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優しい絶望

絶望が

幸せのふりをして

やってくる

あのドアを開けて

優しい顔をして

私はすっかり安心して

絶望を招き入れる

幸せだと勘違いして

見当違いをする

絶望は優しい顔で

私を抱きしめ

私を打ちのめす

なんでもないみたいに

天国から地獄へと

叩き落す時でさえ

絶望は優しい

私はもう

悲しみの正体すらわからずに

ただ横たわることしかできない

翌朝

絶望は帰っていく

いつものようにハグをして

私をなでて

「また来るよ」と言って

笑顔で

そのドアを閉めるのだ


毎夜

私は絶望に抱かれて

殺される

まるで幸せのような

うすいまどろみのなかで




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