虐げられた兎は運命の番に略奪溺愛される~あとがき~

とにかくね、データとの戦いでした。
Web小説どころか、書くことも読むことも初心者だったんです。
コンテストなる大舞台で戦うために、自分が持っている武器を探した結果、それは「分析力」でした。
今BL業界では何が流行っているのか。アルファポリスでは何が流行っているのか。編集部が求めている傾向はなんなのか。どうしたら、「ほら、この作品欲しいじゃろ?」と編集部の心を揺さぶれるのか。ランキングの100位までをしらみつぶしに分析し、刊行本に目を通し。得られた情報の中で、「隙間産業」を目指し続けました。
トンカツって美味しいよね。カレーって美味しいよね。じゃあ、トンカツカレーが美味しいのは当たり前だよね。
じゃあ、まだ枠の埋まってない○○カレーを作り出してやろう。
そんな理論でピックアップされたのが、「異世界」「獣人」「オメガバース」「政略結婚」「溺愛」「スパダリ」「ざまあ」「ハッピーエンド」「禁愛」でした。
よし、煮込むか。と見切り発車。プロットなんてありません。(のちのち後悔するハメに)

きっと読者の皆様も口にするのは恐ろしかったと思います。
「果たして、これ美味しいの?」って。事実、ランキングの伸び悩みに枕を濡らした夜もありました。それでも、自分の料理は美味しいんだ、と信じて突き進みました。

言葉にはできない、謎の自信さえありました。

一つ一つの応援が力となり、自分の未熟さを励ましてくれ、なんとか完結に持っていくことができました。あとは結果を待つのみ。このころには、妙な悟りを開いていた気がします。

今でも覚えてますね。「大賞に選ばれました」の一言を。
携帯をぶん投げ、奇声を発し、次の瞬間には泣き出してました。今思い返してみても、変人極まりない。

他人の人生って、一面だけでは語れないんですよ。口には出せない闇があったり、笑顔の裏に涙があったり。幸せそうに見えて苦しかったり。その中でも、あがいて、もがいて、ときには自分を認めて、ときには自分を否定して。それで時々逃げてみて。それでも、やっぱり戻ってきてみたりして。
「自分の価値ってなんだろう」人生という旅路を終えるまで、長い長い自問自答が続くんじゃないかなと思います。
私が描くキャラは、未熟です。メインキャラもサブキャラも、完璧な人はいません。おいおい、スパダリどこいった。なんて、ここまで読んだ人に突っ込まれるかもしれませんね。

未熟だから生まれる葛藤を描きたかったです。
王様たちでさえ、過ちを犯します。自分の選んだ道は間違っていたのか、と悩み、苦しみ、それでも大衆の前では「王」でありつづけます。

それでも、自分の選んだ道はきっと「間違ってはなかった」。そう信じてこの世界を歩んでいけるような。そんな物語が作れて満足です。
正解だ、100点だ。そう言ってしまうと、それ以上夢はみられないんじゃないか。なんて作者の持論も織り交ざった作品です。

ここからは、私を指導してくださった先輩方へ。
一年前、小説のしょの字も知らずに「えへへ、私なんか小説書いてみたいっす」と甘ったれた言葉を口にした私にかけられた言葉、今でも忘れてませんよ(笑)

「小説を書く上でのマナーくらい覚えてこいよ」「まず、読める日本語を書いてもらっていいですか?」「君が考える面白いは、悪いけど面白くないよ」から始まる怒涛の小説教育。
毎日無我夢中で知識を貪り、先輩たちから伝授された技を磨き続け……気づいたら今日でした。

できない、やれない、と駄々を捏ねる私に「じゃあもうやめれば?」と平手打ちを食らったこともあります。
なんで見捨てられなかったのか、今でも不思議です。もしかしたら見捨てたかったんでしょうが、私がしがみついて離れなかっただけかもしれませんね。

ちょうどご指導がひと段落したころに、BL大賞の開催を目にしましたので、これは師匠たちに成長を見せるチャンスだ。と一人での戦いを選び、毎日キーボードをたたき続けました。

あれだけ厳しかった師匠たちは、なんだかんだ優しくて。私が心折れそうになると気にかけてくれて、「大丈夫、大丈夫。君ならきっとやれる」と声をかけてくれました。
でも最後は「あ、BLは専門外だから自分で頑張れ~」っと笑顔で突き放すのでまったく、恐ろしい師匠たちです。

先輩……いえ、お師匠様方。これからも泣いて喚いてしがみつき続けますので、どうかよろしくお願いします。えへへ。

なんてふざけましたが、これからも先輩たちのように読者へ夢を届け続ける作家でありたいとおもいます。

最後にはなりますが、多くの読者様、編集部の皆様、大きなご声援と応援、まことにありがとうございます。
私は幸せ者です。私が選んだ道は、間違いではありませんでした。

志波咲良

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