁ…。」
「ちなみに俺んこと知っちょる?」
「あ〜太陽のサンでしたっけ?」
「そうそう、太陽んごつ眩しい男っていや俺んこつ…って俺はヒナタや?おいおいおい…なめちょるんか?」
「分かってますよ〜!冗談っすから、ヒナタパイセン!」
なんなんやコイツは…本部なんか間違うちょらんか?こげん奴から学ぶとこはねえやろ…⁉いかんいかん、研修に集中せんと!とりあえず、ここを守るにはこん街について知ることも大事やな⁈俺は先行きに不安を感じながらも、奈良の名所を案内してもらうことにした。

まずは、奈良の大仏さまで知られる東大寺。
「大仏さまもさることながら、大仏殿ん眺めも壮観じゃ〜。」
「あざっす!東大寺は奈良時代に聖武天皇が国を守るために建てたお寺なんすよ。ちなみに、大仏殿は世界最大級の木造建造物っす!」
「おっ、おう…。」
次は、1300年以上の歴史を持つ法隆寺。
「いやぁ〜歴史を感じるなぁ〜!タイムスリップしたみたいな気分やわ〜!」
「あざっす!法隆寺は飛鳥時代に聖徳太子が建てたっすけど、世界最古の木造建築っす。国宝、重要文化財国宝に指定されてるものも多くて、世界的にも価値が認められてるんっすよ。」
「ほっ、ほぉ〜!」
それから、今度は知る人ぞ知る鹿苑。
「いやぁ〜鹿ちゃん可愛いよなぁ〜!できりゃ、子鹿公開んときに来たかったわぁ〜!」
「あざっす!鹿苑はもともとケガや病気のシカ、妊娠したシカ、生まれたばかりの子ジカが保護されていて、あと、畑を荒らしたりした「悪いシカ」も収容してる施設っす。可愛いからって、まさか触ってませんよね?あくまで野生動物なので適度な距離感は大事っすよ!」
「おいっ、おまえ何者やっちゃ⁈」
「俺っすか?俺は奈良をこよなく愛してるだけっすよ!ハハッ!」
なんか掴めんやつやっちゃけど、こいつ!まぁ、奈良んことをこれだけ知っちょるってことはヒーローとしての自覚が少しはあるってことやがね…⁈
(キャー助けて〜!)
「おい、ベル行くぞ!」
ん⁈キョロキョロ…、いない⁈ はやっ⁈もう行ったんか?俺は急いで声の聞こえる方に向かった。

広場に着くと、そこでは凶暴化した鹿が暴れ回っていた。
「エッ?可愛い鹿ちゃんが〜⁈ どうしよ〜鹿ちゃんとは戦えんやろ〜⁈」
俺がオロオロしていたときだった。
(シュン、シュン、シュン、シュン…)
「ん?なになになに?」
あっという間に、目の前の敵はもとの可愛い鹿ちゃんに戻っていったのだ。
「何が起こったと〜⁈」
俺が呆然と立ちつくしていると、またチャラチャラした感じでベルが現れた。
「うぃっす!ヒナタパイセン、どうしたんすか?」
「どうしたんすか?じゃねえやろ?こんげときに何やっちょったんや?」
俺はイライラを抑えながら言った。
「パイセンがオロオロしてばかりで何もしないから、俺がチョチョイとやっちゃったっす〜。草。」
「おいっ、おまえ最後ん草ってなんや?俺がヘナチョコって言いてぇんか?」
「まぁまぁまぁまぁ、落ち着いてくださいよパイセン!とりま、俺の家案内するんで!」
俺はベルのなめた態度に怒り心頭だったが、何とか気にしてない振りをした。
「パイセン、分かりやすいっすね…。」
その後、ベルに案内されて着いた家は想像してたのとは違って、一人暮らし用の高級マンションだった。
「おまえ一人暮らしか?」
「はい、俺家族いないんで!」
「…。」
「パイセン、優しいっすね。でも、大丈夫っす。俺こう見えて幸せなんで!」
「やな!逆にごめん。そう言や、おまえさっきん戦いで…なんであんげ素早う動けたと?
「そりゃ、俺世界陸上大会で優勝してますから!」
「じゃっ、じゃあ、敵はどんげして倒したん?」
「あっあぁ〜、格闘技でも世界チャンピオンっすから!」
「クソッ、雲ん上過ぎるやろっ⁈」

あれからと言うもの、俺は頭の中が混乱して研修に集中できずにいる…。だいてえ、訓練でどんげかなるレベルを超えすぎやろ⁈チャレえくせにちゃんとしちょるし…。ちょいちょい姿消すくせに見せ場は全部持ってくし…アホらし…。
「ヒナタパイセン!今からちょっとだけ出てくるんで、適当にやっててくださ〜い!」
「おいおいおいおい、お前さ〜先輩置いてちょいちょいどっか行くよなぁ〜⁈ せっかく弟子入りしてやっちょるのに、失礼すぎるやろ?いったいどこ行っちょるわけ?」
「野暮用っすよ!」
「…。」
あやしい…あいつ絶対なんか隠しちょるよなぁ〜!よっし!あいつん秘密を暴いちゃろ!
俺はこっそりヤツの後をつけることにした。
ベルんやつ、俺に付けられちょるなて夢にも思うちょらんやろ〜な!ウシシシシッ。
俺がコソコソ付けていると、ベルは黒塗りのいかにも高級そうな車の前で立ち止まった。
あいつマジでやばい奴と付き合うちょるっちゃないと〜?ンンッ⁈ あん人どっかで見たことあるなぁ〜⁈ 何やったっけ〜?まぁ、あん外見からしてやばい奴なんは確定っぽいけど…、あとでビヤン先輩にでも相談してみるか…。
『パシャ。』
ととりあえず、写真撮っちょこ!いざとなったら、これであいつからご飯でんおごってもらったりして!イシシシシッ。
『コケッ、コケーッ』
「こちらヒナタ!今取り込み中で…ハッ、すみません!ただちに向かいます!」

イラスト:ciel

ベルおらんと現場行くとに時間がかかるなぁ…。
超特急で向かうと、そこでは「ならまち」にふさわしくないイチゴと柿怪獣が派手に暴れ回っていた。
「シュン、シュン、シュン、シュン!」
「おいおいおいおいっまたかよ…⁈ベルどこにいるんだよ⁈」
また、ヤツは目にも留まらぬ速さで敵を片っ端からやっつけやがった。
そのおかげで俺は楽ちん!観光する時間も増えてラッキー!んなわけあるかっ!毎回これやとさすがにちゃんと話し合った方がよさそうやな!
『チュイーン、チュイーン、チュイーン』
「ベルちゃん、めっけ!」
「あっ、お疲れっす!偶然っすね!」
「偶然じゃねえやろ!俺は今回ん研修は辞退することにするわ!後輩やら関係ねえ、お前から色々教えて貰いてぇけど、これじゃ何の意味もねえやろ⁈」
「…、さーせん。」
「エッ?いいと〜⁈それでいいと?本部からこっぴどく叱られるよ〜?」
「パイセン、やっぱいい人っすね!今度会うときは色々話しましょ!あと、最後に歯を食いしばってもらっていいっすか?」
「歯…⁈」
『シュッ』
「ギャ〜!イタヒ…。」

『コケッ、コケーッ』
「ハヒッ、コチラヒナタ!」
「ヒナタ君、これで前半の研修が終わりじゃよ!ご苦労様。」
「ハヒッ!」
「ところでヒナタ君、ベル君は君の後輩だったよね?」
「そうれす…!」
「後輩に殴られるってどういうことだろうね…?」
「不徳の致しゅところれす…。」
「バッカも〜ん!」
チーン。この後、俺が何枚もの反省文を書かされたことは言うまでもない…。だけど、アイツはアイツなりに何かと戦ってるように見えた…気がした。だから、今回は本部への報告はやめておこう…。
『コケッ、コケーッ。』 
あれ?今度は誰じゃ?
「ハヒッ、コチラヒナタ!」
「おうっ、ヒナタ!」
「ビヤンパイセン…じゃなひ、ビヤンセンパヒ!」
「ハハッ、派手にやられたようじゃのぉ?」
「本部から聞いたんれすか?面目ないれす…。」
「パイセン…。俺はベルから何を学べばよかったんれしょうか?」
「ん??パイセンって⁉ある意味研修の成果出とるけど、ヒナタはベルをどう思うた?」
「ハヒッ⁈ あいつはあいつなりに何かと戦うちょるような気がひました!」
「じゃのぉ!そうじゃ思う!今回はそれで十分じゃ、また、宮崎に会いに行くけぇその時ゆっくりな!」
「ハヒィ…ありがとうございます。」
なんか情けねえ終わり方やったけんど、俺はベルを信じてぇ、そう思うた!
こうしてヒナタの研修前半戦はなんとか終えることができた。成長したかどうかは不明だが、立派なヒーローになるため、そこに敵がいる限り立ち向かうしかない!頑張れヒナタ!負けるなヒナタ!!

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