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苦い苦いギフト

先日、五年間通い続けたギターレッスンに一区切り付けてきました。

就職して一年半が経ち、就職したての頃はコロナの関係で仕事量も少なく毎日それなりに余裕があったのですが、このところ仕事量が増えた上に拘束時間も長くなって、平日に練習する気力や時間も足りなくなってしまって。

だから、今年の発表会を目処として、一旦レッスンを辞めよう、と以前から決めていました。

発表会では、大好きなポルノグラフィティの『ギフト』を弾き語りしてきました。
ずっとずっと人前で弾きたいと思っていた曲です。伴奏や歌はバンドの人達にお願いしてギターだけを弾く、という手もありましたが、弾き語りの方がよりこの曲のメッセージ性が伝わるかもと思い、仕事でヘトヘトの中一生懸命練習に励んできたつもりでした。

でも、現実は、漫画のように上手くいかなくて。
本番当日はあまりにも緊張してしまって、とある箇所でストロークを忘れて演奏を一時中断してしまい、それを皮切りに楽譜を追えなくなったりとか、コードの音が全くでなくなったりとか、アルペジオで指が震えて上手く抑えられなかったりとか、ミスのオンパレードでした。

ショックでした。穴があったら入りたかった。
家族が見に来てくれていたし、先生もステージの下で見守ってくれていました。それなのに一年間、いや五年間の集大成をこんな形にしてしまった自分にものすごくショックを受けて。
会場にいる間はできるだけ明るく振舞っていたのですが、ライブハウスを出た瞬間、涙が溢れて止まらなくなりました。

お昼ご飯を食べに近くのショッピングモールに寄るまで、ずっと泣いていました。
悔しい。恥ずかしい。情けない。家族や先生やその他大勢のお客さんに絶対ガッカリされた。もっと練習していれば。学校の文化祭や、去年初出演した発表会では最後までばっちり上手くいってたから余計にです。教室での最後の練習でも、大きなミスはなかったのに。
車に乗ってる間は家族にずっと気を遣わせていました。
母は「すごく頑張っていたけど、強いて言うなら選んだ曲が難しすぎたかもね」とそう言ってくれました。

でも、私、どうしても『ギフト』が弾きたかった。
高校受験。面接。なんとなく気分が落ち込んでいた時。いつもこの曲に助けて貰っていました。カラオケで歌いながら泣いてしまったこともあるくらい大好きな曲です。
この曲で私がどれだけ心動かされてきたかを、ギターを通して会場にいる人達に伝えたかった。
もしかしたらその想いが空回りしすぎたっていうのも、緊張した原因の一つかもしれません。

その日の夜、母から発表会の様子がGoogleフォトで送られてきて。迷ったけど、結局見ました。「箱の中身」が勢いよく飛び出しすぎちゃってるのを目の当たりにして、もう笑っちゃうくらいでした。
演奏終了後のインタビューで「また来年も出てくださいね!」という店員さんの言葉に「今月いっぱいで辞めるんです…」と返してしまい、「言わんでいい💢」と母に突っ込まれているところまでバッチリ収められてた。

一週間ずっと真っ白な灰状態になって過ごし、最後のレッスンの日。先生は「本番は緊張するものだから仕方ないけど、ラスサビのとこすごく良かった。感動して泣きそうになったよ」と言ってくれました。ほんとかなぁ〜?って疑っちゃいましたが。でも、言われてみればビデオには母がすすり泣く声が入ってたし、客観的に見たらそれなりに悪くはなかったのかな。

最後の日だから今までの曲の振り返りかなって思ってたんですが、普通に新譜を渡されて、終わりの時間までのんびり練習していました。あれ、本当に今日が最終日?実感がなかったです。
いつも通り時間が過ぎていき、「さ、今日はこの辺にしときましょうか〜」といういつもの先生の声。
ギターをしまったあと、今までの感謝の気持ちを込めたプレゼント(お菓子)を先生に渡しに行きました。先生は飄々と喜んでいて、「また落ち着いたらおいで」と言ってくれて、私が見えなくなるまでずっと両手で手を振ってくれていました。

帰り道、背負ってたギターがなんだかいつもより重く感じました。終わっちゃったなぁ。呆気なく。もう練習に追われることもないんだ。はぁ〜〜。

飽き性の私が五年間、よく続けられたなって実感しました。楽しかった、本当に。でも、学生の頃のほうが今よりももっと楽しんで弾いてたなって。時間が有り余るほどあったし、学校で弾いたらみんなに褒められるし。
今では家に帰ってくる度クタクタで、なんだかんだ楽しんでた練習もとうとう「苦」に感じるようになってた。誰かの前で弾く機会も滅多となくなったわけで、大人になるってこういうことなのかな。切ないな。

努力苦手人間の私が何かのためにコツコツやるってことをギターを通して経験できたのは、まさにギフトのようなものでした。噛み付いた味は苦かったけど、それもまたいい思い出になっていくんだと思います。
忘れないように時々引っ張り出して爪弾いて、ギフトの形を思い出そう。

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