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君との思い出は二つだけ...










君と出逢ったのは高校一年生




中学を卒業して高校の初めてのクラスが一緒だった




自分は男としかいなかったし



君は女としかいなかったね










そんな君と俺が初めて話したのは遠足の時だったね




うちの学校は遠足は5月に行われていて



一年生は少し遠くのキャンプ場だった




遠足は仲を深めよー的なものだった






4月下旬




クラスのHRの時間に遠足の班決めが行われた




先生は端的な人で平等に仲良くやろうというタイプだった




男子4人、女子4人の班を5つ作り先生がランダムにそれぞれの名前のついた紙を引いていった




男1  :  俺一班だ。××さんと同じ班になりたかったなぁ〜

女1  :  えーあの男子いるんだけど〜最悪〜




そんなこと言ってたってしょうがないじゃないかと思いながらも自分も班を確認する




〇  :  俺は...三班か。えっと他のやつは...




同じところに貼られた名前をみていく




〇  :  おっ□□いるじゃん。しかも△△さんもいるし




個人的には1ヶ月にしては結構話せる人がいたほうだった




誰とでも話せる系の俺はすぐに同じ班のやつとは仲良くなっていった






遠足のバスにて



席は班ごとに固まり列ごとに男子女子と並んでいた




□  :  最悪だよ...一番前なんて...

〇  :  まぁしょうがないんじゃないか



班長のくじ引きにて俺らの班は一番前になってしまった



□  :  いいよな〜後ろのやつは先生に見られないで携帯いじれてさ

〇  :  まぁでも遠足に来てるんだから話してたりした方が楽しいんじゃないか

□  :  まぁそれもそうだな



1時間30分ほどのところのキャンプ場に到着した


ちょうどお昼時、飯盒炊爨をやることになっていた



□  :  じゃあ役割分担するか


〇  :  じゃあ俺米洗ってくるわ


△  :  じゃあ私も〜






飯盒炊爨が進んでいき彼女と初めて話した



〇  :  ねぇ


?  :  なに


彼女の名前は岩本蓮加

〇  :  美味しそうじゃない?


蓮  :  ね



最初はそんなたわいもない会話だった






その後も少しずつ会話していった



食べる時の席が隣だったり


蓮  :  ねぇ水取って


〇  :  はいよ


蓮  :  ありがと



お互いそういう系なのか最初からため口で話していた




早く食べ終わった俺たちは洗い物をしていた



〇  :  ひぇ〜焦げがすごいね〜


蓮  :  ね



皆んなが使う水道に二人で洗い物をする



蓮  :  んっ、んっ


〇  : どうした?


蓮  :  焦げが落ちない...んっ



腕まくりをして力強く頑張っている姿はとても可愛らしかった



〇  :  いいよ俺がやるから。その代わりこっちお願いしてもいい?


蓮  :  わかった...ありがと




使った道具を綺麗に洗っていないとやり直しさせられるルールがあった


先生  :  おっけー。いいよ


男2  :  よっしゃー行くぞー!


女2  :  ねぇねぇあそこ行こ!



合格するとそのキャンプ場内の遊び場に行ける


先生  :  だめ。まだ焦げ落ちてない


女1  :  先生厳しい〜...


男1  :  早く遊びいきてぇなー




蓮  :  私たちだけっぽいよ。一発合格


〇  :  みたいだね。まぁ俺たちが優秀過ぎたんだよな

蓮  :  ふふ笑そうだね



俺と会話する彼女に初めて笑顔がみえた










遠足の帰りのバス



〇  :  なにした?



帰りも同じ席で行きとは違い会話するようになってた



蓮  :  あのサンリオのところ行った


〇  :  あーあそこね。楽しかった?


蓮  :  うん。楽しかった


〇  :  そうかそうか



ただその後も感想を伝え合うだけで会話していた




途中、携帯の機種の話や好きな漫画の話などをしてた


〇  :  俺この漫画好きなんだよね


蓮  :  あっそれ蓮加も好き!


〇  :  え、まじで?!



アニメ化していない漫画アプリにしか配信されてないようなものなのに同じ好きな人がいて嬉しくてたまらなかった



その漫画の話だけで20分ぐらいは使った










帰りの1時間30分、俺はずっと蓮加と話していた



今日の遠足のこと、部活、趣味、お父さんの勤務場所など



学校に着き、駐輪場までも会話していた



〇  :  そういえば蓮加ってさ


蓮  :  ん?




〇  :  ●●と仲良いよね



蓮  :  ...んー...まぁ笑


〇  :  ん?


蓮  :  ...実はあんま好きじゃないんだよね笑


〇  :  へーそうなんだ。なんかよく喋ってるから


蓮  :  ...ちょっと愚痴言ってもいい?


〇  :  いいよ。好きなだけいいな



そうして家の方向が違くても彼女の家の方まで愚痴だったりなんだったりを話していた



一日ですごい仲良くなったと思ってた










学校ではそれぞれ違う軍団にいるから話すことは減っていった



一回だけまた遠足の日のように放課後残って愚痴だったりを言い合ってた








ただ彼女と話したのはそれが最後だった










別に仲が悪くなったわけでもない



ただ会話することがなくなっただけ




気がつけば彼女は俺からどんどん遠く離れていってる気がする








高校二年生はクラスが別だった







さらに時が過ぎ高校三年生




高校三年生ではクラスが同じになった




でも特に関わることはなかった






今ではあの思い出すら頭の片隅にもあるかないかぐらいに薄くなっていっている




〇  :  ...

蓮  :  ...



でもなぜか彼女のことが気になってしまう



〇  :  ...蓮加...


蓮  :  ん?



授業中、遠くにいて聞こえないぐらいの声量で発したはずなのになぜか振り向く蓮加



〇  :  やべっ!



俺は慌てて目を逸らした




蓮  :  ...









その後も度々目に入れてしまう



〇  :  ...蓮加




俺は多分、蓮加のことが好きなんだろうなと思った




でも告白する勇気なんて出なかった



まる二年も話してないやつがいきなり告白していい返事をもらえるとは思えない





二学期末、ほぼ年末に近づいている時期



球技大会があった



学年ごとに決められたスポーツをする



□  :  今年の球技大会バスケらしいぞ


〇  :  そうなんだ


□  :  お前バスケやってたんだろ?


〇  :  やってたけどもう二年近くやってねぇよ


□  :  なぁんで高校入って剣道部なんかにいっちゃったんだろうな〜


〇  :  悪かったな笑



それの会話を遠くで見ていた蓮加と一瞬目があった気がした



〇  :  ...


□  :  どうした〜〇〇〜そんな岩本さんの方ばっか見ちゃって〜笑



揶揄うように語尾を伸ばし言ってくる□□



〇  :  別にそんなんじゃねぇから


□  :  でも好きなんだろ?


〇  :  ...まぁ



こいつは唯一知っているやつでもある



□  :  そうだ!お前球技大会で優勝できたら付き合ってもらえよ!


〇  :  はぁ?!なにを馬鹿なことを


□  :  高校最後の球技大会だぞ。良い思い出にしないと意味ないだろって


〇  :  まぁそれはそうかもしれんが...


□  :  だろ?じゃあさっそくいってこいよ!


〇  :  お、おい。ちょっと待てよ!



□□に背中を押されて蓮加の席まで来てしまった



〇  :  お、おい!


□  :  頑張れよ、ポンポン



肩を二回叩いてどこかにいってしまった



蓮  :  ...なに


〇  :  あぁえっと...そのさ



暗黙の状態が1分ぐらい続く



〇  :  ...こ、今度の球技大会でもし優勝できたらさ...


蓮  :  ...


〇  :  ...告白受けてくれない?


蓮  :  ...いいよ


〇  :  ...ほっ...よかった。あっ別に受けるだけでいいからね。全然振っていいからね!じゃ



そのまま教室を走り去っていった






□  :  おいお前どういうことだよ?!


〇  :  うるさっ...別にいいだろ


□  :  なんでだよ!せっかく良い感じだったのに!



廊下に響き渡るぐらい大きな声を出す□□



〇  :  だってたかが球技大会優勝で恋人決められちゃうとかあっちが可哀想だろ


□  :  はぁ〜...お前ってやつは...


〇  :  俺は勇気がないんだからしょうがないだろ


□  :  ほんとだよ




蓮  :  ...



廊下といっても扉のすぐ近くで話していたため会話が丸聞こえだった











球技大会当日



なんとか試合を勝ち上がり決勝戦



□  :  おいおいやるじゃねぇか笑


〇  :  ギリギリだけどな笑


□  :  やっぱり愛に勝るものはないか笑


〇  :  うるせぇぞ笑










そして決勝戦




残り1分



〇〇のクラス、敵チーム


12-14



2点差ビハインド中




□  :  〇〇!



3ポイントエリアの外でノーマークでパスをもらう



〇  :  (これを決めなきゃ...)



俺はシュートを放った















□  :  いやー惜しかったな


〇  :  くそー...



最後の俺のシュートはリングに弾かれてしまった




□  :  告白のほうも惜しかったな笑


〇  :  あぁまぁな...



すると〇〇の元に蓮加が



〇  :  蓮加...


□  :  じゃ俺はここで


〇  :  お、おい!



そのままどこかへ行ってしまった



〇  :  ったく...


蓮  :  試合お疲れ様。惜しかったね


〇  :  うん...いやー決めたかったなー最後...悔しい





蓮  :  ...それはどっちの意味でいってる?


〇  :  ...え?


蓮  :  球技大会負けて悔しかったのか


蓮  :  ...告白できなくて悔しかったのか


〇  :  ...球技大会だよ


蓮  :  ...そっか


〇  :  だって球技大会勝たなきゃ告白なんてできないんだから


蓮  :  ...蓮加は...別に勝たなくてもしてもいいと思うけど?


〇  :  えっ...



俺たち以外誰もいない体育館


壇上の下の壁に寄りかかり座る俺に立って話す蓮加



蓮  :  今、誰もいないよ?


〇  :  で、でもほんとは勝ってからの約束だったから...


蓮  :  意気地なし


〇  :  え...


蓮  :  早くしてよ...待ってるよ


〇  :  う、うん...




俺は立ち上がり蓮加と向き合う




〇  :  ...


蓮  :  ...


〇  :  ...蓮加


蓮  :  なに?



告白とわかっていての返事なのかと心の中で思う



〇  :  ...こんな言ったこと守れないような駄目なやつだけど...


蓮  :  ...うん


〇  :  ...それでも!絶対に蓮加のことは幸せにするから!


蓮  :  ...


〇  :  だから...俺と...その...


蓮  :  ...なーに?はっきり言わないとわかんないよ?笑


〇  :  っ!...








〇  :  蓮加


蓮  :  はい


〇  :  俺と...付き合ってください!


蓮  :  ...



前屈みになって手をまっすぐ伸ばし相手からの返事を待つ、ごく一般的な姿勢になる



蓮  :  ...顔上げてよ


〇  :  えっ...



手に握手が来なくて悲しく思いつつも体を起こす



すると突然



蓮加が走り出し俺に抱きついてきた



〇  :  うわっ


蓮  :  遅いよ...もう


〇  :  ...ごめん。勇気が出なくて...


蓮  :  ...蓮加はずっと好きだったんだから...


〇  :  遅くなってごめんね


蓮  :  ううん、いいの。蓮加今、すっごく幸せだから!




蓮  :  告白してくれてありがと!〇〇!






"彼女との出逢いと付き合うそんな二つの思い出"










end


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