人は夢を二度見る #1
夢は誰しも叶えられるものではない
ずっとその道を追い続ける者
諦めて別の道を探す者
言い方を変えるなら
勝者と敗者
夢を叶えられた者は勝ち
夢を叶えられなかった者は負け
そんなことない
そんなはずない
誰がそんなこと決めたんだ
"偏見"という名の暴力に
俺の"夢"は負けた
担 : ...であるからして〜...
6月中旬
蒸し暑さが籠る教室
つまらない授業
外からの日差しを受けながら
黒板の文字をただ書き写していく
ペンを置き窓の外をじっと眺める
〇 : ...
高校三年生
高校生活最後の年
そして進路が決まる時期
一年後の自分は今頃なにをしているのだろう
キーンコーンカーンコーン
終わりのチャイムが鳴って授業をやめる担任
担 : 今日はこれで終わりにするから。あっまだ
"進路希望調査"出してないやつは出せよ〜
そう一言だけ言って教室を出ていく
男1 : 進路か〜お前もう出したか?
男2 : 俺はもう出したぜ
女1 : ねぇ?この後スタバ行かな〜い?
女2 : 行くいく〜
様々な話で盛り上がる中
色々書かれたノートをしまって教室を出る
俺は放課後に屋上に来るのが日課だった
屋上への古びた扉を開け
一歩踏み出した
屋上の一番奥
誰かが座ってイヤホンをつけて
フェンスに寄りかかっていた
相手は俺に気づいていなかった
俺のお気に入りの場所を取られていた
俺はそのまま帰った
次の日
昨日の反省を生かして授業が終わってすぐに
色々と書かれたノートをすぐにしまって
屋上に向かった
屋上への扉を開けると
昨日と同じやつが同じ場所にいた
お気に入りの場所を取られてむかついていた俺は
喋りかけてそこを退かせようとした
? : ...
〇 : ...おい
俺が目の前に来たっていうのに
イヤホンをして目を瞑って
音楽を聴いて気づいていない様子だった
俺はそいつのイヤホンを取った
? : あぁ、ちょっと!なにすんのよ!
〇 : ...そこ、俺のお気に入りだから
奪い取ったイヤホンをそいつに投げて
強めに一言言い放った
? : はぁ!?そんなの関係ないでしょ!?
〇 : ...いいからそこをどけ
何度言おうとそいつは退かなかった
そいつは俺を一度睨みまたイヤホンをつけた
? : ...
〇 : ...ちっ
俺はそいつの隣に居座った
? : ...なに隣に座ってんのよ
〇 : ...お前がさっさと退かないからだろ
そいつは下唇を突き出して
不貞腐れた顔をして見つめてくる
俺はカバンからノートとペンを取り出した
? : ...あんたって絵描くのね
〇 : ...それがなんだよ
? : ちょっと見せてよ!
〇 : あ、おい!
右耳のイヤホンを外して
俺のノートを奪い取った
? : へぇ〜"ケーキ"の絵描いてるんだ
〇 : 勝手に見てんじゃねぇ!
俺はそいつからノートを奪い返した
? : ...別にそんな言い方しなくてもいいのに
〇 : ...馬鹿にしてんじゃねぇ
そいつは首を傾げて不思議そうに言ってきた
? : 別に馬鹿にしてなんかないよ?
疑心暗鬼な俺はその一言も信じられなかった
これもまた"あれ"と同じだろう
けどどこか嬉しさも少しだけあった
〇 : ...お前、名前は
? : 私は賀喜遥香。君は?
〇 : ...
賀 : え?無視?自分から訊いといて?笑
そいつは最初と変わらず
うざったらしい喋りかた
〇 : ...久保〇〇
賀 : へぇ〜良い名前じゃん
そいつは喋りかたと態度は変わらない
なのに俺の印象を全部崩してくる
〇 : ...じゃあな
賀 : えっ?もう帰っちゃうの?
ノートをバックにしまってそのまま歩き出した
〇 : ...どうせあいつも...結局同じ...
哀愁漂う背中をただじっと見つめる遥香
その気を感じたのか
扉から出る一瞬
遥香の方を見る〇〇
遥香は笑顔で小さく手を振って
外していた右耳のイヤホンをまた付けた
〇 : ...
そういって屋上を出た
〇〇の夢
絵を描き続ける理由
続く
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?